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【マンション建替え四部作 パート4】【マンション建替えに時間がかかる理由・デベロッパーの皆さんやり方変えてみませんか】

【管理組合主導での建替え事業の実績はほとんどありません】

管理組合主導での建替え事業の実績はほとんどありません。その理由は執行機関である管理組合に、事業を遂行できる能力(ノウハウ)が無いからです。「減歩率」という概念も知らないし、「減歩率」を明示して「建替えという事業の実態」を組合員に知らせるという正攻法で「建替え合意」を成立させてから事業が実施されている例がおそらくないからです。

【建替えの必要性と経済合理性を強調して、「減歩率」を明らかにしない】

ほとんどの建て替え事業はデベロッパー主導で行われています。「建替え合意」を成立させるためにデベロッパーが通常行う説明は、「老朽化で雨漏れが多発していています。耐震診断で耐力不足が指摘されていて危険です。共用配管から水漏れが多発しています。これらの原因で修繕費が莫大な金額になっていきます。だから修繕積立金を値上げするよりも、建物を解体して建替えたほうが経済性・合理性があります。」という部分を強調します。「減歩率」を明らかに示して建て替え事業の説明がされることはまずありません。幾ら負担したら建替え後に何㎡の部屋が手に入るかが2~3例示されて、あとは請求があれば個別に説明します。ということで終わります。
賃借権や地上権のマンションはその権利の更新に高額の費用が必要なので、管理費を大幅に値上げするか、一時金を徴収しなければなりません。それなら、更新を機に建替えて、その際に所有権のマンションにするほうがいいですよ。という説明をするかもしれません。現在の建物が容積率未消化で、建替えで建物の床面積を増やせるような状態であれば建替えできるかもしれませんが、通常はこのような建物の建て替えは、「減歩率」が高くて建替え合意が成立しにくいので、デベロッパーはあまりやりたがりません。

【「減歩率」を示さずに「建替え合意」を成立させるには、人手も時間も沢山かかる】

(仮住まい補償)をすると明言されることはまずありません。賃貸している(賃借人への仮住まい補償)がなされることはまずありません。(転出)する場合はその部屋の時価で買い取りますが、「建替え合意が成立」していると、時期が来たら必ず売却しなければなりません。新しい部屋を取得するためには負担金が幾ら必要ですという説明のために数例が示されますが、(増し床)についての説明はなく、負担金無しでも新しい部屋が手に入るのか否かについて明言されることはまずありません。
こんなやりかたが通常なので、建替え合意が成立するまでに、長い時間と多くの人手がかかります。それは全て建替え事業の費用に組み込まれますから、借地権マンションの建て替えでは、例示された部屋の負担金から逆算すると「減歩率」60%などというとんでもない数字が出てきてしまいます。
高齢者は仮住まいを探すのが難しいし、その家賃を負担することも困難です。賃貸している人は自分の責任で賃借人を追い出さなければなりません。個々の組合員は個別の説明を聞かなければ、建替えが自分にどんな影響をもたらすか分かりません。個別の説明の内容は、組合員全員に開示されませんから、同じ条件で説明がなされていないかもしれません。このような状況が事業推進者に対する不信感につながって、疑心暗鬼に陥って、「建替え合意決議」のために、時間と労力が空しく消費されます。関係者は誰も幸せになれません。

【デベロッパーの皆さん、もっと合理的なやり方に変えてみませんか】

【パート1】【パート2】【パート3】で私が提案した建替えの進め方は「理想論」で、現実的ではないと言われるかもしれません。今の現況ではその通りかもしれません。でも、この進め方で建て替えができたなら、関係者全員が幸せになれます。関係者全員が頑張って、やってみる価値はあるのではないでしょうか。
「減歩率」を明示した「建替え事業計画案」に基づく「建替え合意の議決」までは管理組合がまず行います。その段階では事業に精通したコンサルタントが必要ですが、この部分だけを業務として受託している建築設計事務所はても少ないですが、複数社あるようです。
次に管理組合は「建替え事業計画案」に示された内容で「減歩率」を上回らないことを条件にデベロッパーと「事業実施業務契約」を締結します。契約相手は入札で決めるのが良いのですが、建替えで建物の床を増やせない、土地が借地権なので底地の買い取り費用が必要だ、といったケースでは応札してくれる業者が無いかもしれません。
そんな時は「減歩率」の上限の数字で幾分か譲歩することも踏まえた上で、個別に再度打診することになるかもしれません。
交渉のポイントはまず「負担0円」であることで、これは絶対に譲れません。しかし、「減歩率」に関しては、譲れるところは譲りましょう。建築費が高騰してその費用増加分を、保留床の販売収入からは、保留床の価格上昇を見込んでも回収できないときは、「減歩率」がここまで上昇しても計画の見直しを受け入れますという、「減歩率」上昇の限界値も用意しておかなければなりません。このような交渉の過程で業務委託契約が成立しタラ、短期間で事業が完成します。組合員にも受託業者にも利益がもたらされます。
デベロッパーの皆さん、こんな合理的なやり方に建替え事業の進め方を変えてみませんか。
【パート1】に記載した「建替え事業計画案」には事業が実施されたときに、デベロッパーが得ることになる利益率は明示されていませんが、工事や販売から得られる利益率はそれぞれの企業ごとに、概ね把握できるはずです。「建替え合意」に要する不確定な、莫大な費用負担の心配がありませんし、「権利変換合意」についても組合員に概ね納得してもらっている状態で事業が実施できます。冷静に利益率を把握できる条件は整っています。こんな管理組合のオファーに応札してみませんか。

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