見出し画像

【マンション建替え四部作 パート3】【マンション建替えに必要なのは、まず建替え合意、次にもっと難しい権利変換合意】

マンション建替え円滑化法の施行で容積率が緩和され、住宅金融支援機構などで建て替えに必要な融資も確保しやすくなりました。これらの環境改善で、安全性や居住性に問題のあるマンションの建て替えは幾分やりやすくなりました。

1.【建替え合意決議】

建替え事業を実施するのは区分所有者(組合員)全員で構成される管理組合です。最初にしなければいけないことは「建替え合意」の決議です。そのためには組合員全員が理解できて、納得できる説明をしなくてはなりません。その説明の仕方は【マンション建替え三部作 パート2】で纏めました。そちらの記事をご覧ください。

2.【建替え事業組合法人設立と事業資金の借入】

建替え合意が成立したら、「建替え事業組合法人」の設立です。この段階から建替えを実施するための、費用の発生が予想されます。修繕積立金の使用目的を、建て替え積立金に変更して、法人設立登記などの費用はそこから支出します。建替え事業での最大の費用は建物解体・建築工事費です。その借り入れは「建替え事業組合法人」などの法人でなければできません。

3.【意向調査】

それと並行して行うのは意向調査です。事業に参加なのか転出なのか、増し床希望の有無とその面積などが、分らなければ建物の設計ができません。駐車場がどのくらい必要か、一部を店舗として作るのか、共用施設は何が必要なのかなどの、建物設計の与条件も決めなければいけません。

4.【従前資産評価】

もう一つの大事な仕事は従前資産評価です。建替えによって現在所有する部屋が失われ、新しい建物の部屋を取得しますから、まず現在所有する部屋(従前資産)の資産額を、この段階まで来たら、正確に評価しなくてはなりません。

5.【従後資産評価】

新しく建てる建物の設計が完了したら、組合員が取得する部屋(従後資産)の評価もします。評価は用途別効用比、階層別効用比、位置別効用比を考慮して精緻に行います。増し床希望で従前資産額より従後資産額が大きくなる組合員は、権利変換の時にその差額を支払います。転出者の従前資産はそのときに、建替え事業組合が買い取ります。

6.【権利変換合意】

市街地再開発事業として認可された再開発事業として、マンションの建て替えをするときは、権利変換合意契約の締結前に設計図書や権利変換計画書の縦覧の手続きをすることなどが決められており、それに従って事業を行えば、補助金や課税の優遇措置などが与えられます。通常の建て替えではそのような制限はありませんから、組合員全員の合意が形成されさえすれば、権利変換が行えます。「権利変換の合意」とは、従前資産(建て替え前の部屋)と従後資産(新しい部屋)の交換の合意です。この合意を組合員全員と取りつけることが、一番手間のかかる大仕事です。

7.【建物解体・建築工事】

権利変換合意が成立したら、建物解体・建築工事の契約を締結して工事を実施します。

8.【所有権登記と保留床の売却】

建物が完成したら取得する部屋(権利床)の所有権登記、販売する部屋(保留床)の販売委託契約を不動産業者と締結して保留床を売却します。

9.【借入金の返済】

保留床が完売したら、借り入れた資金を返済します。

10.【引き渡しと報告】

権利床と保留床の引き渡しをして、最後に事業収支報告書を作成し、事業に参加した組合員に報告します。その時に残金があれば新しい管理組合の修繕積立金に組み入れます。

これが管理組合(建替え事業組合)主導型の、分離発注方式の、事業の進め方の概要です。
事業に必要な相手先は、司法書士事務所、設計事務所、鑑定評価事務所、金融機関、解体・建築工事業社です。コンサル会社やデベロッパーは、必要不可欠ではありませんが、余剰容積がある建替えや「減歩率」を多少増やしても良いという組合員の合意があれば、建替え合意ができた段階で、豊富な経験を持っているデベロッパーに打診するのが良いと思います。

記事を読んで何か疑問や質問・相談があれば文末に記載したメールアドレスに送信して下さい。丁寧に回答致します。


いいなと思ったら応援しよう!