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【不動産とは何か宅地とは何か】

1.宅地と建物と複合不動産

不動産とは土地と建物のことで、それは私たちの生活に深くかかわっています。土地は樹木や農作物を成育させますし、建造物を保持する力も持っています。土地はその本質的な能力で、さまざまな収益を生み出します。土地上に建設された建物と一体の複合不動産として利用されるときに、土地は最も大きな収益を生み出します。建物の敷地として使われる土地が宅地です。日本の国土の66%は林地です。そして13%が農地です。水面・河川・水路が4%、道路が3%、原野が1%、その他が8%なので、宅地の面積比率は僅か5%です。宅地は私たちの生活に不可欠なものですが、その存在量が限られているために、獲得競争が行われて価格が高騰します。林地の価格は1㎡あたり数十円~数百円、農地の価格は1㎡あたり数千円ですが、宅地の価格は1㎡あたり1万円以上が通常で、最高額は銀座の中央通り沿いで、1㎡当たり数千万円です。

2.宅地の供給と消滅のメカニズム

宅地として使える土地には幾つかの条件がありますから、簡単に宅地を増やしたりはできません。第一の条件はそこに建物が建築できることなので、急な傾斜地は宅地にはなれません。建物をしっかりと支えられるような強固な地盤が必要なので、沼や池や水田や公有水面を埋め立てたとしても、すぐに宅地としては使えません。第二の条件は生活用水が確保できることです。水道が無ければ井戸を掘るか雨水を浄化して飲み水を得なければなりません。第三の条件はその生活用水や雨水が溜まることで地盤が緩くならないように、排水が出来ていることです。給排水のライフラインは絶対に不可欠ですが、電気やガスは供給されていれば宅地としての利便性が上がることは確かですが、不可欠なものではありません。第四の条件は道路です。そこに至る道が無ければ生活はできません。その道が車両で通行できる道であれば、宅地としての利便性が上がります。林地や農地を造成して宅地としての条件を整えればその土地は宅地です。宅地が不足すれば林地や農地を宅地に変える開発行為が実施されて新しい宅地が供給されます。反対に宅地が余って誰も使わなくなれば、いずれは農地や林地に戻ってしまいます。

3.不動産流通の安全性

宅地や土地建物の複合不動産は、その存在量が限られていますから、それを売買したり賃貸したりして、必要な人が必要な不動産を使えるように、安全に流通させなければなりません。そのための法令が宅地建物取引業法(宅建業法)です。不動産が有効に活用されることで私たちの暮らしは豊かになります。宅建業法は毎年のように改正されており、新築物件には補償保険制度が導入されて、中古物件にも建物調査制度が導入されて、不動産の購入に付きまとう不安が少しずつ払拭されました。このような制度が導入されることで、流通環境の安全性が向上しています。不動産の購入はその後の人生を方向付けるので、その決断で失敗はできませんが、安心して不動産を買える環境が少しずつ整い始めました。

4.不動産の所有権

所有する土地の範囲は境界標で区分されますが、実測図が無い土地の面積は曖昧ですし、境界が確定していない土地もあります。建物も襖や畳などの着脱可能なものを含み、様々な要素によって構成されています。売買の対象となるのはどの部分なのか、きちんと確定しなければなりません。不動産は土地建物からなる複合物なので、取引対象を物的に特定するのも容易ではありません。
不動産の権利関係も複雑です不動産の所有権には利用権、担保権、処分権が内在し、そのすべてを包含するのが所有権です。権利の範囲は地表だけではありません。地下から上空に至るまでの全てに亘っていましたが、大深度地下法が施行されたことによって、地下部分の利用権の範囲は原則40mまでで一部は制限されました。しかし、上空には航空法の例外を除いては、範囲に制限はありません。絶対高さ制限や斜線制限などの制約があるのは都市計画区域内だけです。土地の利用権には借地権、地上権、地役権、使用借権、定期借地権、区分地上権などの定型の利用権や物権の他に、債権契約によって個別に利用権が設定できます。不動産信託受益権や不動産投資信託(REAT)などは不動産関連の権利や商品ですが、その取引には証券取引法も介在しています。
日本の土地の所有権は世界でもまれなとても強力な権利です。不動産に係る権利の多くは地上権や定期借地権のような有期の利用権で構成されており、それが世界の趨勢です。不動産の相続が限定されている国も多いのですが、日本では所有の永続性が保証されており、相続税を納税するだけで自由に相続することができます。

5.不動産の立地と最有効使用

不動産の価値の源泉は効用です。土地(宅地)は建物と一体となってその効用を最大限に発揮します。不動産(土地と建物)の効用の大小は建物の用途と規模で決まります。宅地は工業地、住宅地、商業地に分類されて、一般にはその順に単位面積当たりの効用が大きくなります。土地上にその効用を最大限に発揮できるような建物が建っている状態が最有効使用です。最有効使用の状態で土地と建物の価値は最大になります。最有効使用の状態であるためには、土地上に建っている建物が所在する地域に適合した用途でなくてはなりません。店舗は商業地域内に、住宅は住宅地域内に、工場は工業地域内にあれば、その効用を最大限に発揮できます。土地の規模形状に適応した規模・構造の建物であることも最有効使用の条件です。建物の規模・構造は都市計画法や建築基準法等の規制の内容と土地の物理的な状況によって決まります。実は建物の計画内容やデザインの良否でも効用や価値は異なるのですが、その良否の見極めや評価手法が鑑定評価手法では細かく決められていないので、不動産鑑定評価額に直接反映されることはありません。

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