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エンダウメントの資産運用を日本の個人投資家が再現するための手法(2/2)

前回記事の続きです。前回記事は以下よりご確認ください。
エンダウメントの資産運用を日本の個人投資家が再現するための手法(1/2)
https://note.com/gciam/n/n936d36bf3836


日本の個人投資家が再現するためには?

資産運用に関して、エンダウメントと個人投資家の資金性質や考え方は近しいとお伝えしましたが、ここからは日本の個人投資家がエンダウメントの資産運用戦略を再現するためには、どのようにすればいいのか考えていきたいと思います。エンダウメントの資産運用戦略を個人投資家が再現するために株式、債券、REIT、オルタナティブの4つのカテゴリーに資産を分け、考えていきたいと思います。

①株式ポートフォリオの構築

まず、株式ポートフォリオの構築について考えていきましょう。エンダウメントは自国の株式である米国株を中心としながら、先進国株(米国株以外)や新興国株にも投資を行っています。ここで思い出していただきたいのが、前述の「エンダウメントの資産運用戦略の概要」で触れた「④インデックスファンドの活用」です。日本においてもETFを活用して米国株のみならず、先進国株や新興国株への投資は可能です。ここではグローバルな株式に投資するETFを単体で保有しても構いませんし、米国、欧州、日本など各国々を分け、それぞれの株式市場に投資するETFを揃えても構いません。選択するのが難しければグローバルなETFを単体で保有することが好ましいと思います。重要なのは、低コストで幅広い銘柄に分散投資を行うことです。自身のリスク許容度や投資目標に応じて、適切なETFを選び、バランスの取れた株式ポートフォリオを構築することが重要です。

②債券ポートフォリオの構築

債券ポートフォリオの構築についても、債券のETFを活用することが適しています。債券のETFに関しても株式と同様、グローバルな債券に投資するETFもあれば、個別の国々のETFも存在しています。①の株式ポートフォリオの構築時点で、グローバルな株式ETFを単体で保有することにした方はここでもグローバルな債券ETF単体で問題ないと思います。債券ポートフォリオの構築においても、ETFを活用することで、安定的なキャッシュフローやリスクヘッジの効果を享受することができます。

③REITポートフォリオの構築

REITのポートフォリオについても同様です。REITのETFを活用することが適しています。グローバルREITもあれば、米国に絞ったREITなど種類様々存在しています。REITについては株式と値動きの性質がやや近しい部分もあるので配分に関してはそこまで多くする必要はないと思います。米国のエンダウメントでも控えめな配分であることが多いです。

④オルタナティブ資産の再現

本コラムの肝になります。米国のエンダウメントではオルタナティブ資産への投資比率は全体の約6割程度(執筆時点)であることが多く、内訳としては、未上場株(プライベート・エクイティ)とヘッジファンドが時期にもよりますが、半々といったところです。個人投資家がこれまでこの領域に踏み込もうとしても、投資金額が1億円からという敷居があったり、そもそも個人投資家には提供していないということがほとんどでした。しかしながら、本コラムの冒頭に触れましたが、直近では、日本の個人投資家においても、国内で未上場株等を組み込んだ公募投資信託が設定可能となったこともあり、少しずつ、門戸が開かれてきています。ヘッジファンドについても、数は多くありませんが、公募投資信託で購入可能なものもあり、エンダウメントの資産運用戦略を日本の個人投資家が公募投資信託を活用して再現することはもはや不可能ではありません。オルタナティブ資産に関しては、代替的に産業セクター株に投資するETF等はありましたが、純粋なオルタナティブ資産に対して投資を行うETFはまだ存在していません。今後に関してはわかりませんが、公募投資信託がオルタナティブ資産を活用できるようになった点は大きな進歩だと思います。オルタナティブ資産クラスを再現し、ポートフォリオの多様化とリスクヘッジを図ることが期待されます。

以上の手法を適切に組み合わせることで、日本の個人投資家もエンダウメントの資産運用戦略を一定程度、再現することが可能となります。ただし、投資はリスクを伴うものであるため、個人投資家は、自身の投資目標やリスク許容度を考慮し、適切なアセットアロケーションとリスク管理を行うことを忘れないようにしましょう。

まとめ

本記事では、「エンダウメントの資産運用を日本の個人投資家が再現するための手法」について解説してきました。エンダウメントは、その長期的な視点と多様な資産クラスへの投資により、持続的な資産形成を実現しています。エンダウメントと個人投資家の資金の性質や運用の考え方は近しいものがあり、エンダウメントの資産運用戦略を参考にしながら、個人投資家の方においても、自身の目標に合ったポートフォリオを構築し、持続的な資産形成を実現することを願っています。