ヤフーの1on1を読んだちょっとした感想

会社で「ヤフーの1on1」という本が良いという話を耳にしたので、1on1を日常的に行っている身として、改めて1on1について勉強したいと思い読んでみた。

読んだ感想としては、至極真っ当で良い本だった。例えば「1on1は部下のためのものであり、上司が状況を把握するためのものではない」、「部下に十分に話をしてもらうことが大事」、「良い1on1を行うためには信頼関係が必要」というのは、どれも自分が普段から心掛けていることであり、非常に共感できる内容だった。

特に印象に残ったのは「1on1は部下の成長のために行う」という一貫した姿勢だ。ただ、ここについては少し自分の考えと違っていたところだった。

著者によると、1on1は部下の才能と情熱を解き放つための成長の機会であり、そのためには極力部下に考えてもらい、ネクストアクションにまで落とし込むことが望ましいとされている。

たしかにそういう側面はあるのだろうと思う。1on1を受ける部下にとっても、ひいては会社にとっても、部下の成長が重要なことは自明である。ここは自分があまり意識していなかった部分だったので、これからはより意識していけると良いかもしれないと思った。

一方で、少し成長にこだわり過ぎているんじゃないかという気もした。1on1が部下のための時間であることは言うまでもないが、部下の成長のためと言い切ってしまうと、気軽な雑談やリラックスした雰囲気を損なってしまう危険性があるのではないか。

部下にしても、いつも成長や内省、ネクストアクションばかり求められても疲れてしまいそうだなと思った。もしかすると、部下の成長のためという言葉の裏で、どこか会社のためになっていないだろうか。

本の中で、部下の卑下する言葉を聞いた上司が「そんなことないよ」ではなく「能力がないと思ってるんだ」と反応する場面がある。これは部下の期待していたメッセージではなくニュートラルな態度を取ることで部下の思考停止を防ぐためとのことだが、自分が部下だったら「そんなことないよ」と言ってほしいだろうなと思った。

もちろん状況にもよるだろうが、これは「そんなことないよ」という言葉が「上司がいつも部下のことを見ており、部下の存在を肯定する」意味を持つからだ。たとえ背後に深謀遠慮があったとしても、「能力がないと思ってるんだ」というのはちょっと冷たいんじゃないか。

自分は1on1が持つもう一つの重要な要素は「感謝」だと思っている。部下の普段の仕事について賞賛し、労うこと、大切にされ尊重されていると感じてもらうこと、そしてそれを忙しい上司が時間を作って行うこと。それはある意味で部下の成長と同じくらい重要なことであるはず。残念ながら、本の中ではあまりこの文脈についての言及はなかったように思う。

少し脱線してしまうが、自分が1on1やマネジメントにおいていつも悩むのは、「1on1には正解がない」という点だ。なぜなら人間には正解はないのだから。

もちろん、一定のベストプラクティスはあるのだと思う。その意味ではこの本はまさにグッド1on1を体現しているといえる。一方で、私は1on1が得意だから任せなさい!という人がいたらちょっと引いてしまう気がした。同様に私はマネジメントが得意だから一緒に働きましょう!とかカジュアル面談が得意だから(以下略)というのも、正しい側面があるのは理解しつつ、どこか違和感を感じてしまう。それはおそらく、根底に他者を見ていない意識があるからだと思う。

世の中には本当に多種多様な人たちがいて、中には自分のように少しひねくれた人間もいる。もしかしたらもっとひねくれた人たちもいるかもしれない。そういった一人一人と真摯に向き合い、一緒に良い1on1について考えていくことが大事なんじゃないかと思っている。

皆さんはどんな1on1をしてますか?



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