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忙しさの回避術④

さて前回はプロフェッショナルな教師として如何にプラン変更をしたかについて述べたのだが、私も人の子である以上、少し傷ついたのである。というのも仮に100名の人間が応募したとして、一次審査か二次審査で落とされた場合、私は「不合格だった99人」のうちの1人であるのだから、他の98名の人たちと悲しみを享受できるのだが、中途半端に補欠合格だと、自ずと「1vs1」になってしまい、その結果として「合格しなかった方の金も地位も名誉も人望もない、妙に胸元の強調された女性のソロキャンプ動画を朝から晩まで見ている只の顔の濃い変質者」になってしまうからだ。

人間というのは自分勝手な生き物であり、その事実を突きつけられた瞬間に私は自分が実績や実力的には99人の中でも最下層に位置する事実を一旦棚上げし、

『私じゃない方はどこの馬の骨やねん』

と悔しさを露わにしようと思ったのだが、「金も地位も名誉も人望も信用も実績も実力も名望も徳望も人気もない、妙に胸元の強調された女性のソロキャンプ動画を朝から晩まで見ている只の顔の濃い変質者」である事には変わりないのでやめておいた。

不合格通知を頂いて2日後ぐらいだったと思う。とある大学の先生から「急な相談がある」とのお電話を頂いた。仮にその先生の名を「馬の骨氏」としておこう。

馬の骨氏:来学期ウチで教えられません?
私   :既に契約も済ましちゃったし無理です。
馬の骨氏:週一でも無理?
私   :月から金までガッツリ縛られてるので無理です。
馬の骨氏:そうか…
私   :どうかしたんですか?
馬の骨氏:実はとある機関に応募してて先日合格通知をもらって急遽辞める事になったんですけど、急すぎて次が見つからなくて…

当記事をご覧の識者の中には馬の骨氏を「金も地位も名誉もなく、朝から晩まで妙に胸元が強調された服でピアノを演奏する動画を朝から晩まで見てる変態禿野郎」と思う方もいらっしゃるであろうが、それは完全に誤解である。残念ながら社会的地位も名誉も実力も実績も学歴も全て私を遥かに上回っている上、素敵な奥様がいらっしゃるばかりでなく、髪もふさふさなのである。

かくして馬の骨が自分自身であった事を知った私は、妙に爽快な気持ちになり電話を切った。そもそも某機関(というか大学)の今後の発展を考慮すると、どう考えてもその先生を於いて他に適任者はいないのである。

こうして全ての謎も解け、担任という重い責務から逃れた私は新学期から月に2回はキャンプにいく事を目標に夏休みをダラダラ楽しく過ごす事に決めた。もちろん事前準備は入念に行う性格の私である。例の妙に胸元の強調された女性のソロキャンプ動画を入念にチェックした結果、とりあえずダイソーで39元の折りたたみ椅子を一脚買った。何故か新入生の教科書発注の仕事をさせられた件と保護者のグループLINEに招待されている事に一抹の不安を感じつつ。


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