漫画原作「羅刹狩り」第1話

人の世に潜む「羅刹」と呼ばれる人喰いの異類達。
その羅刹に家族を殺された少年・堤亮二は、羅刹達を狩る「組織」の戦士・緒方徹真てつまに命を救われる。
徹真の養子となった亮二は、養父と同じ「組織」の戦士となる事を夢見て「組織」の構成員養成校に入り、同期の中でも成績1位となるが、「卒業試験」が終った時、全ての運命は暗転する。
ある理不尽な理由で、諜報や戦士達の後始末・証拠隠滅を行なう裏方部署に配属された亮二だったが……初仕事で遭遇した相手は、調査対象だった下級羅刹ではなく、上層部の許可なき調査・交戦を禁じられた伝説の羅刹……通称「同族喰いの闇の女神ラートリー」「アンタッチャブル・ゼロ」だった。


シーン1

団地の一室らしい暗い部屋。半ばゴミ屋敷と化している。時間は深夜を想定。
何者かの右手に首根っこをつかまれている男1。
首をつかんでいる腕には、着古した革ジャンとブ厚そうな革の手袋。かなり大柄な体格の者の手に見える。
男1は、ボロボロになった背広にネクタイ。四〇代エリートサラリーマン風だが、苦しみや恐怖で、人・鬼どちらとも解釈出来るほどに歪んだ表情が浮かんでいる。
特に牙などは無いが、口から見える歯は、やたらと頑丈そうに見える。
「や……やめてくれ……見逃してくれ……」

男1の足下。
首をつかんでいる何者かに宙吊りにされているらしい。
高級そうな革靴の下に、洒落たデザインの眼鏡が落ちている。
「なあ……俺達だって、人間が滅んだら共連れで死に絶えちまうんだぜ」
「俺達も人間との共存ってヤツを望んでんだよ」

男1の首をつかんでいる男2の顔。
一見太り気味だが、良く見ると筋肉質。
無精髭に短髪の、精悍だが、どこかとぼけた感じの顔。
極端な猪首。
着古した革ジャンに黒地に片目だけ生身の目になっている写実的な髑髏がプリントされたTシャツ。
下半身を描く場合は、厚手の生地のカーゴパンツに明る目の色の編み上げ靴。
「だから……お前が社会の害になると判断した人間だけを食ってるって言うつもりか?」

泣き半分、媚び半分の表情の男1
「ああ……そうだよ。汚ねえホームレスに……犯罪者予備軍のインチキ難民や不法移民に……親に迷惑かけまくってる中高年の引きこもりニートのチー牛オタク野郎に……自分の子供ガキを虐待するようなクソ親に……陰謀論を信じるような阿呆に……そんな社会のクズどもしか殺してねえよ」

だが、首に食い込んでいる指の周囲の皮膚や肉が煙を上げ溶け始める。
「面白い理屈だ」
「『羅刹』 のクセにSNS中毒か?」
「で、1つ訊きてえんだが……お前がお前の同族どもにとって『死んでもいい奴』じゃないって、どうして言える? お前が、それを証明出来るんなら、見逃してやるってのは、どうだ?」

「ま……待てぇ〜ッ‼」
全身から煙を上げながら焼け死んでいく男1と、それを片手で持ち上げている男2のシルエット。

その光景を凝視めている小学校3〜4年ぐらいの少年。
ボロボロのタンクトップ風のシャツに半ズボン。
後ろ姿しか見えないが、立上り、両手を強く握り締めている。
足下には、少年の親らしいスキンヘッドに眉も剃っている頭・腕・首筋などに梵字のタトゥーを入れた半グレ風の男と水商売風の女の死体。
男女の死体の顔には恐怖と苦痛の表情。

少年のモノローグ
「あいつが実の父親だったのか……それとも、母親の恋人か何かだったのかさえ、良く覚えていない」
「あいつらと血のつながりが有ったかも良く知らない」
「あいつらに育てられてた頃の事は思い出す事もほとんどないし……思い出したくもない」
「ただ、この日、俺の人生は変った」
「地獄から抜け出せて……人間の世界に入る事が出来たんだ」
「皮肉にも羅刹と呼ばれる地獄の鬼みたいな奴らに出会ったせいで」
少年の目に映る男2の姿。
男2は少年に手を差し延べて、何かを言っている

シーン2

作業着風の服装の中年の男2人。
両方ともマイク付きのイヤフォンを装着。
机の上には各自1こづつのノートPC。
部屋には無数のモニタ。モニタには監視カメラで撮影されている廃工場内部らしき場所の映像が表示されている。
「どっちがいい点取れると思う?『やる気がクソ無いだけの本物の天才』と『秀才に徹する事の天才』の?」
「おい、軽口叩く前に、マイクOFFになってる事、確認したか?」
そう言われた方の男、マイク付きのイヤフォンを外し確認。
「えっ?……おい、おどかすなよ」
「では、試験官各位。映像が届いてるか御確認お願いします」
「おい……無視すん……えっと、全員から届いてるって返信あり」
「じゃ、始めるか。おい、卒業生ども……」

シーン3

ロッカールームで着替えている20前後の男。(主人公。シーン1の少年の成長した姿)
ロッカールームには、同じ位の年齢の男が他にも何人も居て着替えている最中。
主人公、スマホをロッカーに入れる前に画面を見る。
留守録を再生。
『亮二か? 例によって仕事だ。この調子だと卒業祝いと就職祝いは同時にやる羽目になりそうだ。下手したらゴールデンウィークあたりにな。毎度の事ですまん。余計な御世話だろうが、キバらずに落ち着いてやれ。あと、たまには本当のご両親の墓にも行ってやれ』

主人公モノローグ
「本当の親って何の事だ?……俺にとっては、あんたの事だ」
「『組織』最強の戦士・緒方徹真てつまの養子になり、堤の名字を捨ててから10年」
「結局、俺は、親父おやじと同じ戦士を目指していた」
「気取った言い方をすれば……親父おやじ以外の手本になる大人ロールモデルを見付けられなかった、って事だろう」
主人公はプロテクター付のライダースーツ風の服、編み上げ靴、プロテクター付の手袋という格好に着替え終る。
着替えている途中のシーンでは主人公の鍛え抜かれてるように思える筋肉が見える。

構内放送の音声(シーン2の男の片方の声)
「おい、卒業生ども、卒業試験 兼 新人採用試験の始まりだ。今から5分以内に現場に突入しろ。ここでヘマしたら、5年間の努力がパーになる事も十分有り得るぞ。十分に気を付けつつ、十分にリラックスしてやれ。その2つを両立出来ねえ奴は、死ぬか不採用か一生デスクワークだ」

シーン4

更衣室に居た男の一人がドアを開けた途端に悲鳴。
「ぐがあッ‼」
ドアの外の廊下らしい場所には煙を上げながら床に倒れ伏している男。
ボロボロのズボンにYシャツ風の服。足は素足。手や指の爪はぶ厚く長め。
伸びた髪は何日も洗っていないように見える。
その男が立ち上がる。
目は血走り、狂気に近い怒りの表情、口からは、妙に頑丈そうな乱杭歯が見える。

男の1人。
「おい、もう始まってるのか?」
構内放送。
「まだ試験は始まってない。試験開始までに現場に突入出来なかった奴は失格だ」
別の男。
「無茶苦茶だ。何で、ここに羅刹が……?」

主人公モノローグ
「生物の生命力や精神力と関わりが有るらしい『気』と呼ばれる未知の力」
「羅刹どもも俺達も、それを攻撃や防御……そして、索敵などの戦闘補助に使う事が出来る」
「おそらく、この羅刹は……壁越しに『気』による遠隔攻撃を受けている。それも一度に複数人から」
「でも……何で、女達は、廊下に羅刹が居るって気付いた?」

廊下を走る20歳前後の年齢の何人もの女性達。
男達と同じ戦闘服。
何人かは、羅刹と呼ばれた人に似た生物をすれ違いざまに攻撃する。

主人公は、廊下を走って来た小柄だがボーイッシュな顔立ちの女に質問。
「おい、お前、これ、まさか、先輩の誰かにベッドの上で……」
「あのな。私やお前が試験官ならやるに決ってるだろ、こんな真似を」
次の瞬間、小柄な女に投げ飛ばされ、床に叩き付けられる主人公。
「何ッ?」
「悪い。でも、一番強いのが殿しんがりをやるのが定石ってもんだろ?」

主人公モノローグ
「くそ……あいつの言う通りだ」
「試験官達が何を確認したいかを考えれば……これをやる可能性が高いって結論に……」
「けど……畜生。あのクソ野郎……」

床に伏したままの主人公に襲いかかる羅刹。
だが、主人公は羅刹の両手をつかむ。
主人公の顔に迫る羅刹の口。
口からは湯気のようなものが吹き出し、喉の奥には光のようなものが見える。
だが、主人公は巴投げの要領で羅刹の腹に蹴りを入れる。
羅刹の全身がブレたように見える。

シーン5

回想シーン。
教室のような場所。
主人公達が机に座り講義を聞いている。
顔の多くはシーン3,4に登場した若者達。
服は学校の制服というより軍服を思わせるもの。(韓国映画などに登場する北朝鮮の軍人・警官の礼服を参考に)

講師(聴講者の服に似た色違い)
「個々の羅刹達の強さの目安は、ナニナニ級という呼び方で便宜上区別されている」
「あくまで便宜上で誤差が有る事や、羅刹も経験を積めば戦闘能力が上がるし、その日の調子で戦闘能力が上下するを忘れるな。要は何年も前に等級付けされた個体が今でも、その等級のままの保証は無いって事だ。そして、羅刹達との戦いは、基本的に、事前に情報を入手し、作戦を練り、シミュレーションをやり、各管区支部の承認を得た上で行なうものだ」
「まず、一番弱いGolf級は非武装の一般人でも反撃はともかく逃亡は不可能でない程度のカスどもだ」
「次のFoxtrot級は『組織』外の人間であっても一般的な武装をした警官複数名であれば対処可能な程度だ」
「更に、その次のEcho級は警察や自衛隊であれば、ボディアーマーやある程度以上の威力の銃火器で武装した精鋭部隊一個小隊であれば対処可能な戦闘能力を持つ者の事だ」
「『戦士』になるのなら、1対1かつ素手で、このクラスの相手を倒すだけの能力・技量を求められる」
「その1つ上のDelta級と1対1で互角に戦えるようになれば中級戦士と認められる」
「そして、次のCharlie級と1対1で互角に戦えるようになれば上級戦士と認められる」
「Bravo級との交戦は緊急の場合を除き内最低1名は上級戦士が含まれる複数人で行なう規則となっている」
「Alpha級との交戦は緊急の場合を除き上級戦士複数人で行なう規則となっている」
「Quebec級は単純な戦闘能力よりも知恵や特殊能力を駆使するタイプ。『組織』との戦いを何度か生き延びて、こっちのやり口を熟知してる奴も含まれる。Sierra級は、単純な戦闘能力に関しては、最低でもBravo級、かつ、Quebec級の特性も持っている者。これらは、緊急事態でも交戦より逃亡を優先し、予備調査も管区支部の承認が必要となる規則となっている。特にSierra級は、相手にバレない状態で綿密な下調べを行ない、必ず綿密な作戦を立てた上で交戦せねば、最上級の戦士でも生きて帰れる保証は無い。一般人がQuebec級またはSierra級に襲われている現場に出会でくわしたとしても見捨てろ。覚えておけ。一般人10人の生命よりも、戦士1人を一人前にするコストの方が遥かに高い。『戦士』は『組織』の貴重な戦力であり資材だ。『戦士』となった者は命さえも、自分のものではなく組織のものだ」
「そして、X-ray級は、コードネームに必ず『アンタッチャブル』が含まれる規格外の羅刹だ。出現が報告されても、各支部ではなく本部の許可なくして、交戦は愚か予備調査すら厳禁だ。もっとも、X-ray級に分類されているのは、今の所、ただ1体だけだ」

ほとんどの聴講者は、講義を真剣に聞いているが、シーン4の小柄な女だけ、ノートを取るフリをしつつノートに落書き(極めて写実的なティラノサウルス類と思われる恐竜の絵)をしている。

シーン6

立ち上がる主人公と、口・目・鼻から血を吹き出しながらもがき苦しむ羅刹。ズボンの股間の辺りも血に染まっている。

主人公モノローグ
「羅刹は骨や内臓に達していない傷なら瞬時に治癒出来る」
「そして、上位の羅刹は『気』で体の防御力を高め、Echo級の中にも拳銃弾程度なら肉で止められる奴も居る」
「それを撃ち破る事が出来るのは、俺達の『気』による攻撃だ。羅刹どもの高速治癒能力や『気』による防御を無効化出来る」
「けど、それは逆も言える」
「羅刹が『気』を込めたパンチをこっちに当てたなら、威力は羅刹の超身体能力に更に『気』の効果が加わったものになった挙句、生き延びられたとしても、その傷が治るのに、同じ程度の普通の傷の何倍もの時間がかかり……場合によっては重大な後遺症が残る事さえ有る」

誰も居なくなった廊下を必死で走る主人公。

主人公モノローグ
「この卒業試験では、『組織』が捕えた羅刹が廃工場内に放たれ、そこで羅刹と戦い生き延びる事を要求される」
「しかし……事前に『安全地帯』だと言われていた場所にも羅刹が現われた」
「放たれた羅刹は、最強でも、echo級。5年間の教育を受け『戦士』候補生から脱落しなかった俺達なら倒せて当然の相手……そう聞かされている」
「だが、それも、どこまで信じていいんだ? 誰かが死ぬ事を前提に、俺達が予想外のアクシデントにも、どこまで対応出来るかを見るつもりなら?」
「『協力プレイは禁止。羅刹と遭遇したら1対1で戦え』……その試験規則は本当に守るべきものなのか? 羅刹の方が『協力プレイ』をやってきたなら……?」

シーン7

女の羅刹から逃げようとする男。
だが、廃工場内の機械に行く手を阻まれ。


「うわぁッ⁉」

そこに光に包まれたレンチが飛んで来て、羅刹の頭に命中。

羅刹
「がっ?」

羅刹、レンチで受けた傷を片手で覆う。
そこに軽トラが走って来て、羅刹を跳ね飛す。
軽トラから下りるシーン4の小柄な女。

主人公
「おい、この試験では、武器の使用も協力プレイも禁止だろッ⁉」
小柄な女
「この試験に合格なんて真っ平なんでね。早く馘になるのが当面の夢だ」

小柄な女、手から「気」の弾を放つ。
トラックで跳ね飛ばされた羅刹は、それを避ける。
だが、「気」の弾は、軌道を変え、羅刹の背後に命中。
羅刹が事態を把握出来ていない隙に、小柄な女は間合を詰め(体がブレて見えるなど、何か特殊な力を使っているように見える描写)、羅刹に光を放つ掌底突きや蹴りを何発も叩き込む。
体中に火傷を思わせる見ための煙が立ち上る傷を受けた羅刹は崩れ落ちる。

小柄な女
「ああ、そうだ、間に合ったようだな」
主人公
「誰のせいだ?」
小柄な女
「さて?」
主人公
「他の奴が羨む程の才能が有りながら……」

主人公、9時の方向に「気」の弾を放つ。

主人公
「何で、いつも卑怯な真似をする? 何で、戦士になるのを嫌がる?」

小柄な女、同じ9時の方向(主人公が放ったのとは、ほぼ正反対の方向)に「気」の弾を放つ。

小柄な女
「自分が望んだ生き方をするのに邪魔になるモノの、どこが『才能』だ?」

主人公と小柄な女、互いに「気」を放った方向に飛ぶ。

主人公、立ってはいるが、もがき苦しんでいる羅刹に高い廻し蹴り。
しかし、羅刹が苦しんでいるのは芝居。
主人公の蹴りを捌きつつ、主人公の足を払う。
主人公、倒れつつ羅刹にフックを放つが、防がれ、拳を掴まれる。
主人公、受け身を取るが、腕を捻られる。
主人公、絶叫と共に、羅刹の股間に蹴り。
羅刹、絶叫。
主人公、更に羅刹の足を払う。
横転する羅刹と、立ち上がる主人公。
主人公、倒れた羅刹に馬乗りになるが、羅刹の全身に、血管を思わせる光の筋が浮かぶ。
羅刹、立ち上がるが、主人公も羅刹を胴締め。
羅刹、主人公を殴ろうとするが、標的が近過ぎて、威力もスピードも出ていないらしく、あっさり主人公の手で受け止められる。
主人公の両足が光り、羅刹、苦しみ出す。
羅刹、血を吐いて、崩れ落ちる。
羅刹の体から離れた主人公、荒く、息をする。

空中で互いを殴り合おうとしている小柄な女と羅刹。
羅刹の口が、突如、何倍にも広がる。
口の中には、鮫のような何列もの牙。
更に羅刹の首も伸び、小柄な女に噛み付こうとする。
小柄な女、構わず、羅刹の大きく開いた口に、拳を入れる。
予想外の事が起きて、一瞬、戸惑う羅刹。
小柄な女、羅刹の口の中に入れた手から「気」を放つ。
羅刹、血を吐きながら、吹き飛ぶ。
倒れ伏した羅刹の顔には恐怖の表情。
小柄な女、何度も何度も何度も、倒れた羅刹を「気」を込めた足で踏み付ける。
まず、両足を潰し、続いて両手、続いて腹に数発、最後に首と頭。

シーン8

講堂か体育館のような場所。
シーン5の制服に着替えた主人公達。
頭に包帯をしている者や、腕を骨折したらしく吊っている者、片足にギブスをして松葉杖を持っている者も居る。
足などに怪我をしていない者達は、全員、「気をつけ」の姿勢。

教官らしい背広の男
「では、試験結果を発表する。呼ばれた者は前に出るように。岬啓吾」
松葉杖の男、必死で前に出る。
教官らしい男、冷たい表情。
「北海道第4管区に配属。後方支援部門でデスクワーク。次、阿久津明美」
頭に包帯を巻いた女。前に出る。
すれ違った「岬啓吾」と呼ばれた男に一瞥。困ったような戸惑ったような(どう云う表情をすればいいか本人も判っていない)表情。
岬と呼ばれた男は、辞令らしい封筒を口に咥えている。
「中国第2管区に配属。後方支援部門で現場業務。次、真佐木まさきみつる
小柄な女(無傷)前に出る。「嫌な予感しかしない」と言いたげな表情。
「首都圏第1管区に配属。『戦士』」
小柄な女、あからさまに舌打ち。背広の男、キツい目で睨むが何も言わない。

俯瞰ショット。
背広の男の「次」という声が響く。

まだ辞令を受け取っていない主人公。
周囲の者は怪訝そうな表情。
主人公だけ固い表情。

背広の男
「最後、緒方亮二」
主人公、前に出る。

背広の男
「辞令を渡す前に言っておく、お前の父親、緒方徹真が戦死した。単独行動その他の数々の規則違反・命令違反の結果の、15年近くに渡って『組織』最強の『戦士』であった功績を帳消しにして余り有る不名誉な死だ」
「その点をかんがみ、唯一の遺族であるお前には、見舞金および遺族年金の支給は無い」
「では、辞令を渡す。緒方亮二、北関東第1管区に配属、後方支援部門で現場業務。言っておくが『戦士』では無い以上、羅刹との交戦は禁止だ。やったなら緊急事態等の情状酌量が有る場合でも始末書だ。残念ながら、5年間の戦闘訓練と同期1位の成績は無駄になったな。非常に残念だ」

主人公の後ろ姿。

ざわめく他の生徒達。

背広の男
「静かに。『組織』最強の『戦士』と言えど、慢心すれば、こうなる事も有るのが我々の仕事だ。規則および上からの指示に忠実である事と、チームワークを重視しろ。緒方の父は、お前たちに良い教訓だけは残してくれた」

背広の男
「どうした、緒方? 早く辞令を受けとれ」

呆然とした主人公の表情とタイトル。


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