漫画原作「羅刹狩り」第2話


シーン1

人口10万〜30万の都市に有る市街地から離れた団地を思わせる風景。
「茨城県某所:土浦とつくばの市境あたり」という説明。
遠くの風景を描く場合は「内陸部」をイメージしたもの(山は見えるが、海などは無い)。
背景に街路樹などを描く場合は、桜などの4月頃の花が咲いている。

主人公と30後半〜40前半ぐらいの男1名が連れ立って歩いている。
主人公と一緒に居る男は何日か剃り忘れた程度の長さの髭のとぼけた感じの男。やや猫背気味。わざとダサい眼鏡(レンズの大きな丸眼鏡に近い形状)をかけている。
主人公・同行者ともに気温13℃〜18℃ぐらいの気候に丁度いいぐらいのラフな格好。(長袖で上着は着ているが、冬用ではない)
主人公の表情だけ厳しい。

同行者
「おい、ピリピリすんじゃねえよ」

主人公
「ですが……」

同行者
「習ってないのか? 気配の隠し方や偽装のやり方」

主人公
「偽装……ですか?」

同行者
「それも習ってねえのか……判るんだよ、格上の羅刹マルタイや俺達の同業は……『気』の大きさだけじゃなくて、パターンみたいなモノで、相手が『気』を操る能力が有るかどうかをな」

主人公
「それを胡麻化す手が有るんですか?」

同行者
「俺は1年目で『S』コースから脱落したんで、その分、みっちりやらされた。いいか、今回の羅刹マルタイは、かなり格下の奴らしいから、お前みたいな新人でも、余っ程のヘマをしない限り、そんな事はえだろうが……羅刹マルタイを俺達が調べてる事に気付かれたら、面倒な事になるぞ。下手すりゃ殺され、良くて始末書だ」

主人公
「は……はい……」

同行者
「あと、リラックスしていけ。無意識の内にであっても、能動アクティブ系の探知は絶対に……」

道の先から悲鳴。

同行者
「やるな……相手に気付かれ……」

同行者の表情、唖然としたものに。

タイトルページ

白いブリーフにランニングシャツ、裸足で原付に乗っている30前後の男の大写し。
その顔には、恐怖の表情。

シーン2

「『組織』最強の戦士だった親父は、あっさり死んでしまった」
「『人間との共存を望んでいる』と称する……最低でもQuebec級の羅刹の罠にはまった……そうだ」
「信じられない話だが……『組織』の中では、最強の戦士が無様な死に方をした、って事になってるらしい」
「そして、俺は、親父に連座するかのように、成績に見合わない役職を割り当てられた」
養父の遺体が入っている棺桶を呆然とした表情で見る主人公。

シーン3

主人公モノローグ
「だが、俺の初仕事は、頭が真っ白になるほど意味不明な状況から始まった。ここんとこのあらゆる記憶が吹き飛ぶぐらいの……」
原付が去って行った方向を見る主人公と同行者。

主人公
「あの……さっきの変態、今回の対象マルタイですよね?」

同行者
「お……追うぞ……。いや、俺が車を取って来て、お前を追う。お前は、奴を追え。ああ、くそ……どうすりゃ……畜生、『気』を使ってもいいぞ。それで、始末書モノの事態になったら、全部、俺のせいにしろ」

主人公
「了解」

主人公が深呼吸すると全身に、光る血管のようなモノが浮ぶ。
主人公の足の筋肉の絵。光る血管のようなモノが走り、筋肉がパンプアップ。
主人公の足が地面を蹴ると、衝撃波が走るような描写。

シーン4

原付に追い付く主人公。
原付に乗っている男、「えっ?」という表情。
だが、男に向けて背後から「気」の弾。
男、全身に痺れが走ったように、ハンドルから手を離す。
速度そのままで、ふらつき始める原付。
そこに、青一色のバイクが追い付く。
乗っているのは、青いヘルメットに青いライダスーツの女性と思われる体型の人物。
原付の男の首根っこを片手でつかみ持ち上げる。
運転手が居なくなった原付は迷走し、主人公に激突しかける。

青いバイクは停止。

青いバイクの運転手、主人公に顔を向け、
「大丈夫だった?」
(可能なら『かなり脳天気な口調』に見えるようなフォント)

原付の男
「お……おい、まさか、本当に居たのかよ?」

青いバイクの運転手
「ごめんね、実在してて」

原付の男
「何で、俺なんだよ? 噂通りなら……あんたの好みは……」

青いバイクの運転手
「最近、ボクの好みに合うよ〜なのは用心深くなって巧く姿隠しやがってんだよ。でも……キミみたいなのでも……」

「ゴキャッ‼」という擬音。
原付の運転手の首が、おかしな方向に曲がる。

原付の男の体から放たれる「気」が、バイクの運転手の体に吸収されていく。

青いバイクの運転手
「人間よりも好みの味に近い」

シーン5

第一話冒頭の主人公の親と思われる2人が、エリートサラリーマン風の羅刹の足下に横たわる回想。

主人公モノローグ
「羅刹は『気』を使った様々な技や異能力を使える代りに、非常に『燃費』が悪い」
「人間と同じような普通の食事に加えて、何ヶ月かに1度、人間を殺して『気』を奪う必要が有る」

主人公と親と思われる2人の死体の恐怖に満ちた顔の大写し。

主人公モノローグ
「羅刹どもが一番効率よく『気』を奪える相手は……負の感情、ただし怒りや憎悪のような激しく積極的で生き延びる事や何かを成す事につながる感情ではなく、恐怖や絶望のような消極的で諦めや無気力に近い感情に満たされて死んでいく人間らしい」

第一話で主人公達が着ていたのと似た戦闘服の女が異様に体格のいい男に片手で首を絞められ吊るされている。

主人公モノローグ
「そして……『気』の味みたいなモノは、個々人で違うらしい」
「人間だって同じ肉でも、人間に育てられた牛や豚の肉が好みの奴も入れば、ジビエの味の方が好みの奴も居る」

戦闘服の男女数名の死体。
全員が恐怖によるものらしい歪んだ表情。
それに背中を向けている体格のいい男。

主人公モノローグ
「人間に喩えるならファストフードでも満足出来るタイプの羅刹は『狩り易いか?』を優先する」
「安定した品質の上品な味の『気』を好む羅刹は一般人の中でも健康に気を使ってそうなのを標的にして……」
「多少の当たりハズレも『肉』ごとの個性として楽しみ、荒々しく濃厚で野性的な味や普通の食事に喩えるなら『歯応え』があるものを好むタイプの羅刹で、かつ十分な実力の有る連中は『組織』の戦士を標的にする」
「だが、最後のタイプの羅刹の中でも……『組織』が確認している限りでは、ただ1匹……他の羅刹どもからしてもドン引きの『食性』の持ち主が居るらしい……」

シーン6

呆然と、バイクの運転手を見る主人公。
「まさか……お前は……」

バイクの運転手、原付の運転手の死体を投げ捨てながら、
「おい、キミがボクが思ってる通りのヤツなら……絶対に言うなよ……ボクのコードネームを」

バイクの運転手、大袈裟でおどけ気味の「やれやれ」的なポーズ。
「大体、何で、同族もキミ達も、ボクにダサい渾名を付けたがるんだ?『夜の女神ラートリー』に『闇黒の女王ニルリティ』に……」

自分自身を落ち着かせるために、呼吸を整えようとしている主人公。
主人公モノローグ
「こいつこそ……伝説の『同族喰い』の……」

バイクの運転手
「あと、『X-ray級』『アンタッチャブル・ゼロ』に」

震えながらも、構えを取ろうとする主人公。
だが、まるで素人が勝てそうにない者が相手の予想外の喧嘩に巻き込まれ、頭が真っ白になっているかのような構えと表情。

主人公モノローグ
「関わってはいけない相手……向こうが、こっちに興味が無いなら……こっちから喧嘩を売るのはNGだ」
「断固、関わるな。御安全に、こいつと別れる事を考えろ。それが、この状況での正解だ」
「しかし……何故か、俺の全身全霊を支配する『恐怖』を打ち消すものが……脳の奥底から湧いて出てきていた」
「それは……疑念……」

目を一度、つぶる主人公。
再び目を開いた時、主人公の表情と構えが変っている。

主人公
「お前……緒方徹真てつまを知っているか?」

アンタッチャブル・ゼロ
「何度か会った事は有る。最近、死んだって聞いたけど……キミ、あいつの何?」

主人公
「息子だ」

アンタッチャブル・ゼロ
「失礼な事訊くけど……養子? それとも母親似?」

主人公
「はぁ?」

アンタッチャブル・ゼロ
「『気』のタイプやパターンが似てない」

主人公の眉が吊り上がり……口元が歪む。

主人公モノローグ
「たしかに失礼な奴だ。でも……無神経な事を訊かれた事による怒りが……恐怖を緩和してくれた」

主人公
「それが……どうした?」

アンタッチャブル・ゼロ
「ああ、ボクがあいつを殺したかも……って思ってんのか?」
「たしかに、条件は合ってる」
「同族しか喰わないボクは、人間との共存を望んでるか、そのフリをしている。そう解釈出来ない事もない」
「たしかに、キミ達の『組織』が存在を把握してるボクの同族で……あいつを殺せそうな奴は少ない。あいつは、キミらが言うBravo級とも1対1で互角以上、並のAlpha級相手でも勝てないまでも逃げる事は不可能じゃない」
「でも、全部、状況証拠だ」

そう言いながら、アンタッチャブル・ゼロ、ヘルメットを取る。
所々に銀のメッシュが入った明る目の茶髪。
20前後に見えるが、どこか無邪気であどけない感じの女性。「かわいい」系だが、どこかお転婆な感じもする。

主人公
「うるさい……言え……お前が……父さんを……」

主人公がパンチを放とうと構えた途端、アンタッチャブル・ゼロが突進。
不十分な体勢でパンチを放つ主人公。
アンタッチャブル・ゼロ、パンチを額で受ける。
主人公の指の骨が砕けるレントゲン写真風のコマ。

主人公モノローグ
素手の拳ベアナックルのパンチを頭蓋骨の最も丈夫な部分で受け、相手の拳を破壊する」
「それも、こっちの体勢は不十分、向こうは十分な状態でのカウンター」
「合理的な戦法だ」
「技量差と度胸が十分に有れば……」
「でも……俺は知っている。これと……同じ技を……」

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