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ベトナム革命志士 潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)自伝『自判』②巣南(サオ・ナム=ファン・ボイ・チャウ)氏序文 /≪自判の言≫

 ベトナム革命志士 潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)自伝『自判』

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 巣南(サオ・ナム=ファン・ボイ・チャウ)氏序文



 海外で生け捕られ、縄で縛られた私の身柄が Hỏa Lò(ホア・ロ)船発着所(ハノイ)に着いた。そして幸運にも、愛すべき我が国民のお蔭で、この先僅かな時間この浮身を生き長ら得ることになった。
 既に先に刑を受け、数十年も音信不通だった親朋同志らが、突とし私の顔を見て歓喜に咽び握手を求めた。それらの中には私を愛する人、嫌う人、私を知る人、責を罵る人。 だが、その皆が一様にこの私、潘佩珠(ファン・ボイ・チャウ)の歴史始末を知りたがった。
 
 何ということだ。私の歴史なぞ、一体何だと言うのか。
 それは、唯の完璧なる失敗の歴史。30年に及んだ海外流浪の人生。そこには、私のせいで罪に連座し獄に繋がれた者、既にあの世へ逝った者。群国へは戦禍を及ぼし、毒殺流刑の憂き目に遭った同胞多数。その事を思う度、いつも真夜中に一人胸を叩き、天を仰いで涙を揮うのだ。自分の思う侭に奔走した20余年間へ思いを馳せ、鏡に映る自分の眉毛を見るたびに恥を知る(眉毛を惜しまない=教導を厭わない貴い心)。私の目蓋に映る名も無き英傑同志達の皆が皆、祖国の英雄になることを渇望していたというのに。

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