ファン・ボイ・チャウの書籍から知る-他国・他民族に侵略されるとその国・民族はどうなるのか? その(2)

 その(1)の「不吉なあるある現象」から続きます。↓

「ところが、嗣徳(トゥ・ドック)帝のときに、陳践誠、阮文祥(グエン・バン・トゥン)という奸臣がいて国政に当っていた。」              「阮文祥の方はさらに性質(たち)が悪く、人の意を迎え表面を飾るのに巧みで、うまく帝の心を捉え、(中略)もっぱら賄賂を使ってフランス人と結びつき、フランス人の侵略を國の内部から援助すると約束した。彼は機密院大臣であったが、国家の機密を知ると、いつもそれをまずフランスに漏らした。」← 駄々洩れ、、、という印象を拭えません。。。『機密を漏らす機密院大臣』。冗談のようで、冗談ではありません。さて、次ぎです。⇩

 「国内にはまた范(ファム)太后がいた。彼女は愚かな上に貪欲であり、嗣徳帝の生母であったが、国政に嘴を入れ、嗣徳帝もまた、ことごとに母に伺いをたててからことを行うという状態であった。そして阮文祥は、フランス人からもらった多額の賄賂で、范太后の心を取り結んでいた。愚かな女とよこしまな臣とが国政の表と裏で権力をもてあそび、国政をくつがえし、誠実な人たちを陥れたのである。」 ←清国末期には、西太后もいましたし。本当世界中でよく『あるある現象』です。。。しかし、どうしていつも敵国に都合いいタイミングに、まんまと都合のいい人間が現れるのかな? と、思いますが、偶然ではないでしょう。これが潘佩珠が説明した、南部と北部を捥ぎ取ってのち、中部に皇室を残したフランスの意図に繋がってくるのかと思います。要するに、フランスは、早々に時間を掛けて内部を調査し尽した上で、お眼鏡に叶う駒を物色していたんだと思います。身分に劣り、貪欲で、権力欲が強く、贅沢で、勉強嫌いの太后。そのサポートをする臣下は、やはり権力・金銭欲が強く裏金大好き、嫉妬深く、立身出世に目がない。『歴史あるある』の売国コンビです。日本は勿論、大丈夫ですよねぇ…。

 因みに、この阮文祥は、彼がいづれ裏切ると心配したフランスにより、海に連れ出されて殺されて、屍を海に沈められてしまいました。。そうなんですよね、これもあるあるで、味方を簡単に裏切る人間は、又同じことを繰り返すとされ、必ず簡単に消されてしまいますね。怖いですね。。。しかし、そんな事、今更驚くことではない、とばかりに説明してくれるのが、「ベトナム亡国史 序文」の梁啓超です。⇩

 「今日のヨーロッパ諸国の文明は、すべてローマにその源を発している。そのローマの全盛時代というのは、植民地の人民の生命財産を掠奪し、それを用いて自らの都市を壮麗にし、家来を気ままに使ったのである。」「天の道はまことに厳しく、ただ強いものに味方するばかりで、ローマの名誉は数千年にわたって全世界に輝いている。その伝統をついでいる国、すなわち現今のいわゆるヨーロッパの列強は、そのローマの精神を受けて我が物顔にふるまっているのである。」       「このローマの残忍なやり口を他民族に課しているものは、ひとりフランスばかりではなく、その災厄をこうむっているものは、ひとりヴェトナムばかりではない。滔々として全世界の風潮はすべてこれなのである。」 ← 帝国主義日本は原爆落ちて、『あやまちはもう繰り返しません』ともうずっと反省を続けてますし、共産主義ソビエト崩壊で東西冷戦も終わりました。それでも、中東テロリスト・リスク、今また新たにロシア・中国の脅威に、流行性ウィルス風邪も。みんなで一所懸命に『自由社会と民主主義』を守りたいですけど、で、結局自由社会って、もしかしてローマ帝国のこと??⇧(笑) と、こうなりますと、一休さんにとんちで答えてもらわないと判らないので、脱線せずに続けたいと思います。潘佩珠の説明による、植民地の税金あれこれ、ほんの一部をご紹介します⇩   

 「税金は、*客を招く→山譚所(警察署)の許可書 一回30文 *牛飼い→年に50文 *豚飼い→年に20~30文 *犬、猫飼い→年に10文 *塩一升→年々値上がり、銅貨3、4元(しかも、製塩所も塩市場も押さえられている。)*その他、一切の土地の産物や酒、米なども流通品は押さえられ、ベトナム人が扱うことができない」等々、、自分達の豊かな土地で、自分達で作ったものなのに、、、、全て税金でギュウギュウです。働いても全部税金で政府に盗られてしまう。。。。悲惨です。

田畑税:土地を3等級に分け課税する。税金が払えないと、フランスは農業官吏へ土地を交付して耕させ、税金を地方官に払わせる。要するに、税金が払えない農民の土地を取り上げ、フランスが回収した上、税金を地方(ベトナム人)に負担させる。』

人頭税と労役税:例えば、人頭税は成年男子一人につき毎年金2元2角。労役税は労役免除税で、成年男子一人につき毎年8角。毎年どんどん上がる。』

家屋税:家の家屋にかかる税金。家の前後は堂軒税、軒の外は庭税、庭の外は門欄税、門の外は園居税がかかる。門の外にすべてフランス文の書付あり、無き場合は重罰を受け、即座に追放。』

生死税:生まれた時、死亡した時、役所で届けを出して税金を納める。』

契約税:手続きをなす際には、フランス人に税金を納めてこの用紙を受け取り、それを使って取引しなければならない。背けば国法に背いた事になるので、その契約は無効になる。』

塩酒税:塩田に普通の田畑の税をかけ、塩田税もかける。要するに2倍。また、粗製塩は、フランス人が抑えベトナム人に売るが、直接ではなく何重にも税を収めないと現物を買えないシステムが出来上がっている。酒も塩程ではないがシステムは同じ。』

寺社税:神社仏閣は大・中・小の3つの等級に分けられ、フランスの官吏に税金を納めフランス文の証文を受けとって、はじめて奉祀できる。これにより寺社は荒れてしまう。』

手工業税:手工業者には、人頭税の外にこの税金をかける。証文が無ければ仕事を禁じられる。』

産物税:一切の土地の産物にはそれぞれの専税がかかる。例えば、茶煙草税など』

煙草の諸々の税:煙草栽培税、製煙税、煙草流通税、煙草卸税、煙草小売税。これから市場に入る時にも市場で税金を納める。』

⇧と、ここまで来ますと、流石に「く、苦しい。。。」と息するのも税金がかかってしまいそうで、何とは無しに息苦しくなります。。。税金、税金、税金、、、働けど我が暮らし楽にならず、じっと手を見る。。。流石の太宰修も、植民地の課税にはびっくりではないでしょうか・・・。

 このような厳しい税金の取り立てをされて、ベトナム人民がキレてしまって暴動を起こす危険性はあったと思います。これを取り締まる、管理する方法が4つある、と潘佩珠の詳説は続きます。⇩

1,「フランス人は、ヴェトナム人の財産をただ取りするために、一妙法を編み出した。それは『英豪会』。其々地方で、狡猾姦悪な有力者でみんなの鼻つまみになっている者を選んで『英豪会』と名付け、月に2度集まって、儲け話の情報交換をさせる「この連中は、学問も無ければ良心もなく、悪事に駆り立てられる時には、蜜を見つけた蜂のように群がってくる。」

2,「フランス巡警隊=陰名『密魔邪(マッ・マ・タ)』又の名を『瞿列兵(コ・リエット・ビン)」「父母兄弟もなければ家も無く、まともな仕事にもついていないごろつきを、まず選び、その顔付きを吟味して、人並外れて獰猛で狡猾そうな者に限って合格させた。合格させると、まずそのごろつきに命じて天に向かって罵りの言葉を吐かせ、次にその父親の緯(いみな)を呼んでこれをののしらせる。かくして大喜びで賞金を与えて、入隊させる。」。。。これが、当時の仏印の「秘密警察」とは。。。これでは、堅気に手を出さないヤクザが仮面ライダーに見えるでしょう・・・。

3,「愚弄し、籠絡する術」、即ち「科挙の武科を廃止し、惰弱で物の用にもたたぬ文科の方は、そのまま」にして、「国中の人材の大半は、この道をとることによって腐敗して行った。」そして、「片言のフランス語に通じ、四書五経などおよそ解さない連中を重んじ」、「高い地位はすべて金持ちや売国奴たちの閥で占められ」たということです。。

4,「フランス人は、ヴェトナムに2つの新聞を創設した。一つは大フランス日報であり、一つは大ヴェトナム日報である。」「フランス日報の方は、フランス人が全く掌握し、新聞上で何を論じようと、ただフランス人が承知しているだけで、ヴェトナム人は何一つ口出しすることが出来ない。」「ヴェトナム日報の方は、ヴェトナム人が仕事を受け持ってはいるが、その主幹はフランス人で」、「フランスの保護政策を称賛し、謳歌する記事を書く。」 ←メディアコントロールの基本ですが、最も効果があります。この状況に対して、潘佩珠はこんな嘆きをしています。⇩

「もともと新聞というものは、それを喜んで読む人達がいて、初めて成り立つものである。ところがこの新聞は、各府県郡村の会計係に郵送され、公けの会計から紙代が支払われるのである。大きな府県は、毎月の新聞代が銀30元、小さな府県は月15元、郡村も、大きな所は月6元、小さな所で月3元であり、こうしてフランス人の懐には、毎月何万元もの銀がころがり込み、ヴェトナム人は霧の中で天を望むがごとく、およそ何一つとして本当の事は知らされないのである。」

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続くその(3)は、潘佩珠の説明による「植民地の政治・教育・法律制度」を見たいと思います。

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