重ねた積み木を壊したくなる、子ども心を捨てられない

2,3歳の従兄弟の子どもや、甥っ子と遊んでいたときのことである。

みんなで時間をかけて、慎重に積み重ねた積み木を、甥っ子が突然つついた。

僕らの目の前で音を立てて積み木が崩れる。

口を開いて驚く『真似』をする僕に、子どもたちがケタケタと大きな笑い声をあげて

いたずらな、心底楽しそうな瞳を向けてくる。

今に始まったことじゃあない。

子どもたちは積み上げたものを壊すことをいとわない。

どれだけ高いところまで重ねられるだろうとワクワクしていた僕を置いて、

彼らは「重ねることより倒すことの方が楽しいじゃない」と言わんばかりに笑っていた。

だから次は、さっきより高い積み木を積み上げて、

最後の積み木を甥っ子が重ねる前に、そっと押した。

ゆっくりと斜めになって、畳の上で散らばる積み木を、

子どもたちがまた手をたたいて笑う。

僕も笑った。

なぜかわからないけれど、重ねることより壊すことの方がめちゃくちゃ楽しいことを思い出した瞬間だった。


大人になると、大抵散らかすことを怒られる。

途中で壊すことも、投げ出すことも良しとされない。

たぶん、子どもたちがもう少し大きくなって、

小学生くらいの彼らに僕がこんなことをしたら、

泣いて怒られるか、親に言いつけられて僕は叱られるかもしれない。


だけどどうしてか、僕は時々自分の積み重ねたものを、

あの子どもたちのようにどーんと崩してみたくなることがあるのだ。

例えば仕事。

仕事を覚え一人でできるようになると、安心感よりも

「ここで覚えることは終わった」と思って飽きてしまうことが多い。

できるようになるまではすごく楽しいのに、完成したら全部どうでもよくなる、という困った悪癖だ。

そうなると、どれだけ努力した仕事でも、うまくいっている仕事でも、

積み重ねた積み木をつついて壊したくなるように、

これまで積み重ねてきたものをリセットして、やり直したくなるのだ。

あるいはその場所から離れて新しい積み木を重ねたくなる。

これまでやってきたこととはまったく違うことを。


終身雇用の時代は終わったと言われているが、「なるべく長く続けられる安定した仕事を」と考える人が多いのも事実だ。

やっぱり仕事でもなんでも、長く続けられる方がいいと思う。それは僕もわかっている。

分かってると口では言ってもやっぱり自分の心は全然別のところにあって、

やっぱり無邪気に積み木を重ねては壊し、重ねては壊しを繰り返したあの時の子ども心を、どうにも忘れられない自分がいるのだ。


なぜ今、こんなことを書いているかというと、

まさに現在、1年間積み重ねた積み木を崩して、新しいものを作ろうと画策しているからである。


やっぱり自分は、どれだけ高く積み木を重ねるかよりも、

新しい積み木を一から重ねる、そのワクワク感の方が楽しくて仕方ないらしい。


さぁ、次はどんな積み木を、どう重ねよう?

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