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『ヒプノシスマイク』30曲分くらいの音楽ネタを解説しようと思います【Part 2】

▼前回記事
『ヒプノシスマイク』30曲分くらいの音楽ネタを解説しようと思います【Part 1】

前回記事はかなりたくさんの方に読んでいただけたようで、本当にありがとうございました!
前回に引き続き、【Part 2】となる今回も、『ヒプノシスマイク』の楽曲でサンプリング(引用)されている音楽の元ネタを解説させていただこうと思います。皆さんのヒプマイ楽曲の解釈の幅を広げる一助となれば幸いです!

※解説に入る前に…

・本記事では、Spoyifyプレイリスト『ヒプノシスマイク 音楽ネタ 【サンプリング⇒元ネタ】』の曲順に沿って楽曲のご紹介していきます。Spotifyユーザーの方は、ぜひご一緒にお楽しみください。

▼リンク先
ヒプノシスマイク 音楽ネタ 【サンプリング⇒元ネタ】


解説スタート!

1.「Yokohama Walker」 - Hypnosis Mic -D.R.B.- (MAD TRIGGER CREW)

【元ネタ①】「Straight Outta Compton」 - N.W.A.

【元ネタ②】「AREA AREA」 - OZROSAURUS

一曲目はMTCの「Yokohama Walker」、個人的にヒプ楽曲のなかでも1、2を争うくらいに好きな楽曲です。
ストレイトアウタヨコハマ 誰がこの街の王様?」という歌い出しは、「Straight Outta Compton」からの引用かと思われます。
その意味ですが、ヤフー知恵袋に有識者様のわかりやすい和訳があったので、引用させていただきます。

Outta とは Out of の事です。
Straight outta とは Straight out ofと言う事です。
Comptonはご存知の通りロスアンゼルス市内でギャング抗争の激しい町ですね。この歌詞も大分危険です。
内容はギャング抗争で拳銃を使い刑務所送りになり、その仕返しは出所したらすぐ行くぞっ!と歌ってます。
Straight outta Compton とは正に(俺が戻って来る時は)「コンプトン刑務所から直接行くからな!」って言う事です。


Yahoo!知恵袋「straightouttaってどういう意味ですか?

「Yokohama Walker」では、元ネタのコンプトンという地名をそのままヨコハマに置き換えて引用したようですね。
N.W.Aは、暴力的な日常をテーマに扱う「ギャングスタ・ラップ」の元祖として知られるグループで、詳しく知りたい方は、彼らのグループ結成から脱退、再結成までを描いた伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』をぜひご覧ください。

やや話が逸れましたが、MTCがギャングスタ・ラップの伝説であるN.W.Aをサンプリング、イメージぴったりですね。
今後の記事でも、ヨコハマの楽曲をまだまだ紹介していこうと思っているんですが、そこでもギャングスタ・ラップからのサンプリングをご紹介することになると思います。
本当にこの辺はヨコハマのお家芸みたいになってきてますね。

そして、【元ネタ②】ですが、OZROSAURUSについては前回記事【Part 1】でも紹介しましたね。「横浜といえばオジロ」といっても過言ではないくらい、ハマを代表するヒップホップグループです。
そして、「AREA AREA」は彼らの代表曲、オジロから一曲選べと言われたらこの曲を挙げる方も多いかもしれません。
ここで、理鶯さんのverseに着目しましょう。
「目には目 ゲリラ相手に手に汗 撃破して次のエリアへ」というラインは、「AREA AREA」の印象的なHook(サビ)「ここからそこ エリアからエリア そこからここ エリアからエリア」を連想させます。
ちなみに、前回紹介した「ROLLIN'045」でも「エリアからエリア」っていう同様のフレーズが聴けたりします。
もっというと、「Yokohama Walker」のMVは明らかに「ROLLIN'045」を意識した作りになってます。

「ROLLIN'045」MV、冒頭カット

無題

「Yokohama Walker」MV、冒頭カット

無題2

続きは動画でチェックしてみてください!


2. 「迷宮壁」 - Hypnosis Mic -D.R.B.- (Matenrou)ヒプノシスマイク -D.R.B- (神宮寺寂雷)

【元ネタ①】「クズ」 - GADORO

【元ネタ②】「GO ON」 - GADORO

寂雷先生のソロ楽曲「迷宮壁」は、作詞を手掛けたラッパーGADOROの作家性が色濃く表れた一曲となっています。

GADOROはレぺゼン宮崎のラッパーで、「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 4th LIVE@オオサカ」のゲスト出演でご覧になった方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。(わたしはライブビューイング見に行ったんですけど、ゲストの時間ほぼワンマンみたいな空気感になってましたね笑)

彼の楽曲には、「俺がNo.1」「俺は金持ち」「俺はモテる」と自身の成功体験を誇るHIPHOP文化(※「ボースティング」と言います)とは対照的に、自身の貧しさや等身大の情けなさを卑下しながらそれでも前を向いていくといった、内省的な人格が表現されたものが多くみられます。
例えば、GADORO楽曲でよく出てくる「90円の緑茶」ってワードなんか、「仲間とリッチにシャンパン」みたいなHIPHOPのゴリゴリなイメージとはだいぶかけ離れてますよね。

「迷宮壁」の歌詞を見ていきましょう。
嘲笑いも仕方ない 命は儚い ならばこの身一つで死ぬ直前には笑いたい」という歌詞は、【元ネタ①】の「死ぬ直前後悔したくない 最後ぐらい笑って散りたい」というフレーズに表れた死生観を彷彿とさせます。
そして、「生きる為に死ぬか もしくは死ぬ為に生きるか 答えならば後者」という歌詞からは、【元ネタ②】の「今、生きたいと言って死んで 今、死にたいと言って生きてる奴らはいるが 産まれてねえ奴にはその選択すらも出来ねえってことさ」という歌詞に共通する部分が見えてきます。

両方とも直接的な歌詞の引用という訳ではありませんでしたが、作家性が表れているという意味では、「迷宮壁」はヒプマイ楽曲のなかでもかなり顕著な一曲だと思います。
ということで、この曲が好きな方は、GADOROの曲も聴いてみると良い出逢いがあるかもしれません。


3. 「IKEBUKURO WEST GAME PARK」 - ヒプノシスマイク -D.R.B- (Buster Bros!!!)

【元ネタ】「B-BOYイズム」 - RHYMESTER

(※公式動画がなかったので添付省略)

バスブロのマイクリレー曲で、ライブでも大盛り上がり必至のキラーチューンですね。
曲名は、石田衣良原作の小説で、言わずと知れたクドカンの代表作『池袋ウエストゲートパーク』(通称『I.W.G.P.』)のオマージュです。
一郎さんのキャラクター的なモチーフが『I.W.G.P.』主人公、マコトなんじゃないかって話もありますね。

さて、本楽曲では、RHYMESTERの代表曲「B-BOYイズム」の「Kick the verse 歌詞蹴っ飛ばす まるでストレス飛ばす ジェットバス」という名ラインが、一郎さんのVerseで「このヴァース 蹴っ飛ばす」という形でサンプリングされています。
ちなみに、「B-BOYイズム」には、日本語ラップ史上もっとも有名なラインのひとつで、「決して譲れないぜ この美学 ナニモノにも媚びず 己を磨く」という一節があります。
コアなブクロ推しで、この時点でピンと来た方もいるんじゃないでしょうか?
実は、コミックスの特典CD「BB's City (山田二郎 & 山田三郎)」で、ここのラインがサンプリングされているんです。
引用されているのは、「決して譲れない 美学ですらない」という二郎さんのVerseです。
ブクロ絡みの楽曲2曲にわたって、RHYMESTERからの引用が見られるんですね。(※実はもう一曲ブクロのRHYMESTERサンプリング曲があるんですが、ご紹介するのは別記事で)

そんな「ブクロ、RHYMESTER大好き疑惑」ですが、ここでRHYMESTERというグループについて見ていきましょう。
RHYMESTERは、宇多丸Mummy-Dを中心としたヒップホップグループで、90年代から今なお活躍を続ける、日本語ラップの最重要グループの一つです。
宇多丸さんの名前については、もしかしたら映画評論家やラジオパーソナリティーとして見覚えのある方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?
Mummy-Dさんは超絶ラップ上手男で、余談ですが、氏が声優・入野自由さんに詞を提供した「トップランナー」という曲は、ランニングをテーマに日常の情景を美しく切り取った名曲ですので、アルバム曲なんですがめっちゃオススメです(ヒプ関係なくてすみません…)

そして、RHYMESTERを日本語ラップの最重要グループの一つと位置付ける功績ですが、当然諸説あると思いますが、ハードコアなイメージが強かった当時のシーンにおいて、「不良じゃない普通の人がラップ」をした部分が大きいんじゃないかなと思います。

こちら山と積まれたビデオ・ソフトそして蔵書
人の居場所侵食して今も更に増殖
唯一オレのカラダぶん空いたスペースを想像しろ
そこが寝床兼イルなフレーズの製造所
壁に貼ったポスター見て引くならお引き取りを
逆に客は選ぶぜ 基本はオレ独り用
見ろ 群れたがりども 尻目にひっそりと 紡ぐまた別のヒストリーを
WELCOME2MYROOM
ガラクタ詰まったオレの小宇宙
WELCOME2MYROOM


「WELCOME2MYROOM」 - RHYMESTER

ビデオや本、ポスターで埋もれた自室を「ガラクタ詰まったオレの小宇宙」と表現した名曲ですが、RHYMESTERはインドア派な普通の人の日常をラップにしちゃうんですよね。
かつては超不良だったものの、アニメ鑑賞やラノベ趣味に誇りを持つ(※公式プロフィール「趣味をバカにされるとキレて手がつけられない程に暴れる」)一郎兄や、その姿に憧れる二郎が、RHYMESTERにどこかシンパシーを感じるのも自然なのかもしれませんね
※この辺は、私がわねりの解釈の味が強いです!ぜんぜん皆さんも自由にいろいろ考えてみてください!


4. 「Shinjuku Style ~笑わすな~」 - Hypnosis Mic -D.R.B.- (Matenrou)

【元ネタ】一網打尽 REMIX feat. NORIKIYO, SHINGO★西成, 漢 - 韻踏合組合

シンジュク・ディビジョン麻天狼のバチバチなマイクリレー曲です。
楽曲名やHookで随所に使われている「Shinjuku Style」というフレーズですが、これは、新宿アウトローのめちゃ怖ラッパー、漢 a.k.a. GAMIが提唱した「新宿スタイル」という信念を元ネタにしています。
これは「新宿スタイルはリアルしか歌わねえ」という、言葉にすると一見簡単に見えるかもですが、「ラップで嘘をつかない」、逆に「口にしたことは絶対に実行」という、実はめちゃくちゃ恐ろしい信念です。
一つ有名なエピソードで、漢が率いるHIPHOPグループ「MSC」のメンバーの一人が、MCバトル中、相手に「今度お前を見かけたら刺すからな!」と言ったんですが、「勢い余って事実にないことを言ってしまっても、一週間以内に実行できればリアルになる」という自分たちで制定したとんでもないルールに準じて、仲間の発言をリアルにするために、MSCが実際に相手のラッパーを襲撃したという事件があります。
さらに刺激的なエピソードを知りたい方は、漢さんの自伝『ヒップホップ・ドリーム (河出文庫)』をお買い求めください。

楽曲に話を戻しましょう。
【元ネタ】に挙げた「一網打尽 (REMIX)」は、大阪のHIPHOPグループ「韻踏合組合」による楽曲です。なお、白膠木簓さんのソロ曲「Tragic Transistor」の作詞を担当したHIDADDYさんも同グループに所属しており、1分36秒くらいからラップしてるサングラスおじさんがその人です。
そして、漢 a.k.a. GAMIも本楽曲に参加しており、3分30秒頃から彼のVerseが始まります。
聴いていただければ一発で分かりますが、漢さんのVerseで聴ける「シンジュクスターイル」というフレーズ、歌い方まで「Shinjuku Style~笑わすな~」のサビにそっくりですよね。

他のディビジョンを全部ぶっ潰すぞ的なハードさが特徴の本楽曲ですが、「新宿スタイル」という言葉の重みを知ると、より鬼気迫る内容に聞こえてきませんか?


ということで、【Part 2】はここまでです!
次回は、ハマ、ブクロ、そしてオオサカ・ディビジョン「どついたれ本舗」の楽曲を取り扱おうと思っています。
次回記事も近いうちに更新できればと思っていますが、具体的な日付を書いちゃうと「新宿スタイル」的に実現させないとマズくなっちゃうので、未定とさせてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回もお楽しみに!!!

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