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ターキーレッグ爺ともやし君

白球の青春

先日、楽しみにしていたカヌークラブの体験会に行ってきました。楽しみでドキがムネムネしていたカヌークラブ。

中学校から合唱部に所属し、以来、クーラーの効いた環境で生活をしていた僕に、初めてできたアウトドアな趣味。

照りつける真夏の太陽の下、グラウンドで汗だくになりながら白球を追いかける野球部員を、涼しい音楽室から見下ろしてきた僕にとって、ドアからアウトする日が来るなんて…

わざわざカヌークラブを調べ上げ、連絡をするくらいの行動力に、周りのひとたちも驚くほど。

涼しい音楽室から引っ張り出してくれたのは、春先に奥多摩でやったカナディアンカヌーの体験でした。

景色ひとりじめ

部活動に青春を捧げてきた僕にとって、いざ「遊ぶ」となると、何をしたらいいのかわからなくなってしまいます。

ちょっと話逸れますが、最後の大会が終わって、ボーズ頭の野球部員に、フサフサな髪が戻ってきた頃、野球に打ち込んでいたエネルギーを勉強に全振りして、テストの成績が爆上がりする様を見ながら、エネルギーの向き先って大事だなぁと思っていました。

いわゆる「最後の大会」が合唱部はだいぶ、遅いのです。

話戻しまして、遊びの経験がトボシイ僕にとって、無理矢理にでも触れない限りは、カヌーなんて出会わないわけであります。

多趣味な同期に行程の全てを任せ、「昼間っから酒が飲める」ことだけを楽しみに行った奥多摩で、(それこそ無理矢理に)カナディアンカヌーの体験をした、いやさせて頂いたのでした。

普段の立ってる目線よりも低い位置から、一面に広がる景色を見た時に、

「この景色ひとりじめだ…」と思ったのです。

と、同時に「この言葉が浮かんできた自分が単純に気持ち悪いな」と、苦笑い。

水面には視界を遮るものがなく、開けた景色が広がります。水面を吹く風と、春先の息吹と、いわゆるど直球の自然を感じ、すっかりカヌーに魅了をされてしまいました。

生乾きのメール

以降、また外に出るには難しい期間となり、渋々YouTubeではカヌーの動画を漁り、カヌーの購入をすることを仮定してAmazonを漁ったりして、通勤時間の楽しみとしていました。

(意外と、「仮定した上での調べ物」、これも趣味なのかもしれない…)

ネットの海を漕いでいく中で見つけたのが、あるカヌークラブのサイトなのでした。



先月、初めてカナディアンカヌーを体験してより、魅力に引き込まれ、カヌーをできる場所がないか探していました。

全くの初心者ですが、ホームページを拝見し、ぜひチャレンジしてみたいと思い、このメールを送らせて頂きました。

何卒、宜しくお願い致します。

こうメールを送りましたが、後から見返すと、ずいぶんウキウキしてやがるなぁと、ちょっと生乾きの匂いを嗅いだ時の顔になる。

体験会に行ったのは、この数ヶ月後になってしまったのですが、典型的なB型の当日に近づくのに比例してメンドクセが増していくヤツとの攻防戦を繰り広げながら、

ついに打ち勝ち、体験会へ参加をすることができました。

ターキーレッグともやし

「諦めちゃいけないよぉ〜」
遠くから、日に焼けた顔の中で真っ白な歯を見せながら、おじいちゃんがエールを送る。

声援の先には、汗だくになりながら、パンパンになった腕を振り下ろし、オールを水面に突き刺す僕がいました。

積極性を全身で表現するあまり、艇内に飲み物を持ち込むことを忘れ、もういっそのこと、周りの水全部飲んでやろうかと思いながら。

全くもってまっすぐに進まないカヌーにいらだちを覚えながら、スイスイ漕いでゆくおじいちゃんたちに取り残されながら、水が艇内に入って沈みゆく緊張感をもちながら、

生きてるな

と、久しぶりに感じました。
若いだけでは乗り越えられない壁(というか波)もあるものだなぁと、気持ちもカヌーも飲み込まれそうになりました。

さすが「クラブ」。
体験をするためのお金を払い、インストラクターが丁寧に丁寧に寄り添って教えてもらってたんだ。そりゃ楽しさ重視になるわけだ…

太鼓の達人で、難易度を上げた途端、急に全く打てなくて、バチをぶらんと下げるあの感じにヒジョーに近い。そしてウカウカしているとおじいちゃん達に取り残されてしまう。ゲームオーバーだドン!みたいな気楽なこと言ってられぬ。こちとら沈むドン!って感じだ。

冷や汗をかきながら、なんとか体験会を乗り越えたのでした。

それにしても、みなさん元気。僕の歳の2倍の人がほとんどなのに、みんな等しく日に焼けていて、脚はとても美味しそう。(筋肉質という意味)

ディズニーシーとかに売ってるターキーレッグくらい良い色に焼けたおじいちゃん達の脚をみながら、カヌーを担いで倉庫にしまう。もう全然目線が上にいかないくらいヘトヘトに疲れながら。

ひとりじめにした景色を見ることはできませんでしたが、自分のあんばいでカヌーを動かすのは、思い通りにいかない反面おもしろい。

ターキーレッグ爺に囲まれながら、一人クーラー育ちのもやし君は、アウトドアな青春を掴むべく、もうちょっとやってみよう。

そう、ひっそり決意したのでした。

※写真は、当時ひとりじめしたはずの景色

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