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インドはヤバいのか?いや、ヤバくない #2感覚をローカルにチューニングする

好奇心あふれる若者ならば、誰しも一度は
「インドに行ってみたい」と思い立ち、
そして「まあいつか行ってみたいけど、、、」と
多くは思い立った記憶を心の押し入れに片づけてしまう。

いつしか「インドってヤバい国なんでしょ」という
印象以上の思いを持たれなくなってしまう。
そして、バックパッカーはじめインドを訪れる人も、
周囲に期待される「ヤバいインド」を見ようとし、持ち帰る。
ヤバいインドの再生産だ。

俺はそういった「ヤバい」という言葉に
矮小化されてしまいがちな、
街のひしめき、人々のたくましさ、アウトサイダーの論理、
あるいはゆっくりと流れる大河や夕陽落ちる大地の悠久さ...
を解凍して言葉にし、
「ヤバくないインド」に調理して届けたい。

昨日、デリーのホテルチェックイン時に、支配人から「ホテルで運転手と車を手配できるから、せっかくなら明日タージマハルに行ってみてはどうか」との提案を受けた。
またしても何も知らない俺は、車で片道4時間かかるともつゆ知らず。
「いいじゃん」観光客丸出しのノリで1つ返事し、日帰りアーグラへ向かうことになる。

翌朝5時、前日の夜中に吹き荒れていた剣幕な声やリキシャのクラクションが嘘のような静けさの中、日の出とともにやはりスズキディザイアに乗り込み、デリーから出発する。

アイアムレジェンドに出てきそうな街

デリーの繁華街(パハール・ガンディ)から距離を置くにつれ、到着日には全く見られなかった草木や住宅街が見え始め、改めて異常な地区に泊まっていたことを理解する。
例えるなら初めて日本に訪れた外国人が、歌舞伎町に宿泊し、トー横を練り歩いた後に「これが日本か、、、」と驚愕するようなズレだったのだろう。
ノイダという地域に差し掛かると、道路の両脇にオフィスビルが顔を見せ始め、有名な外資系企業のロゴもちらほら現れてきた。
NCR(National Capital Region)と呼ばれる、デリーを中心とした首都圏地域でも、とりわけノイダ・ファリダバド・グルガオンは集中して投資が行われている地区なのだとか。まあ1食170円のパハールガンディに住まう俺には関係ないですよと。

いよいよデリーとアグラとの間にまたがる動脈、高速道路に差し掛かると、入場ゲートで待ち伏せていた土産販売者がスタスタと寄ってきた。
この土産を欲しいかどうかは置いといて、高速道路入場前で減速し、3〜4台の列に待っている車への商品販売は、乗車側に限りなく負担がない見事にベストタイミングだといえる。
これでココナッツや冷えたジュースでも売ってくれれば完璧なんだが、、、

時速120kmで荷台に乗車するスタッフ
道中のサービスエリアでひと息。
暑い中冷えた室内で暑いチャイをすする。
どうやら今日はInternational Yoga Dayらしく、
タージマハルの入場料が無料らしい。

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11時ごろ、ケツがそろそろ崩壊を迎えつつあった頃、ようやくアグラに到着した。
アグラの街中にはいたるところに「International YOGA Day」のお触れ書きが。
ややヒンドゥーナショナリズムの匂いがまとまりつくが、2000円のタージマハル入場が無料になるなんて、なんと太っ腹なキャンペーンだろうか!

スズキディザイアを降りて、運転手の友人だという日本語ガイドをつけることに。ググればある程度の知識は手に入るから、正直よくわからないガイドは不要なのだけど、ペアで来たメンバーの希望もありオバチャンガイドを付けることに。
今振り返っても、ガイドの話は全く記憶に残っていない。

タージマハルの入場ゲートには、恐ろしい人だかりが。
無料キャンペーン中ということで国中から宗教問わず観光客がすし詰め状態である。荷物検査も厳戒態勢で、押し合いへし合いを乗り越えながら最小限の荷物をゲートに通す。
水と靴入れの綿カバーが手渡され、霊廟と思えぬ霊廟を練り歩く。
観光地といえどもタージマハルを取り囲む庭園やモスクは広々としていて、サルや野鳥も生活を営む大きな国立公園のようでもあった。
特に鳥は、カラスかハトかインコか種類の区別がつかないけども、日本で見かけないグレーや緑のグラデーションが面白い。

巨大な庭園の中を進み、赤レンガ色のモスクに踏み入れる。
中はひんやりとしていてカラッとした風通しが気持ちいい。

ゆっくりくつろぎながら、モスクの入り口から覗けるタージマハルが美しかったので思わずシャッターを切っていると、どこからともなく地元の子どもがひょっこり現れ、いい画角に入ってきた。
調子に乗って撮りまくっていると、子どもはこちらにトコトコ歩み寄ってき

「僕を被写体に写真を撮ったから、モデル代をくれ(意訳)」

とマネーをせがんできた。
流石である。

タージマハルも1-2時間ほど満喫し、墓廟の向こう側に流れる河と雄大な大地を眺められる。
シャージャハーンの黒い墓廟も建立されていたかもしれないけど、かたや金が無くなり幽閉されてしまうとは。
「世の中金じゃない」という言葉が流布しているのは、まさに世の中金でほとんどのことが成り立つ前提だからこそなんだよな。

さて、そろそろ宴もたけなわということでタージマハルから帰ろうとすると、オバチャンガイドが「とても良い大理石インテリアを営む友人がいるから、お土産によって行ったらどうだ?紹介するわ」と言いだし、謎の店舗に連れ込まれた。

「ツアー運転手🤝日本語ガイド🤝お土産ショップ」

の連携プレーで、右も左も分からない観光客を出荷するサプライチェーンが巧妙に構築されている。

大理石ショップの店長が大理石の細工を実演しながら、力説する。
「スクラッチした時の傷つき方や光の通り方でニセモノとホンモノの違いが分かる!うちのはホンモノなんだ」
ということで、まがい物を販売する店ではなさそうだ。
確かに、ラピスラズリやマカライトを埋め込んだ青い装飾のテーブルや大皿は、誰かが言葉で説明しなくても自らが高級品だと主張している。

ホンモノの大理石は、コインでスクラッチしても削れないのだとか。

疑り深い俺も、1時間にわたる熱心な宣教と営業に負けてしまい、1000円ほどの大理石コースターを購入してしまった。
(ちなみにペアのメンバーは約20,000-30,000円する大皿を購入していた。)

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インド2日目にしてインド最大の観光地を堪能?してしまい、かなり満腹状態である。
午後11時ごろ、再びケツを崩壊させながらパハール・ガンディに帰ってきた。

明日からは、本命の訪問先である西ベンガル州・シリグリへと移動する。

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