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インフォグラフィックとして見るFF16のUIが素晴らしいので勢いに任せて書き殴る

はじめに

FINAL FANTASY XVI(以下FF16)が楽しい.

単純にゲームとしても面白いのだが,そのUIが魅力的だと感じている.
最新ハードの性能を遺憾無く発揮し,機能もビジュアルも盛り盛りでありながら,数多くの情報をさりげなく・しかし分かりやすく示されており,それによってゲームに没頭させてくれている.
今回は,そんなFF16のUIをインフォグラフィックとして捉え,どのような点が優れているかを考察し,思いつくまま書き連ねていく.

FF16のプレイ画面.以降,このUIをつぶさに見ていく.

インフォグラフィックとしてのゲームUI

インフォグラフィック=人々の行動を助けるもの

インフォグラフィックとは以下のように定義されるものである.

複雑な内容やイメージしづらい物事の仕組みなどを,把握・整理し,視覚的な表現で,他の人に情報を分かりやすく伝えるグラフィックデザイン

木村博之著,インフォグラフィックス―情報をデザインする視点と表現

「整理して分かりやすく伝えるグラフィック」として,広義には折れ線等のグラフも含まれる.また,静止画だけでなくインタラクティブなコンテンツもその範疇であり,Covid-19の陽性者数のダッシュボード等はその代表例である.

私見ではあるが,インフォグラフィックに求められる役割として,「分かりやすく示した情報から,人々に次の行動を促す・行動を助ける」ことがあると考える.例えば「Covid-19のダッシュボードを見て感染者数が増加しているから旅行は控えよう」と言った具合である.

ゲームUIはインフォグラフィックか?

上記の「分かりやすく情報を示す」「行動を助ける」といった点から考えると,ゲームUIもまたインフォグラフィックのひとつと言えるだろう.

FF16のUIを考察する

やや仰々しい書き出しになってしまった.ここからが本筋である.

その1: プレイに必要な情報の提示と現実との紐付け

まずはゲームプレイにおいて必須となる情報の提示について考える.

FF16はアクションRPGであり,敵の行動を的確に回避しつつ,剣や魔法を駆使して攻撃を行い,相手を倒すことが基本の行動となる.
この際必要な攻撃やジャンプ,主人公の相棒トルガルへの指示は,△○×□および十字キーと一対一で対応している.
さらに,△○×□で操作できることは画面右下に,十字キーで操作できることは画面左下にそれぞれ実際のボタンの配置と対応するように表示されており,「今どんな操作ができるか」「そのためにはどのボタンを押せばよいか」がさりげなく示されている.

これにより,いちいち手元を確認する必要がなくなり,画面のみに集中できる効果がもたらされている.リアルタイムで状況判断・行動を行なっていくアクションRPGにおいては,この効果は大きいだろう.

画面上の表示とコントローラーのボタンの位置が対応しているので,
画面だけ見ていれば,自然とどのボタンを押せばよいかがわかる.

同様に,L2トリガー/R2トリガーボタンで行える操作があるのだが(詳細は割愛),これもまたL2ボタンの操作で影響を受ける情報は画面の左上に/R2ボタンの操作で影響を受ける情報は画面の右下に配置されている.
この配置によって,「あの操作をしたいけどどのボタンを押せばいいんだっけ?」といった情報を得る手助けがなされている.

L2ボタンとR2ボタンの表示.L2を左に・R2を右に配置していることに加え,画面上に「L2」「R2」と表示があり,これらのボタンを押すと,その付近の情報に何か起こることが示されている

ところで,「左にあるものは左に,右にあるものは右に」というのは,言われてみると至極当たり前であり,特筆すべき事項ではないようにも思える.
しかし現実を見てみると,下の図のように左右が入れ替わっている案内のサインがあったりする.(似た話題が先日Twitterで話題になっていましたね.)
優れたものを作るには,当たり前と思われることを積み重ねていく必要があることを改めて思い知らされる.

画面上部,トイレの場所を示すためのサインは左:女性,右:男性となっている.
対して画面下部,実際のトイレの配置は左: 男性,右: 女性となっている.

その2: 空間的情報の提示によるさりげない誘導

空間的な情報が示されているときのゲームの画面.

続いてはこちらの画像について考える.
画面左側を見ると,赤い四角形が5つほど表示されている.これは,その方向に5体の敵がいることを示している(以下「レーダー」と呼ぶ).
また,その少し右には「239m」と書かれたアイコンが表示されている.これは,現在進行中のクエストを進めるためキーとなるもの(人や場所)が,その方向・239m先にあることを示している
これにより,「この方向に進んで敵と戦うべきか否か」「クエストを進めるにはどこに向かえばいいか」といった判断ができるようになり,広大な3D空間の中で,ゲームをよりストレスなく進めることができる.

左: 敵の情報を示す表示.右: クエストの情報を示す表示.

さらに,敵の位置を示すレーダーは,また別の情報も与えてくれている.
下の図に示したように,黄色の矢印が表示されることがある.これは画面外にいる敵が攻撃を仕掛けてくる際に現れるものである.
これにより,敵の攻撃を察知して回避する助けとなる.

敵の位置だけでなく,画面外から攻撃が来ることも示されている.
すこしメタな視点で見れば,主人公が持つ第六感を示したグラフィックと言えるかもしれない.

興が乗ったのでさらに一考してみる.
私自身,そしておそらく多くの人にとっては,視野の外から何かが来ることを察知するのは易々とできるものではない.対してゲームのキャラクターとは,概して人並外れた能力を持つ.
このUIは,主人公が持つ並外れた能力(いわゆる「第六感」と言われるようなもの)を示すと共に,画面・コントローラーを通じてその能力を使う擬似体験をさせてくれていると言えるのではないだろうか.

その3: リアルタイムに変化する情報の提示による判断の支援

冒頭に述べたインフォグラフィックスの役割(=「分かりやすく情報を示す」「行動を助ける」)からすると,ここまでで述べた2つの切り口は,前者(=分かりやすさ)については足りていそうだが,後者(=行動を助ける)についてはもう少しといった感がある.
特にFF16はアクションRPGであるので,そのアクションを助けるであろうリアルタイムに変化する情報の提示について考える.

RPGにおいて特に重要となる情報といえばヒットポイント(HP)であろう.多くのゲームと同様に,FF16でもHPはゲージが表示されており,自分のHPがゼロにならないようにしつつ,相手のHPをゼロにするのが基本となる.

左: 主人公のHPゲージ,右: 敵のHPゲージ.

さて,このHPゲージについても,FF16ではもう1つ工夫がある.
先ほどレーダーで敵の位置が分かることを述べたが,実はHPゲージも兼ねており,それぞれの敵の残りHPも把握できることである.
正直なところ,目の前の敵と戦っているときにレーダー上の表示もすべて見ることは難しい.しかしながら,FF16のUIは(過剰になりすぎないように気を配りつつも)限られたピクセルの中で可能な限り多くの情報を表そうとしている点は,インフォグラフィックとして見たときに特筆すべき点だろう.

レーダー上の表示からも敵の残りHPが分かる.
この図の場合,あと少しで倒せる.

最後にもう1つ.
主人公は攻撃や魔法のほか,いわゆる必殺技が使えるのだが,これにはクールタイムが設定されており,一度使うとその技はしばらく使用できない.

FF16のUIにおいては,クールタイム中である場合,その技に対応するボタンの周囲に進捗を表すインジケータが表示される.これにより,あとどのくらい技が使えないかを把握できる.
また,主人公はモードを切り替えながら様々な必殺技を使うのだが,各モードの技が使えるか否かも,丸型アイコンの色によって表示されている.
さらに,この丸型アイコンは,対応する技の属性に応じて赤,緑,…と色が変わるようになっており,(なんとなくではあるが)どのような技が使えるかもまたほのめかしている.

必殺技の使用可否とクールタイムの表示.
ボタンの周囲にある円形のインジケータがいっぱいになると,再び対応する技が使える.

特に,強敵との戦いでは必殺技を積極的に使いたいが,クールタイムがあることで「いつ使うのが最適か」「技が使えない間,どう持ちこたえるか」といった駆け引きが生まれ,ゲームをより楽しくしている.

このように,FF16のUIは,ゲーム中でリアルタイムに変化する情報を,控えめながらも確実に提示することで,プレーヤーの判断・行動を助けていると言えるだろう.

おわりに

3つの切り口でFF16のUIをインフォグラフィックとして捉えて考察した.

「分かりやすく情報を示す」「行動を助ける」インフォグラフィックとして,FF16のUIが優れている点は以下のようにまとめられる.

  1. 操作に必要な情報を示す

  2. 位置と情報を対応させる

  3. 現在の状況を示す

とこのように書いてみると,そのUI上で行われていることは至極当たり前のことである.しかし,それらを同時に実現・表示していることや,高精細なグラフィックで描かれるファンタジーの世界と共存させていることは,並大抵のことではない.

FF16のUIは,分かりやすさ,楽しさ,そしてファンタジーを1つの画面に共存させる離れ業をやってのけているのであり,そのことに私は衝撃を受け,ここまでのめり込んでしまったのだろう.

(と,堅苦しく長々書いてみましたが,とにかくFF16はオススメなので,まだの方はぜひプレイしてみてください!)

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