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Web3スタートアップ2社とVCが語る、資金調達戦略とサービスづくりの本質【イベントレポート】

Gaudiy Inc.

2022年6月6日(月)に開催された、特別イベントWeb3スタートアップの資金調達戦略

2022年4月にシリーズBで総額16億円の資金調達を完了した、誰もが素が出せるWEB3時代のバーチャルワールド「Yay!」の運営会社ナナメウエ代表・石濵さんと、豊富なベンチャー投資実績を持つグロービス・キャピタル・パートナーズの代表パートナー・高宮さんをゲストにお迎え。

同じく2022年5月にシリーズBで25億円の資金調達を完了し、Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を提供するGaudiy代表・石川とともに、Web3スタートアップの調達戦略やトークノミクスの設計、VCから見るWeb3業界などについて、リアルな事例をもとに語っていただきました。

■スピーカー

■モデレーター

ナナメウエがエクイティ調達後にIEOをめざす理由

高宮さん(以下、高宮):まずは呼び水的におふたりに聞いてみたいんですけれども、Web3スタートアップでありながら、2社のファイナンスのやり方が違っているじゃないですか。

ナナメウエは今回16億円をエクイティ調達してWeb3に舵を切るとともに、IEOをするという調達戦略。一方のGaudiyは、シリーズB・1stで25億円という額をエクイティで調達されていますよね。

事業の特性や今後の展開などをふまえて、その調達方法を選んだ理由を伺ってみたいなと。石濵さんからどうでしょうか。

石濵さん(以下、石濵):まず今回の16億は、実は1st、2nd、3rdクローズみたいな形で、最終的に集まったのが2022年2月でした。最初のエクイティ調達が決まった後にIEOをするという意思決定をして、来年のIEOを目指しています

ナナメウエ社・登壇資料より

その理由としては、今、STEPNが第4世代のトークノミクスと言われているんですよね。第1世代がCrypto Kitties、第2世代がMy Crypto Heroes、第3世代がAxie Infinity、その次がSTEPNみたいな感じで、1、2、3、4ってだんだんと進化している。

で、これがサステナブルかどうかを考えたときに、STEPNは本当に近しいところまで来ている感覚があって。これが第5世代、第6世代と、よりサステナブルなトークンエコノミーを作ることができたら、GAFAに匹敵するほどのインパクトがあるんじゃないか。そんな未来が見えてきたときに、どうしてもそこにエントリーしたかった。そのためのIEOという手段ですね。

ナナメウエ社・登壇資料より

高宮:なるほど。一方で、サービス上でトークノミクスが成立する話と、会社の調達手段としてIEOでトークンを使う話って、1つのトークンに対して2つの役割を担わせているようなものだと思うんですよね。

ユーザーのためのトークンを使ったエコシステムを回していくところに、会社の調達手段としてのトークンを絡めてしまうと、決して小さくない比率でユーザーのためではないトークンが流通する。かつ、どういうタイミングでマーケットに放出されるかのコントロールができない。

そういったボラティリティが組み込まれて、サービス運営の難易度が上がってしまうと思うのですが、そのリスクをとってまでも調達手段としての機能をトークンに持たせたかったのはなぜですか?

石濵:それで言うと、第一に日本でトークンを発行して流通させる場合、僕たちは暗号資産交換業の免許を持っていないので、どこかの取引所と組む必要がある。

その前提において、取れる選択肢は2つあります。ひとつは、海外に法人を作り、本社機能を移す。例えばBinanceなどでリスティングした後に日本に持ってくるみたいな方法。もうひとつは国内でIEOするという方法です。その2つがあったときに、僕たちはIEOを選びました。

ナナメウエ代表・石濱さん

高宮:純粋な調達手段として考えると、ナナメウエの場合は結構な金額を調達できているので、もう1回エクイティでやるという選択もある。でも今回、IEOの方に舵を切っていく訳じゃないですか。ファイナンス戦略として、どうしてトークンで調達した方が有利だと考えたんですか?

石濵:前提として、エクイティでもまだまだ調達をしていきたいと思っています。中長期的には、トークンでもエクイティでも、また調達する可能性は大いにある。

そこにおいては、バランスをみながらやっていくかなと思っていて。エコシステムに悪い影響を与えない限りにおいては、最大限のエクイティ調達をしてサービスをグロースさせたりとか、チームの拡大やエコシステムの構築とかをしていく形になるかなと。

最終的に、株主とトークン保有者の利益相反はどうするんだ、みたいな話が出てくるかと思いますが、ナナメウエの今でいうと、どのタイミングでDAO化するかとか、DAOの方が開発効率がいいかなど、その辺りはまだわからないというのが正直なところです。

両方の方向性を検討しながら、最終的にDAO化する方向性に舵を切るのであれば、もしかしたら株価が下がってしまうかもしれない。けれど、その利益相反が起きないようなストラクチャーをつくっている感じですね。

高宮:そういう意味でいうと「資本コストとして何で調達すると一番安いのか」というファイナンスの既存概念に加えて、トークンに流動性を持たせておくこと自体がサービス運営や組織運営に貢献する可能性があるので、一旦その「間口を広げておくためにIEOしておく」みたいな戦略オプションを広げるニュアンスも強いんですかね?

石濵:それもあると思います。ただ、そもそもIEOしないとトークンを発行できないという日本の問題があるので、そっちの理由が大きいかなと思っています。プラスで資金調達の手段が増えるのであれば、僕たちとしては願ったり叶ったりではあるかなと。その資金をサービスをグロースさせるところに使うっていう感じですね。

エクイティで25億調達したGaudiyのIEOへの懐疑

石川さん(以下、石川):僕からも質問していいですか。たとえば高宮さんの投資先が「トークン上場します」っていったらどう思います?

高宮:すごい難しい質問で探り探りではあるんですけど(笑)、日本の法規制がいろいろある一方で、判例はないけど弁護士の見解的にこれでセーフみたいな手法も見えてきている。

その意味では、HOW自体は頭をひねればなんとかできる前提において、事業価値の最大化という目的を達成する上で、エクイティだけのときよりも価値が下がる訳じゃなく、エクイティ+トークンの価値が最大化されるスキームであれば、いいんじゃないかと思っています。

石川:なるほど。おもしろいです。

高宮:石川さんは将来IEOする可能性は否定していないけれど、短期的にはエクイティ調達のムーブをしているようにお見受けしてますが、その辺りはどうお考えですか?

石川:そうですね。2つの理由があって、ひとつは僕たちの事業モデルの問題。エンタメIPに対してブロックチェーンを使ったコミュニティを提供しているので、自分たちのトークンを発行することで、IPコミュニティのトークン価値を高める部分と相反してしまう可能性があると。なのでシンプルに、僕たちでトークンを持つ必要はないかなと思っているのがひとつ。

Gaudiy社・登壇資料より

もうひとつIEOに関していうと、今の時代に逆行した話になってしまうんですが、僕はトークンでの上場にはすごく懐疑的です

というのも、通常のIPOって、2〜3年の監査が入って、主幹事証券の人達が金額を決めて、IRがあって…みたいな感じで、上場のための仕組みがあるわけですよ。これって別にレガシーなシステムではなくて、金融の歴史において投資家を保護するためにできたものだと思うんですよね。

で、スタートアップがトークンで上場するスキームって、エクイティでいうシード、シリーズAラウンドくらいでいきなり東証に上場しちゃうみたいなものだと思っていて。突き抜けている人達はいいんですけど、マクロ全体で見たエコノミクスにおいては、過去の歴史を無視してるよなってすごく思うんです

特にスタートアップって、よくピボットするじゃないですか。そうなったら、そのトークンって結局どうするんだっけと。サービスを変えなきゃいけない一方で、エコノミクスを成り立たせなきゃいけない投資家側のモチベーションをどう維持するのかとか、今はリスクの方が大きいなと僕は思っているって感じですね。

世の中的には、そういう時代じゃなくなってきているのはわかってるんですけど、あくまで僕はこういう意見です。ちゃんと自分達が実現したいビジョンをめざしていく上で、リスクとリターンを照らし合わせながら最適な選択をしていきたいと思ってます。

Gaudiy代表・石川さん

高宮:どうですか、石濵さん。ここに対するアンサーとしては。

石濵:おっしゃるとおりな部分もあると思います。ただ、ひとつ言えるのは、今ってうまくいかなかったものと、うまくいきそうなものがそれなりにわかってきたと思うんですよね。

実際にIEOでも、お金が集まるところと集まらないところがあって、ちゃんと目利きがされるようになってきている。逆に既存の仕組みでは、若者がFinTechできるチャンスは限りなく少なかったですし、そうした部分がうまくバランスされていくのかなっていう風には思っています。

でもそれまでの間は、色んな事件がたくさん起こると思っていて。我々が伝えていくべきなのは「自己責任ですよ」ってことかなと。

ただこれは0 or 100の話じゃなくて、投資家保護を全然しないとか、全リスクOKみたいに見えちゃうんですけど、全くそんなことは思ってないです。むしろ、そこが調整されて再構築できるのが、今のトークンの仕組みだと思っています。

トークンの買い手はユーザーなのか、投資家なのか?

高宮:この辺で僕がすごく思うのは、そのトークンを発行するサービスが、誰をターゲットとしているかにもよるのかなと。自己責任でやっていけるアーリーアダプターを狙うのか、あまりリテラシーが高くないマジョリティを狙うのか。

例えばうちのおかんみたいな、普通の人にも使ってくれることを狙っているサービスなら、法規制は当たり前のように遵守しなければいけないし、社会に受け入れられるように、怪しいといった先入観も払拭していかないといけない。一方で、リスクがないところにはリターンはない、リスク・リターンは自己責任というのが、投資における原理原則みたいな話もある。
 
純粋にサービスを楽しむためのトークンに投機性や投資性を絡めてしまうと、誰でも使うサービスとしては、社会的には受容されづらくなるような気がしていて。どれくらいマスに広げて、どれくらいの時間軸でサービスを普及させていくかによって、トークンの設計は変わってくるのかなと。また、IEOの引受先も、どういう投資家に割り当てるかで信用を補完してもらえる部分もあるので、誰を選定するかも大事かなと思います。

石川:めちゃくちゃ大事ですね。

石濵:おっしゃるとおりですね。「Yay!」のユーザーだと、結構若い人が多いです。時間軸でいうと、「いつか来たる日」っていうのが、僕はまぁまぁ早めにくるんじゃないかと思っていて。Web2からWeb3へと変化するなかで、ユーザーの活用を促進するためには、ユーザーの理解を手伝っていくというのが、僕たちの役割かなとも思っています。

ナナメウエ社・登壇資料より

高宮:そうですよね。STEPNとかも、スタートアップの人やその友達、あるいはちょっと感度高めな丸の内の人とかが入ってきてて。古参勢しかDappsを触っていなかったところから、世の中全体でいうアーリーアダプター層まで広げられたっていうのは、たぶん偉大なる功績だと思うんですよね。

さらにもう一声、キャズムを超えてうちのおかんみたいなマスに持ってくるためには、事故みたいな話を減らさなきゃいけない。普通のユーザーにとっての便益がもっと分かりやすくなってくると、世の中に普及するのかなって気はしますね。

石川:そうですね。投機とユーティリティのバランスは僕もすごく難しいなと思っていて。先日「カネくさいWeb3は嫌いだ」っていうnoteを出しましたけど、投機がいらないわけじゃない。

ただ僕が2018年からずっとコミュニティを見てきて思うところは、一番コアなファンの人達ほどコインとかNFTとかを持つことになり、入った時点では投機目的じゃなかったとしても、資産が増えていったときにちょっと価格が下がってきたら離れていってしまうのが課題だなって。

高宮:本来マスに広がる粘着性のあるサービスにしようとすると、コミュニティ要素を強めにしてエンゲージを高めなきゃいけない。そのエンゲージを高める潤滑油として、ちょっとしたお小遣い稼ぎみたいなニュアンスだったものが、逆にお小遣い稼ぎや投機性メインになっちゃうと、稼げなくなると離脱しちゃいますよね。

このあたり、VCのような投資家にも一定トークンを渡して、マーケットに彼らが放出することを前提としてトークノミクスを設計するナナメウエとしてはどう考えてるんですか?

石濵:イメージとしてはPayPayに近いかなと思っていて。PayPayって結局なんでみんなが使い始めたかというと、50%還元されるから。100億、200億という規模のキャンペーン施策などをしたのが、結構大きいのかなと個人的に思っています。そこから、ユーザーのサービスの活用が急速に進んでいって、今もなお使い続けられていると思うんですね。
 
そこから言えるのは、どんなDeFiのサービスも初期からいるユーザーの方が儲かるには儲かるんですけど、途中からしっかりとサービス自体の魅力を理解して使い続けてもらえるようにしていかないといけなくて。サービスの心地よさだったりで、ここにいたいと留まってくれるユーザーをどれだけ保持することができるか。そこは石川さんもおっしゃっていたように、投機だけだとだめだよねと僕もそう思っています。

ポンジスキームにならないトークノミクスの設計とは

高宮:ちょうどチャットで良い質問をいただいてまして、トークンを使うと、ゼロサムのポンジっぽい話になりがちじゃないですかと。AxieもSTEPNも、そのスキームから抜け出しきれてはいない。そのポンジ的なスキームにならないようにするために、トークノミクスをどう設計すべきですか?と。

石濵:これ、めちゃくちゃ複雑ですよね(笑)。

高宮:複雑だけど、僕はなんか解があるような気もしていて。要は稼いだお金をこっち側(リアル空間)の通貨に換金しようとするから換金性みたいな話になってしまって、石濵さんが先ほどおっしゃっていたように、あっち側(デジタル空間)での楽しい体験を提供してあっち側で消費させればいいんだと思うんですよ。

それでどんどん消費されてバーンしていくなかで、運営がその流通量を中央銀行的にコントロールしていって、あっち側の貨幣経済をコントロールすればいいのかなって思っていて。

石濵:まさにそうですね。STEPNが秀逸だなと思ったのは、GSTを稼げるんですけど、GSTを売らせないっていう経済設計なんですよ。

STEPN(出典:Google Play

要は、GSTを稼いで、その後にGSTをユーティリティとして使っていく。で、靴を修理するとかレベルを上げていくのは当然やるんですけど、その後離れようって思ったときに、彼らってGSTを売るんじゃなくて靴をmintさせてNFTで売らせるんですよね。そうすることによって、GST自体の売り圧がかからなくなるので、GSTが安定した状態でエコノミクスを形成できる。

そういうテクニカルな部分も、サービスを好きになってもらうとか、自分達のユーティリティを作っていくみたいなところ以外に、重要になるところだと思いますね。

高宮:それでいうと、Gaudiyさんはファンコミュニティをやっていて、向こう側での出口がすごくいっぱいあるじゃないですか。会員権的なものや、デジタル/フィジカルなグッズをつくって売るみたいなところもふまえると、ポンジっぽくならないためのトークン設計はどのように考えていますか?

石川:前提として、一定数、初期の人達が報われる設計はいいと思っていて。結局バランスかなっていうのはありつつ、エンタメ領域のいいところは、ユーティリティ先がめちゃくちゃ無限に生成できること

それに今のステーキングって、金利とかで勝負するじゃないですか。でもエンタメの場合は、ファンの人しかほしくないものを発行したりとか、限定みたいな形で一定数バーンするようなユーティリティもつくりやすい。お金っぽい部分を使わなくても、ステーキングするメリットがつくれるみたいなところはおもしろいかなと。

もうひとつ議論としてあるのは、スマートコントラクト上で、価格曲線がプログラミングできるじゃないですか。僕たちもTrust Economic Bonding Curveを設計してたりするんですが、コミュニティのエコシステムのコントロールという面において、バーンと同等に革命的だなと思ってる感じですね。

Web3はあくまで手段。サービスづくりの本質は?

高宮:一連の議論を聞いていると、Web2時代というか、一般的なビジネスの基礎を結構ベースとして使えるなと感じます。株式だって制度上はセーフだけど、壮大な上場ゴールを決めて、創業者だけ売り抜けたりすると社会的信用を失うみたいな話と近いし、FTとNFTを使い分けますみたいな話も、ゲームの世界ではよくある話だな、とか。
 
そういう意味でいうと、Web3の新しい技術だからこそ、実現できる新たなビジョンみたいなものはちゃんと必要なんだけれども、その下敷きとしてWeb2時代に使われた定型的な事業運営、サービス運営の知見も活用できるんじゃないのかなっていうのは強く思っていて。

石川:まぁ本質、どれだけクリプトエコノミクスが素晴らしかったとしても、サービスとして実用性がなければ使わないよねっていう話かなって。「どこでトークン上場した方がいいですか」とか「どこに法人作った方がいいですか」とか「クリプトエコノミクスの設計どうすればいいですか」って僕も聞かれること多いんですけど、それを考えるより先にサービスを作った方がいいんじゃないかっていうのはすごく思うんですよね。

高宮:そうですよね。ユーザー的に何がおもしろいんだっけという話で、それがユーザーに刺されば流行るよねっていうシンプルな話。

石川:やっぱり結局Web3っていうのは手段でしかなくて、ミッションを実現するためのプラグインなので。今まで当たり前のことをやった上で、それをグロースさせるために、エコノミクスを使えないかを考える。それを無視して議論する人達が結構多いなと思うんですよね。

石濵:Web3の中には、匿名でただ1億、2億稼ぎたい人たちとかも実際いっぱいいて。玉石混合されているっていうのが今かなと。一般の方々にトークンを販売するとなると、NFTにせよFTにせよ、リスクと責任が伴います。

それを嫌う人達が、今、匿名でやって失敗したらまた次に転生して…みたいにやっているのかなと思ったときに、僕としてはもう今持てる力を全部使ってやり尽くすしかないと思っています。それが第5世代として、サステナブルになることを願いながらやる。

高宮:本当にそれでいうと今のWeb3は、インターネットでいう90年代みたいな既視感があります。胡散臭いものと新しいものが混ざり合う中から本物が生まれてきて、社会的な受容度が徐々に上がってきている。

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 高宮さん

Web3のサービスを作るという意味では、今すぐにサービスを収益化しようと思うと、クリプト古参勢や投機勢に向けていった方が顕在化している市場は大きい。一方で、潜在市場としては、Web3かどうかなんか関係なく、純粋にエンターテイメントとして楽しみたいマス層の方が圧倒的に大きい。このようにユーザー層が全然違う時に、おふたりはその辺りのターゲットの違い、スケールするためのステップ論をどう考えられてます?

石濵:僕はもう、Web2の世界でC向けであたるものはないんじゃないかって思うんですよ。結局大きなインセンティブやプロモーションからのムーブメントがあって、しばらく使っていくと定着するモデルがある。何もない状態から、それこそ口コミだけとかでワーッと広がるサービスって、もうあんまりないなと思っていて。

あらゆるニーズが結構満たされているし、これ以上のクオリティを本当に人々は求めてるんだっけ? みたいに考えると、いずれにしてもトークンを絡めたマーケティング戦略も含めて、その武器を使いつつ考える必要性があるんじゃないかと思ってますね。

高宮:石川さんはどうみられてますか?

石川:うーん、難しいですよね。マーケティングの側面でいうと、Web3がめちゃくちゃ強いのは同感です。

もうひとつ思うのは、どの時代も、期待値でお金をめっちゃ集めたまま、下がるのに耐えながらマスにいく会社っていっぱいある。僕は本質的にはそういう期待値だけで膨らませるアーキテクチャは好きじゃないけど、歴史的にはそれで勝っている人達がいて。例えばBored Apeはすごくハイエンドなテクノロジーを使っているわけじゃなくて、ほぼマーケティング力だったと思うんですけど、シードで40億ドル(約4874億円)っていうバリュエーションをつけて、調達した金額でメタバースを作るみたいな話じゃないですか。

となると、歴史的にはそうやって勝ってきた人達がたくさんいる中で、今回のWeb3時代はどうなるのかな、みたいなのはすごく思います。

NFTの供給量が増えても、価値が減らないのはなぜ?

高宮:ちょっと良い感じでディープに盛り上がってる間に、そろそろ終了が近づいてきたのでQAを拾っていければと思います。おふたりの方で気になる質問はありますか?

石濵:「投機的なNFTは、オープンマーケットで生産と供給が容易であるほど、投機の背後にある希少性が損なわれるのが論理だと考えています。その論理を超えて、おかんでもNFTを使える世界が到来する論理を教えてください。」みたいな質問なんですけど。

質問の回答とはちょっとズレるんですけど、僕今NFTがめっちゃほしいんですよ。MAYCとかがほしくてたまんなくって。バレンシアガの服とかグッチの服とか全くいらないんですけど、僕はMAYCとかBAYCとかDoodlesとかがとにかくほしいんですよ。

これって別に儲けたいわけじゃなくて、普通にそれがクールだと思うし、コンテキストが好きだから僕は買いたいっていう。ちょっとは値上がりを期待するかもしれないですけど、それよりも前提にそのブランドがめっちゃ好きで、投機っていう感覚は全然もっていないです。

たぶん僕は、デジタル空間のアイデンティティを装飾する方が、リアルのものを着飾るよりもプライオリティが高い人間なんだと思っていて。供給量も増えているし、そもそもこれがJPEGってわかってるんですよ。わかってるんだけどめっちゃ欲しいみたいな気持ちになってる。これ、回答になってないですけど(笑)。

MAYCのNFTコレクション(出典:OpenSea

高宮:いや、回答になってると思います。本当に、そういうことですよね。供給量が増えることによって、その財がもつ総価値がゼロサム的に割り算されていっちゃうものと、割り算されていかないものがあるのかなと。

石濵さんが言ってた「ブランド」とかって一定量の限度内であれば希薄化されないし、「ユーティリティ」とかも多くの人が使っていたとしても、そのものの便利さって変わらない。どういう価値を提供するNFTかによると思うんですよね。

つまり、質問の前提に「価値の源泉が希少性だけに依存していると、供給量が増えることで価値が下がっていく」っていう論理があったけれど、その前提が崩れる。むしろ、ユーザーが増えるとネットワーク効果で、みんなが使ってるから楽しいよねみたいな話もあって、供給が増えたら価値が増すものだってあるって思いますね。

石濵:実際、NFTコレクションって持っている人にエアドロして、どんどん増えていくんですよ。でも結局、全体でバリエーションが増えているので、理論的には下げのベクトルがあるかもしれないですけど、それ以上に上がるベクトルがあって今価格が保たれているのが現状。

高宮:むしろ今のNFT界隈でいうと、無料とか超激安でmintして、ユーザー数を増やしてコミュニティで盛り上げて価値を高めるっていうのが流行りですよね。クリプトの市況とも連動していて、投機的としてはきついってなっている中で、コミュニティとして盛り上がって楽しむ方にふれる。本当に、色んなパターンがあるのかなって気がします。

石川:そうですよね。僕もよく、メタバースとNFTを掛け合わせて考えるときによくあるのが、デジタルなものって物理的な制約がかからないから、コストかけずにほぼ無限に生成できてしまう。その中でどう希少性が評価されるのか、ベストな価格をどう作るのかって考えていて。

Gaudiy社・登壇資料より

Gaudiyが実際に慶大教授の坂井先生とやったのは、供給量自体もオークションする仕組み。まず供給量をオークションし、そのうちの50%を販売するという前提で、価格のオークションを行ったんです。最初から希少性をつけると、ほぼ転売になっちゃうんですけど、途中から価値がつき始めて価格が上がっていって、そこから希少性が出てくるのが理想だと思っていて。

高宮:だから本当は、そこをやや中央集権的に、サービス運営者側がその供給量であったり、1供給あたりの価値みたいなのものを設計できるようにしないと、サステナビリティとかスケーラビリティが破綻しちゃうような気がするんですよね。

石川:ですね。オークションの形式は、これから色々とサイエンスされていくんだろうなと。色んなオークション理論が増えて、後から価値が上がっていく方式や、ちゃんとバランスをとって、早い者勝ちにならないような理論が、今後出てくるんだろうなと思います。

Web3はスマホシフト以来の大チャンス

石川:これからWeb3で起業したいっていう人達が多くいるなかで、投資家の目線でいうとどう評価するんですか?

高宮:それでいうと、僕ら投資家としても難しい部分がすごくあって。ベンチマークをもとにバリュエーションを判断しにくい。

Web3で「トークンで調達する」という手段が加わったときに、クリプトの市況が過熱している時は、エクイティよりもトークンの方が調達コストが安い。シリーズA、せいぜいBくらいのあとになってくると、トークンで調達した方が有利になりがちなので、実はエクイティプレイヤーのVCとして、投資するウィンドウがシードとかアーリーの方にぎゅっと寄って、その後はエクイティいらないみたいになるリスクはあると思ってるんですよね。

超長期的にみると、リスクとリターンは収束していくので、一概にトークンの方が有利、エクイティの方が有利という状況は調整されていくとは思います。
 
そこで何をもってジャッジするかでいうと、当たり前ですが、チームとか事業計画とかは本質としてありつつ、トークンとエクイティのそれぞれの世の中の需給や投資センチメントみたいなところの影響も大きいのかなと思います。Web3でいうと、今だとテーマ性としてはプラス、でもWeb3に限らずスタートアップ全般的にですがエクイティの調達環境は冷えてる、クリプトの市況も芳しくないという感じかなと思っています。
 
でも今って、スマホのデバイスシフトのときみたいな大チャンス到来だと思うんですよ。ガラケーからスマホにシフトしたときに、根源的なユーザーのバリュープロポジションは一緒なんだけれど、スマホに最適化する形で色んなサービスが出てきたわけじゃないですか。メルカリとか。そういうガラガラポンが起きるタイミングで、旧来のプラットフォームサービスが必ずしも生き残れるわけじゃない。
 
ユーザーの根源的な欲求は二千年くらいずっと変わらないので、Web3、ブロックチェーンが導入された世界において、既存のWeb2サービスが提供しているバリュープロップをどうブーストできるのか、どうなめらかに流通させられるのかっていう発想をすると、新しいサービスを発送するきっかけになるんじゃないかなと思ってます。

石川:たしかに。石濵さんは今アメリカにいて色々話してると思うんですけど、そっちはどうですか?

石濵:アメリカはWeb2は結構きつそうで、SaaSとかは4分の1のバリューになってるみたいな話がありますね。Web3も、3ヶ月前にはシードで50億とか100億とか全然あり得た話が、今はちょっとしぶい。でも、まだWeb3が一番人気っていう感じです。WeWorkとかいくと、全体の3分の1がWeb3の企業な気がします。

高宮:USと日本がちょっと違うところでいうと、Web2とWeb3がそんなに断絶してないんですよね、やってる人が。

Web2のシリアルアントレプレーナーが、あっさりWeb2の会社を畳んでさくっとWeb3の会社を新たに始めるみたいな。そういう継続性があるから、投資家としては「あのイケてるサービスつくったあの人ね」とか「あのシリアルな人ね」みたいな感じで、たぶん「人」に賭けやすい。USだとその側面が強いかもしれないです。

最近日本でもようやくお二人とかが出てきたり、シリアルな人もWeb3って言い出してますけど、そういう人達がWeb3に本腰入れだしたことで、潜在的だったマーケットが顕在化する方にすごく後押ししてる気はしますね。

石濵:たしかに。アダム・ニューマンはシードで7000万ドル(約89億円)調達できますからね(笑)。

高宮:あれもアメリカすげぇなと思って。アダム・ニューマンがもう一回起業して、アンドリーセンがまた投資するって。すごい。

石濵:すごいですよね。日本のVCもリスクとってください、ぜひ(笑)。

高宮:がんばります(笑)。


さいごに

Web3スタートアップのナナメウエ、Gaudiyに興味をもっていただいた方は、ぜひ下記の情報もご参考ください!

Gaudiy(ガウディ)

「ファンと共に、時代を進める。」をミッションに、Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を開発・提供するWeb3スタートアップです。NFT、ブロックチェーン技術などの先端テクノロジーを強みに、Web3と日本が誇るエンタメカルチャーを掛け合わせ、グローバル規模の事業展開をめざしています。

ナナメウエ

「つながりを科学する」をミッションに、同世代 × 趣味趣向でつながるバーチャルワールド「Yay!」を開発、運営するスタートアップです。2022年4月には16億円の資金調達し、Web3領域に本格参入を発表。Yay!内で利用できる独自トークンのIEOに向けて準備を進めています。

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Gaudiy Inc.

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Gaudiy Inc.
「ファンと共に、時代を進める。」をミッションに、Web3時代のファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を開発・提供するスタートアップです。ファン経済圏の創出をめざし、Web3×エンタメ領域でグローバルに向けた挑戦をしています。