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猫と人が快適に暮らせる賃貸の作り方、教えます。 〜エピソード11:猫を安全に外へ出せる工夫

4つ目の猫と人が快適に暮らすための工夫は、「猫を安全に外へ出す工夫」です。「え?完全室内飼いが大前提なのに、外に出しちゃって良いの?」と思われる事でしょう。私の監修する猫専用物件では、猫を出すことを前提に1階の部屋には専用テラスを、2階以上にはバルコニーを設置するケースが大半です。今回は、猫を安全に外へ出すため、Gatos Aptで行っている施策を解説します。

猫を外に出すメリットとデメリット

まず、猫を外に出す際に生じるメリットとデメリットを考察してみましょう。

メリット
 ・猫の気分転換
 ・猫のストレス解消
 ・ひなたぼっこの場所として活用

デメリット 
 ・脱出の危険性

多くの保護猫団体の方々が「完全室内飼いにしてください」と仰る最大の理由が「脱出の危険性」を危惧しての事だと思っています。では、出来る限り猫が脱走する可能性を潰してしまおう、というのが私の考えです。

1階の部屋に設置するテラスの場合

最も脱出の可能性があるのが、1階のテラスからです。その為、私の監修物件で猫を出せるテラスを設置する場合は、以下の条件を厳守して設計しています。

 1. 約2mの塀を設置する
 2. 2cm以上の隙間を作らない
 3. 塀は猫がよじ登れない様な素材、構造にする

1の「2mの塀」の2メートルは、これまでの経験則から割り出した高さで、科学的な根拠はありません。元気な雄の若い猫であれば、2mの塀をジャンプして飛び越える事は可能だと思います。が、若い猫であろうとほとんどの猫がジャンプすることはありません。猫は好奇心の強い動物なので「これは面白そうだ」とか「ここは登れそうだ」と好奇心を刺激する箇所があって初めて行動にうつします。2mの塀が目の前に迫り出していて、向こう側も見えない・塀の上部がどうなっているか分からない・爪を引っ掛けてよじ登る所もなければ、猫は敢えて「よし!この塀を飛び越えてやろう!」とは思わないのです。しかし、敢えてでも飛び越えてやろうとする猫がいます。エピソード9に書いた猫たちの場合です。詳しくはぜひエピソード9をお読み頂ければと思いますが、簡単に説明すると「保護したての野良猫」が要注意に当ります。その部屋にいること自体がストレスになっている猫の場合、なりふり構わず脱走を試みようとします。そういう猫は死に物狂いで塀をジャンプして脱走しようとする可能性があります。そういう猫がいる場合、飼い主さん監視の元で徐々に外に出すようお願いしています。最初のうちは、子供の転落防止用のネットをホームセンターやECサイトで購入して取り付けることも推奨しています。

2の「2cm幅」ですが、これも2cm以内であれば子猫でも通り抜けるのは難しいであろうという経験則からの割り出しです。実際の私の監修物件では1cm未満に抑えています。が、この「隙間を作らない」というのが実はとても難しいのです。様々なタイプの塀が市販されていますが、例えばブロック塀の上にアルミ製の塀を設置する場合、ブロック塀とアルミ塀の間は支柱だけになり、2cm以上の隙間が空いてしまうタイプが殆どです。市販品で全く隙間のない商品に出会った事はないので、いかにこの条件が特殊であるかお分かりいただけるかと思います。そのため、私の監修物件で塀に市販品を使う場合、隙間を埋めるための部材を特注しています。

3は、主に塀の組み方を指します。例えば塀を作るにあたって、木の板を使うとします。板を横にして組んで行った場合、板と板の間に猫が爪を引っ掛けることができる隙間が生まれます。この隙間に爪を入れてよじ登ってしまうことを防ぐ、という意味です。Gatos Aptで板を使って作る場合は、これを防ぐため縦組みで作ります。Gatos Aptを建設している際の話しです。毎週末、工事現場を訪れていた私は、工事も終盤に差し掛かり、大工さんがバルコニーの塀を作成している現場にたまたま居合わせました。すると大工さんは横組みで塀を組み立てていたのです。慌てて「そこは縦組みでお願いします!」とお願いしたところ、すでに半分組み立てていた大工さんは「え?だって普通は横で作るんですよ?」と不服そうでしたが、事なきを得ました。

2階より上の部屋の場合

賃貸では1階であろうが2階であろうが全て同じ間取り、ということも珍しくありません。また建蔽率の兼ね合いで法律ギリギリの寸法に合わせた小さなバルコニーが付いているケースも良く見かけます。大抵、こうしたバルコニーは高さが120cm程度です。猫は欄干の手すり部分に飛び乗るのが大好きです。手すりに飛び乗った猫は、そこから外へ飛び降りるでしょうか?答えは「いいえ」です。大抵の猫は飛び降りません。但し例外があります。手すりからジャンプできるところに飛び移れそうな場所があった場合、例えば木やお隣のバルコニー・窓だったり、猫が「これはジャンプして飛び移れそうだな」と判断した場合、飛び移ってしまう可能性があります。もう1つは前述した「そこにいることがストレス」になっている猫の場合、です。動物界で自殺する動物は人間だけなのです。自ら進んで命を絶とうとする猫はいません。ジャンプして落下する猫は大別すると2タイプだと考えます。上述の意図的なジャンプは、実は少数派です。では、もう一つのケースは何でしょうか?それは、「事故による落下」です。

猫がバルコニーから落下する最大の理由とは

我が家の猫ウーは一度だけ、バルコニーの手すりから落ちた事があります。私の住んでいる地区では火曜日が古紙収集日で、事件は月曜日に起こりました。Amazonなどでの買い物で出た大量の段ボールが、いつも置いてある場所に入りきらず一時的にベランダの欄干に立て掛けた状態で置いていたのです。その場所はいつもジャンプして手すりに乗る場所で、ウーは何度もジャンプした事がある経験から、恐らく大丈夫だろうと考え、段ボール越しにジャンプしたのです。不運な事に手すりより高い段ボールに後ろ足を引っ掛けてしまい、勢い余ってそのまま落下してしまいました。すぐさま1階にウーを助けに行きました。2階からの転落だったこともあり、怪我もなく無事でした。これは完全に飼い主である私の失態です。以降は段ボールを立て掛ける事がないよう気を付けています。都市伝説のように「猫は高さ20mから落下しても身体能力が高いので骨折する事なく無事に着地できる」という話しがありますが、あれは真っ赤なウソです。2階からの落下でも骨折などの怪我や死んでしまう可能性は高いのです。ましてや3階以上の落下は致命的です。万が一、助かったとしてもショックでパニックを起こし、何処かへ行ってしまうかもしれません。
もう一つの事例は手すりから落下した原因として良く聞く話しです。特に冬に多く発生しています。それは前日に雨が降った場合です。習慣的にベランダに出している場合、前日に雨が降っていても、出すタイミングで晴れていれば習慣的にウッカリ窓を開けてしまう事があるものです。いつものように外に出た猫は、欄干の表面がどうなっているのか知る由もありません。いつものようにジャンプして、表面に水溜りがあり、滑って落下してしまった、寒さで水溜りに氷が張っていた、と言った場合に事故が起きてしまうのです。
ベランダ欄干からの落下はこうした意図しない事故のケースが殆どなのです。

2階以上のベランダ欄干に施すGatos Apt流の工夫

こうした落下事故を防ぐ事を主眼に、Gatos Apt監修物件の多くでベランダ欄干に工夫を施しています。それが「猫返し」の設置です。落下事故の多くが欄干に飛び乗った際、不意に滑ることに起因しているので、例え滑っても支えとなるストッパーの役割をする、下の写真のような猫返しを設置しています。

Chaton Gardenのベランダになる猫返し

手すりの上にL字の返しを付けることで未然に落下事故を防ぐ、という仕組みです。ちなみに写真の部材は北海道にある住宅建材会社から購入しました。購入する際、その会社の方からこう聞かれました。「この部材、東京で一体何にお使いになるのですか?」と。営業さんが訝しむのも無理はありません。元々、この部材はビルの屋上縁に雪が積もらない様にするための「雪避け部材」なのです。

実態はどうなのかを検証するべく、私のツイッター・アカウントでベランダから猫が落下したことがあるかどうかをアンケート調査しました。こちらの結果をご覧ください。

「ベランダがない/出さない」を含めると「落下したことがない」のは89%、大多数を占めます。「落ちたことがある」と答えた10%の方に状況をお伺いすると、「正確には落下したのではなく手すりを経由してお隣のベランダへ入ってしまった。」、「滑って落ちてしまった。(※無事でした、とのこと)」というお答えでした。つまりほとんどの場合において、例え猫返しのような装備がなくとも猫が落下することがないのですが、10%の不幸な事故が起こらないためにも、猫がベランダに出せる様にするには、猫が不慮の事故で落下することがないよう施す必要があると考えています。

Gatos Apt監修猫専用物件の外に出せる工夫集


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