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【100の職種プロジェクト】第1回 視覚障害×行政書士 行政書士の顔を持つ大学生

100の職種プロジェクトはさまざまな障害や特性がある人たちが社会で働く中で、どんな職種や業種で働いているのか、社会で働く障害のある社会人のみなさんにインタビューをし、障がい種別や特性と職種や業種をかけ合わせた100通りの働き方を発掘・発信する試みです。さまざまな障害や特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を実現すべく、Collableのインターン生が取材を行っています!

第1回では平田紳次さんにお話を伺いました。
視覚障害があり、現役大学生である一方で行政書士の資格を在学中に取得し、行政書士事務所を開業されております。行政書士とは何か、そして同年代でありながら既に社会で働く平田さんはどのような思いで仕事をされているのか、その中身に迫りたいと思います!

———ご自身のことや、障害について教えてください。

日常生活に関わる法律科目を学びつつ、倒産法、労働法などの興味のある科目を学んでいます。これらは元々労働事件を専門にした弁護士になりたいということで履修している科目ですが、司法試験の受験科目としても学んでいます。

障害に関しては、視覚障害がありまして眼鏡をかけても視力が低い状態で右が0.1、左が0に近いです。光が感じられるくらいです。あともう1つは視野障害がありまして正式名称は「求心性視野狭窄」になります。ざっくり言いますと、何か筒状のもので覗いて見てるような感じです。

———行政書士を仕事としてされてるということですが、具体的な仕事内容についてお聞かせください。

例えば皆さんレストランとかで食べたり、温泉に行ったりすると思うのですが、そういった施設だったりサービスというのは、国や都道府県の許可が必要になってきます。
その許可を取るために多くの書類を書いたり、あとは役所と打ち合わせをしたりというものがあるのですが、それを代わりに「私達行政書士がやりますよ」というようなことを主にやっています。なので「サービスをつくったり運営したりする企業の代わりに行政手続きに関する書類を書きますよ」っていうようなのが主な仕事になってきます。個人の方のご相談も受け付けることもあります。

その他にも、個人の方で例えば契約書を作ったり、あとは遺言書の作成についてアドバイスをしたり、警察への告発状とか告訴状というものを作る人もいたりして、その業務の幅が広すぎて行政書士は何をやっている人なんだとよく不思議がられます。
僕の専門領域は補助金です。「新しいことをやってみたい」とか、「今やってるところをもうちょっと良くしたい」となった時に、国がお金を出してくれるという制度があるんですけど、そういったものの申請を専門として今はやっています。あとはその会社を建てたいですっていう時の会社設立手続きとかというものが僕の中での専門になってきます。

———行政書士として働くまでの経緯は何だったのでしょうか。

私が中学高校になるぐらいの時に、電通の過労自殺の事件がすごく話題になった時期だったのですが、そういった話や、あとは教員の働き過ぎの問題っていうのも、その時に大きく報道されてた時期でした。

当時盲学校に在学していたんですけど、盲学校のその建物の中に寄宿舎が入ってて、夜の9時ぐらいになると最後に帰る先生が寄宿舎に電話しに来るんですね。「最後帰ります」っていうような連絡を夜9時ぐらいにしているっていうのを僕が見てしまって。「将来は何にしようかな」って考える時、その遅くまで働いている先生の姿が、あの電通の事件とも重なり、何か心に引っかかったんです。そう考えているうちに、労働に関する問題を解決できるような人、労働専門の弁護士になろうかなというふうに最初思いました。

当時高校1年とか2年生だったのですが、弁護士になりたいから法学部に行こうかって考えていました。資格を色々とったら有利になるということを聞いたので、法律の試験を受けようということで、トランシーバーを動かすための免許を取得したんです。その際に法律の勉強をするのですが、その時に「これ(法律)面白いな」と。

また別の資格を受けようということで、宅地建物取引士という資格を高校2年の時取って、大学2年の時に行政書士をとりました。しかし、資格を取っただけだとちょっとなんか中途半端で嫌だなと思ったので、「行政書士登録をして社会の色々なことを知れたらいいな」っていうので、行政書士として登録をしました。当時は18歳成人が始まりましたけど、そういった関連のことや、あとは視覚に障害のある方のサポートができればいのではないかななどと色々考えながら、社会に出て色々体験しよう経験しようという経緯で、行政書士になりました。

———自身の特性と業務を照らし合わせた際に工夫していることはありますか。

今は基本的な業務はパソコンでしているんですが、紙での申請が必要なものもあります。ただ、その申請書の紙というのはインターネット上に転がってたりするので、市役所のホームページから探してパソコンで全部文字を打ったり、直接パソコンにペンで書いて、印刷して出すというような形で対応しています。紙の書類を用意するというようなことは基本的にせずに、大体パソコンで完結できるようにまとめています。

あと、建物の図面を書く仕事っていうのが、視覚に障害がある僕には難しいんですよね。例えば「ゲームセンターを開きたい」という際には図面やその建物の配置図を書かなきゃいけないんですけど、図面を引くことは僕にはできないので、そういった仕事は受けないようにしています。

———仕事のやりがいを感じるときはどういう時でしょうか。

業務をやり終えた後に「先生に頼んでよかった」っていうふうに言ってくれる方が多くて嬉しいです。それから、これは最近の話ですが、行政書士が専門で受けられるとある業務があったんです。しかし途中でルールが変わって、行政書士がその業務を扱えないことになったことがあったんです。行政書士の業界でも話題になっていたものでした。当時この業務に関わる案件を担っていたんですが、このルール変更により、案件の途中でお断りせざるを得ない状況になってしまったんです。その時のクライアントさんが「優秀な行政書士さんに頼んでいたから、行政書士さんがやっぱり駄目ってなったのはとても残念です」っていうふうにコメントしてくださって。

やっぱりなんていうんですかね…頼ってくれたっていうか、優秀だって言ってくれたことにすごくやりがいっていうか、やってよかったな、社会に出て良かったなって思いましたね。

行政書士に依頼をしてくれるというのは、決して安いお金ではないので。法律専門職の一つなので、1件1件が結構単価として高い。なのでやっぱり通常の仕事と比べると、ものすごく神経使うんですけど(笑)。役所とやりとりをしたり結構動いたりするような仕事なので、そういった中で最終的な評価として、親切にしてもらったりとか、親身になってくれたっていうお言葉をクライアントさんからいただくのは、もうすごくやりがいとして大きいですね。

———大学生をやりながら、行政書士のお仕事をされていますが、モチベーションはどこから来るのでしょうか。

どこからきてるんですかね(笑)。でも僕の場合は結構忙しいのが好きな人間なので、常に何かしていたいっていうのがあるから続けられるとか。やっぱりこの先は強く弁護士になりたいっていう思いがあるので、そう簡単には諦めるわけにいかないというのがモチベーションになっているんですかね。

———平田さんは現役大学生ですが現在進行形でやっていること、やっておいた方が良いことはありますか。

大学生だと他と比べると本当に自由時間が多いと言われていて、あとオンラインの交流とかそういうシステムがすごく発達してきてる段階にあるので、色々なイベントに参加したり、行動したりっていうのはすごくハードルが下がってると僕は思います。なので興味あるものないもの関係なく、とりあえず何かに参加してちょっと世界を見てみるっていうのをやっておくといいのかなと思います。僕もそういうふうにやっていろんな知識を得たり、交流したていて、やっぱ色んな活動していくと学校とかが評価してくれるので、人によってはその頑張りでモチベーションアップっていうか意欲がどんどん上がっていくようなものになると思っています。学生時代はもうとにかく時間があると思って、比較的時間ある方だと思って積極的にもういろんなところに首を突っ込んで欲しいなっていうことは僕は思います。

———最後に障害学生に伝えたいことがあれば教えてください。

アルバイトとか「障害があるから雇いません」というものが往々にしてあるわけなんですけど、そういうのがあるからやめるのではなく、意識を変えるために色んなところに首を突っ込んで、できないと思われてるっていうものをこうすればできるとか、できないわけではないということを広める。広めて、障害のある方が社会に参加できる環境作りとして色んな所に首をつっこんで自分を「売り込む」じゃないですけど、障害はあっても色々できるんだってことを見せ続けていくべきなんじゃないかなっていうのは思います。


同じ大学生でありながらも自分のやりたいことに対して真っすぐ突き進む姿が印象に残り、私もやりたいことに向かって頑張ろう!という気持ちになりました。現在の環境を活かして興味あるものに首を突っ込んでみることがやりたい仕事への第一歩なのだと思いました。インタビューを続ける中で平田さんの興味・関心が垣間見えてとても有意義な時間でした。
平田さん、ご協力頂きありがとうございました!

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この記事を書いた人✍️

記事を書いた人のプロフィール。かりえ。中度の聴覚障害の大学4年生。普段は両耳補聴器で生活しています。趣味は漫画、アニメ、美術館など多数・・・。好奇心旺盛です。


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