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【100の職種プロジェクト】第2回 筋力障害×エンジニア&フリーランス 時代の先駆者として働く

100の職種プロジェクトはさまざまな障害や特性がある人たちが社会で働く中で、どんな職種や業種で働いているのか、社会で働く障害のある社会人のみなさんにインタビューをし、障がい種別や特性と職種や業種をかけ合わせた100通りの働き方を発掘・発信する試みです。さまざまな障害や特性を活かせる、多様な選択肢のある社会を実現すべく、Collableのインターン生が取材を行っています!


第2回では千里さん(仮名)にお話を伺いました。
千里さんは筋力に障害があり、体の力が弱いそうです。しかし、千里さんはWebやプログラミングの仕事が確立していない時代に先駆け、PCをフル活用してフリーランスとして働き続けてきました。そんな千里さんはどのような思いで仕事をされているのか、その中身に迫りたいと思います!

———障害特性について簡単にお聞かせください。

私の障害は筋力がない障害で、例えば握力で言うと、測れないぐらいないですが、パソコンは打てます。正式名称は「​​先天性良性筋緊張低下症による両下肢機能の全廃・両上肢の機能の著しい障害」という障害で、障害等級は1種1級です。字も絵もかけます。今私がいる位置はベッドの上で、普段はベッドの上で過ごしています。外出や入浴のときにヘルパーさんに移乗させてもらい、外出のときは車椅子を使用をしています。生活はほぼ全介助です。

———現在の仕事に就くまでの経歴を教えてください

私は養護学校出身なんですけれども、学校の選択科目の中に当時プログラミングを学ぶ授業があったんですね。学ぶというより、まだ先生もできない時代だったので、自分で勉強するという形だったんですけれど、さらにその後職業訓練校で学びました。そのときの講師の先生がIT関連企業をやっていらしたので、そこで雇用されたというのが最初です。社会人としてはそこがスタートです。

実はその会社に入る前に一度別の会社の障害者雇用の面接を受けたんですね。受かったんですけれども、運転免許が必須と言われて、私はどうしても運転免許が取れなかったので、そこで辞退させていただきました。

その次に数ヶ月間自宅でデータ入力のお仕事をやりました。当時データを入力するのはかなり専門職だったんですね。フリーランスとして自宅で請負いの仕事を数ヶ月やったんですけれども、「ちょっとこれは自分には物足りない」と思っていたところ、その講師の先生が前からうちに来ないというお話をいただいてたので、そこで改めてお世話になったという感じです。

当時は90年くらいでまだWindowsはなかったです。パソコンというものはあったんですけど、マウスを使うってことはなくて、全部キーボードで操作するものでした。今、パソコンって液晶画面ですよね。それがブラウン管だった時代です。ノートパソコンもCDも当時なかったかな。

———IT関連の仕事とかプログラミングといった仕事を選択される方は、今に比べると結構少なかったってことでしょうか。

おそらく少なかったですね。今インターネットって、月額で利用料を支払いますよね。でも、その当時はもう今よりも全然遅くて「パソコン通信」と呼ばれているような時代で、使っただけお金を払うっていうタイプでした。自宅でインターネットを活用して仕事をしている方っていうのはまだあまりいなかったと思います。

———フリーランスということですが、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

まず家で完全にできる仕事なんですが、仕事の中身はとても広いです。
例えば、設計も含めてプログラミングしたり、画像処理をしたり、時々映像を作ったり、それから文書処理もします。時々、リライティングといって録音物を文字起こしする仕事もあります。なのでかなり幅的には広い仕事を受けていて、基本的にパソコンでできる仕事は受けるようにしています。職種が何かと聞かれると、ちょっと説明が難しいんですけれども、とにかくパソコンでできるスマホでできる仕事は何でもするという感じで受けています。
今お客様が何名かいらして、その方々からも定期的にお仕事をいただいているという状況です。

———今請け負っているお客様からの依頼は具体的にどのような内容なのでしょうか。

1件は、鍼やマッサージの企業です。
そこでネットショッピングをやっているので、そのサイトのお手伝いをしています。具体的には、各Webサイトのページの作成修正、それから簡単なCGIを作ります。あとは画像処理などで、例えば、マッサージベッドを扱っているメーカーさんからカタログ画像を頂きます。ベッドのシートは18色の中から選べるのですが、画像のシートの色がブルーだったとして、それを他の17色に加工していくといった内容です。並行して印刷物があるときは、デザインから入稿までしています。また、この会社のみなさんと一緒にボランティア活動をしてたりもしますし、企業の社長さんが別個で障害者団体をやっていらっしゃるので、そちらのお手伝いもさせていただいてます。これもやっぱり印刷物とか、あと文章を作るとか、そういったお手伝いですね。

もう1件のお客様は、大学の教員をしていらっしゃる方で家政学の先生なんですけれども、消費者研究をしていらっしゃる方です。現在はコロナ禍なので海外出張はされてないんですけれども、コロナ前はわりと年に一、二回行っていましたので、そのときのインタビューのリライティングや時々教科書を書かれるのでそのお手伝いをしています。たまに、英文英訳・・・仮訳ぐらいですが、そういうこともさせていただいてます。印刷物もあります。他には、その授業で使う資料を作るお手伝い。例えば、コロナ禍になってからパワーポイントを使う機会が増えているみたいなので、それを作るお手伝いをしました。あとは原稿をいただいて、それをフォーマットに落として、見た目も整えるっていうのがありましたね。

———かなり幅広くお仕事されていますが、1日の流れはどんな感じですか。

案件が発生したときにメールでいただいて、それを私のタイミングでさせて頂いてます。1日のスケジュールでヘルパーさんが入るとか、この曜日は外出日であるとか、リハビリが入るということがあるので、その日ごとにルーティーンが変わるんです。なので1週間程度お待ちいただいて、出来上がるっていうぐらいのサイクルで考えてます。

———その中で大切にしていることはありますか。

優先順位です。そのお仕事をいただくときに、「なるべく急ぎでお願いします」って言われることもあるんですけど、でも実際できないので。そこは優先順位を決めて、その隙間時間のタイミングに合わせて、じゃあどの仕事をやっちゃおうとか、これを先にやっちゃえばこちら後でいいとか、そういうことはもう自分の判断で決めています。

———学生にこれだけは伝えたい!というものを教えてください。

これ私三つ考えてきたんですけど、一つは、皆さん学生さんでいらっしゃるので、第二外国語学ばれてると思いますが、どんな言語でもいいので一つ身につけてほしいです。というのは、大学の外国語の授業ってやっぱり授業、つまり学問なんですよ。それを実際に使えるぐらい学んで欲しいなと思ってます。それが仕事に結びつく可能性もなくはないですし、視野が広がります。世界が広がる。私はなかなか外国に行くことはできないんですけれども、世界の人たちが持っている価値観とか、文化、そういうものを言語を通して知ることによって、自分の考え方が広くなるんですよ。なのでぜひ皆さんにはね、何か一つ、第2外国語をやっていただけたらなと思います。

二つ目はやりたいと思ったことはなんでもやってください。人間ってね、いつ死ぬかわからないんですよ、3秒後に死ぬかもしれないんです。そのときに後悔をしないようにやりたいときに今すぐやってください。できないかもしれないって絶対思っちゃうと思うんですけど。むしろ、どうしたらやれるだろうかって考えてほしいんです。失敗してもいいからやってみる。失敗したらそこで直せばいいじゃないですか。それが二つ目。

三つ目は、自分自身がハッピーでいることを意識してください。日々楽しいと思えるような1日にしてください。もう「私いつもハッピーよ」っていう、気分ってね自分で選べるんですって。泣いてるときは自分が泣きたいときなんですって。だからいつも楽しくいられるように工夫してください。もちろん泣いてもいいんですよ、泣いても怒ってもいいんです、むしろその感情を楽しむぐらい。今は私悲しいんだなって。怒っているんだなってそれも楽しめるぐらいに1日を楽しく、そして寝る前は必ず「今日は幸せだった楽しかったな」って思えるように過ごしてください。



IT関連の仕事が当たり前でない時代の中で自身にできることを見つけ、マルチに仕事をこなしてきた千里さんの姿は私たちにとって学ぶべきものがあると思います。インタビューのやりとりの中で千里さんの人柄が直に感じられとても有意義な時間となりました!私も千里さんのように芯を持って行動していきたいなと感じています。ここでは触れられなかったお話もたくさんあり、大いに盛り上がりました。千里さん、お時間いただきありがとうございました!

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この記事を書いた人✍️

記事を書いた人のプロフィール。かりえ。中度の聴覚障害の大学4年生。普段は両耳補聴器で生活しています。趣味は漫画、アニメ、美術館など多数・・・。好奇心旺盛です。

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