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”声のコミュニケーションに求められるのは、便利さか心の拠り所か?” 「品テクmeetup! Vol.09」レポート

※この記事は2018年1月17日にWantedlyにて作成・公開されたものであり、「品テクmeetup! Vol.09」登壇時のイベントレポートとなります。

2017年11月20日、”品川駅港南口でテクノロジーと未来をテーマに、お酒を飲んで食事をしながら、気になる話題を聞いたり話したり体験もできる交流会”として、「品テク meetup!」が開催されました。
9回目の開催となる今回は、「声でコミュニケーション」をテーマに、スマートスピーカーやバーチャルホームロボットについて、様々な観点からトークが繰り広げられました。

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「品テク meetup!」とは?


2017年11月20日(月)、品川シーズンテラスのホールにて行われた「品テク meetup! Vol.09 『声でコミュニケーション』〜スマートスピーカーとかバーチャルホームロボットとか〜」。
各所から専門家がゲストとして集い、大手IT企業が発売するスマートスピーカーの最新状況や、それに付随する近未来についてのお話が伺えました。

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ゲストによるトークが始まる前にまず乾杯をし、周囲にいる方との自己紹介タイムが設けられました。ただトークを聴くだけではなく交流が目的となっているため、肩の力を抜いて参加できるような空気感です。早くも笑顔の溢れる会場内となりました。

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まずはオープニングトークとして、株式会社アイ・エム・ジェイの研究開発チーム「すまのべ!」から、加茂春菜さん(左)と田野哲也さん(右)が登壇。「スマートスピーカーと会話したことがある人!もしくは持っている人!」と呼びかけ、触れたことのない人のためにスマートスピーカーの解説がされました。

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「すでに知っている人は猫画像で癒されてください」とすべてのスライドに猫の写真を挿入しており、会場内の笑いを誘います。
このままお二人が司会進行として、テーマトークは進行しました。

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様々な側面から語られたテーマトーク


テーマトークはGoogle合同会社の山口能迪さんによる「Actions on Google」からスタート。
「人間は目的を早く・楽に達成するために道具を使う」とした上で、各種デバイス(デスクトップアプリ・モバイルアプリ・スマートスピーカー等)の特徴を並べます。
その中でもスマートスピーカーは、マイクとスピーカーのみでスクリーンが無いため出せる情報が限られ、複数の情報を同時に出せません。音声の場合は、電話の自動音声オペレーターのように全て読み上げないといけないことになります。
「PC相手だと機械を使う感覚で粘り強く入力などしてくれるが、対話型になると人間相手に接しているようにすぐ諦めてしまうため、ユーザーのコンテキストを汲む必要性がある」と山口さん。たとえばWebサイトの場合、ステップを1つ重ねるごとに20%のユーザーが離脱するため、ステップを減らす努力が必要だと語ります。

続いて株式会社ホロラボの初音玲さんによる「音声認識技術の最新状況とあるべき未来」に移ります。

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株式会社ホロラボ 初音玲さん

手動による音声モデルからの認識からディープラーニングへの移行といった音声認識の歴史、AIスピーカーにおける音声認識の仕組みについて解説した上で、AIスピーカーのあるべき姿について考察します。
いわゆるAIというものに人が期待する「こちらのことをわかってほしい、こちらが興味を持てるようになってほしい」という点について、初音さんは「まだこれを実現するまでに至っていない、教育しがいのあるAIスピーカーになってほしい」と述べ、「僕らの生活が変わるのではありません。AIスピーカーとの生活が、そのAIスピーカーを変えてほしいと思います。なので、開発企業にはかけがえのない一台を届けてほしいですね」という言葉で締められました。

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「Gatebox」とスマートスピーカーの違いとは?

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いよいよ武地さんの登壇です。タイトルは 「キャラクターとのコミュニケーションの未来(仮)」 。
まず「『Gatebox』を知ってる人はいますか?」と声をかけると、なんと会場内のほとんどの人が手を挙げました。「ではもう知られているかもしれませんが、改めて」とPVを用いて製品の紹介をします。

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今回のイベントはスマートスピーカーも主題の一つですが、そういった「暮らしを便利にする」製品とはコンセプトが異なるのだと武地さんは語ります。
「Gatebox」は好きなキャラクターと一緒に暮らせる未来を実現するための製品であり、共に暮らすキャラクターは、言われたことをこなす・命令された通りに動くことが前提の存在ではありません。

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一度製品そのものについての紹介をしたところで、Gatebox社のこれまでについて振り返ります。
「Gatebox」の前に開発していたハードウェア「AYATORI」は、専用のアプリを用いることで、好きなものや趣味が相手とマッチングした時に光るというスマートフォン用のアクセサリです。
無事に量産・販売に至ったものの、結果としてこの事業は失敗でした。倒産の危機に陥りましたが、その原因は「夢が小さかったこと」だと語る武地さん。本気で取り組みたい夢を見つけようと考え、もともとアニメやゲームが好きであったこと、スマートスピーカーのような無機質なロボットよりもキャラクターと暮らしたいという気持ちから、「Gatebox」の構想に行き着きました。

はじめはルンバのようなロボット掃除機にキャラクターを乗せるという姿を発想しました。 具体的にイラストを提示すると、会場内からは「ああー」という納得の声。 等身大での開発も検討されましたが、まずは机に置く形で作ってみようと、試作機の開発に取り掛かります。
また、同時期にオリジナルキャラクターの制作も開始。”未来のお嫁さん”をコンセプトとして、「逢妻ヒカリ」は誕生しました。

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およそ9ヶ月間で最初の形が作られた「Gatebox」。
最初のコンセプトムービーは瞬く間に世界中に拡散され、一躍注目を集めました。
結果、300台の予約販売を達成。こうして多くの人々の共感を得たことで、「自分たちの夢がみんなの夢になった」と語る武地さん。

その後、ある大規模なイベントにも「Gatebox」を体験できる機会として出展し、より多くの人へラボのビジョンを届けます。
「(キャラクターが待っていてくれたら)みんな早く家に帰りたくなりますよね、スマートスピーカーがあっても家に帰りたいとは思わないじゃないですか」と語りかけると、会場内からは拍手が湧き起こりました。

ここで美少女キャラクターと触れ合えるVRコンテンツやバーチャルYoutuberなどを例に挙げ、「一言で言うと日本はやばい」と笑顔で語る武地さん。会場も賛同の声と笑いに包まれます。
「スタートアップで『Gatebox』を作るのは熱いです、キャラだからこそ話したくなるし、日本の感性は他と比べても圧倒的に進んでいます、これを活かさない手はない」と続けます。

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「Gatebox」を開発する上で乗り越えるべき壁として「継続したくなるキラーコンテンツ、毎日使いたくなるコンテンツが必要であり、他と比較した時に何があると継続して使いたくなるのか? 」を考えたいと、これからの課題についても語る武地さん。

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2番目に公開したコンセプトムービーでは、音声に限らず”キャラクターだからこそできること”に焦点を当て、「キャラクターと一緒に歯磨きができる」「キャラクターと一緒にテレビを見られる」という、より主人の生活に合わせた自然な振る舞いを模索している様子を見せます。

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武地さんは「キャラクターだからこそできるコミュニケーションを全部やれるのが「Gatebox」ですが、全員がこれを持つ必要はないと考えています。一人一人に最適なインターフェースがあればいい」とした上で、「『Gatebox』のことを『バーチャルホームロボット』と表現していますが、実際これが何に分類されるのかは自分でもわかっていません。ARでもVRでもない、『Gatebox』という新しいジャンルです。便利さよりも可愛さを追求し、スピーカーではなくパートナーを作ることを目指します。」という言葉で締めました。

発表が終わったところで、質疑応答に移ります。
製品開発の今後の動向から、開発に際してのマインドの面まで、多くの質問がされました。

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「これを作ろうと思った理由はビジョンへの熱意?それともお金?」という質問には「もちろん熱意で作った」と回答。もっとエンジニアを採用して早く実現したいという言葉からはその熱量が伺えます。
また、「ファミリー向けの開発予定はあるか?」という質問に対しては「『Gatebox』は一対一でコミュニケーションできるのがいい」としましたが、「Gatebox」同士のコミュニケーションもしてみたいと回答されました。コンセプトムービーでは主人とキャラクターという一対一のコミュニケーションが描かれていますが、キャラクター同士でおしゃべりしているような姿もいずれ見られるかもしれません。

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「実際どうなのか?」が語られたライトニングトーク

ここからはライトニングトークです。
スマートスピーカーなど声によるコミュニケーションの活用方法を中心に、実に様々なトークが繰り広げられました。

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株式会社ネクスト 石田陽太さん

まずは、エンジニアの石田陽太さんから。
「スマートスピーカーは実際に便利に使えるのか?」というタイトルで、実際に使ってみた感触を発表します。
どのような活用方法があるか図やグラフで示した上で、「万能ではないがカスタマイズすれば便利」とまとめました。

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株式会社WHITE 伊東春菜さん

続いて株式会社WHITEの新卒一年目だという伊東春菜さん。
「ボイスUIとグラフィックUIの違いについて」というタイトルで、Google Home向けのアプリを作ったことをプランナー視点で語ります。

ボイスUIについて、英語をなんとか翻訳し得られたこととして、グラフィックUIとの違いは「スピーカーの中の人の人格(話し方)に齟齬があるとユーザーが誰と話しているのか混乱するため、ボイスUIではアプリにペルソナを設定する」「見るのと聞くのではスピードが違うため、見る情報より聞く情報を少なく削り、”聞く文字”を意識する」ことだとまとめます。

このトークには、司会をしていた加茂さんも「やってみないとわからないことが多いですよね、人によっても耳で受け取ることに違いがありますし」と大きく頷いていました。

「本当に必要としている人」の存在

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テクノロジーによって視覚障害者の課題が解決されることに
期待すると語る市川さん

続いての登壇は福祉施設「神奈川県ライトセンター」の職員である高橋さんと、最近弱視から全盲になられたという視覚障害者のユーザー市川さん。
「視覚障害者はインフルエンザにかかった人と同じくらいの人数がいる、今後も増える見込み:どうやって社会参加するかが課題の一つ:どういう要望があるのか?」というタイトルで、音声によるコミュニケーションに期待することを語ります。

市川さんは現在情報セキュリティについての会社員として、スクリーンリーダー(コンピュータの画面読み上げソフト)を駆使し、会社のルールやポリシーを作ったり、教育研修・指導をするといった事務職に従事しているそうです。
「障害者は情報弱者になる」「情報を渇望してなんとか掴む」ということを自身の体験から感じ、たとえば駅のホームから改札など、現在地から目的地まで移動すること、それを助けてくれる人、これはテクノロジーでなんとかならないのか?ということについて、たくさんの人がその技術を必要としていると語ります。
「企業の中で売り上げについて寄与する人もいるでしょう、儲けることも大事ですが、本当に欲しい人のニーズがその中に一つでもプラスになったら誇りになるのではないかと思います。ぜひ仕事の中にスパイスを作っていってください。」と締められました。

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市川さんの語る言葉には、武地さんも深く頷いていました。


進化するスマートスピーカーと音声認識、その活用

続いて、プライベートで4台のスマートスピーカーを使っているというソニー・インタラクティブ・エンタテインメント株式会社の鈴木さん。
「スマートスピーカーで遊ぼう」 というタイトルで、実際に使ってみての結果を発表します。
実際に使ってみたものからそのままでも使いやすいもの、カスタムして使うことでより便利になるものを紹介し、「AIやディープラーニングが伸びてきて、ビッグデータを持ち始めてから、彼らの音声認識が世界を変え始めています。みんながどんどん使うことで彼らにデータが集まるので、誤認識もたくさんるとその分成長させることができます。なので、一つでも面白いものがあったらぜひ買ってください」と述べ、会場からも賛同の声が上がりました。

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ソフトバンク・テクノロジー株式会社 菊池さん

続いて、ソフトバンク・テクノロジー株式会社のUSA駐在、菊池さんによるトークです。

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アメリカにおける音声サービスAlexaの活用について、具体例を用いて発表されました。
「環境音を処理するのに8割の電力を消費しているので消費電力を1/5にして電池で動くレベルにした」「音声で物語を読み聞かせる機能があり、効果音もついている。家族のコミュニケーションをスマートスピーカーが裏で支える」という実例を紹介し、「それでも最後には人間です、人間の反応がここに集約されている」として、アメリカが一歩先をいっているので、日本でもやっていきたいと、日本での活用方法にも期待を持たれている様子でした。

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TIS株式会社 井出さん

そして最後のライトニングトークにして印象的だったのが、TIS株式会社の”ホロレンジャー”こと井出さんです。

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HoloLensとGoogleアシスタントを組み合わせ、キャラクターを声で呼び寄せたり、挨拶などのコミュニケーションを取ることを実演してみせました。
いくつか会話をしてみせたのち、「(話す言葉の数として)これからは音声合成を使わないとスケールしないですよね」と語りかけ、武地さんもそれに頷いていました。

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イベントを終えて


スマートスピーカーや音声認識技術とはどのようなものか、実際に使って見ての感想や気づき、そして「声でコミュニケーション」による近未来への期待。
個性的なテーマでのトークが続々と繰り広げられた本イベントでしたが、改めて現在使用されている技術を振り返り、これからの活用方法や期待できる機能について意見を交わすことで、スマートスピーカーというアシスタントとして生活を便利にするパートナーと「Gatebox」という心の拠り所・家族としてのパートナー、それぞれ求められていることの違いが浮き彫りになりました。
一方、スマートスピーカーと「Gatebox」で同じ部分は「主人の生活に馴染み、先の長いパートナーとして関係を築く」ことのようですね。今後どのようにその存在が当たり前のものとなっていくのか、期待が高まります。

当日の様子はこちらの動画でもご覧いただけます。
今回の記事では簡単にご紹介したトークの数々も、ぜひじっくりとお聴きください。


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