見出し画像

支える周囲の「功績」はいつまで無視されるのか?(『アナザーストーリーズ』大島渚の回より)

(画像はNHKの番組HPのスクリーンショットです)
NHKの『アナザーストーリーズ』という番組を時々見ている。日本国内外問わず、世を騒がせた事件や人物について、報じられなかった側面から取り上げる番組で、時々気になる話を録画して見ている。過去のエピソードでは、山一證券の自主廃業と山一抗争、金大中事件の回が個人的にとても記憶に残ってる。
その番組で最近、大島渚を取り上げたのでいそいそと録画して見た。この監督自体は好きではないけど、『愛のコリーダ』と『戦場のメリー・クリスマス』、そして初期の代表作『日本の夜と霧』は結構気に入ってるから、まあちょいと見てみようと思ったのだ。

感想は色々あるが、一番強く感じたのは、彼の創作活動が周囲の尽力の上に成り立ってた事にあまり触れられなかった点で、そこがとても残念だった。
まず、奥方の俳優・小山明子さんや大島渚の母堂がいなかったら、彼はあそこまで映画製作に打ち込めなかったはずだ。彼が松竹を退社して創造社を立ち上げた事で、小山さんは結婚・出産しても俳優を続けてお金を稼いでいたし(稼がざるを得なかったというべきか)、小山さんとの間に儲けたお子さん2人の面倒を母堂に任せられた。そしてお子さんたちは、気付いた時から「大島渚の息子」として、彼の作品が社会に与えた反響、時に批判・裁判沙汰に驚きがっくりしながらも、耐えて生活していた(この辺りは番組内で次男の新さんが少し触れていたが)。彼とともに仕事をしたスタッフや俳優の方たちも、彼の色んな要求に驚き我慢しながらも、それぞれの役割を果たした。そのおかげで、彼は自分の好きなように映画製作が出来たんじゃないの?と、つい感じてしまうのだ。
こう書くと、小山さんや彼のご家族、スタッフや俳優の方たちが彼に虐げられた哀れな存在だと、私が考えてるように取られるかもしれないけど、決してそうは思っていない。例えば、小山さんは大島渚の伴侶であり同志として生きる道を自身で選び、結果的に息の長い俳優として今も活動しているし、ご子息2人は無事に育ち、次男の新さんは父親と同じ道に進み活躍している。一緒に仕事したスタッフや俳優の方たちが、何だかんだ彼を認めてて、また一緒に仕事したいと思ってたんだろう事は、こうした番組やインタビュー、記事を見ていれば伝わってくる。それ自体は良い事だと思う。ただそれは結果論であって、大島渚が家族や周囲の尽力・忍耐の上で活動出来た事実には変わりない。

彼だけでなく、また日本国内に限らない話だけど、良くも悪くも何かしら功績を残した人(特に男性)自身にはスポットライトが当たるけど、そうした人物を支えた人たち、特にご家族やマネージャー・秘書、スタッフに当たる方たちの尽力には、あまり触れられない事がまだまだ多い気がする。人間誰しも一人で成し遂げられる事なんてたかが知れてるけど、特に大島渚みたいに、良く言えば反骨心、悪く言えば自分勝手を貫き通した人は、周りが我慢出来ず「お前なんか知るかボケ!」てな感じでブチ切れて離れてったら、それこそ何も出来なかっただろう(大体そういう人たちって、何故だか家庭を持つ事が多いけど、ご家族はさぞかし大変な苦労をされてきた事だろう…)。

私個人の感想に過ぎないかもしれないけど、「アナザーストーリーズ」と言うなら、取り上げられるその人の事だけでなく、もっと周りの方たちの事も取り上げてほしい。番組制作・放送上時間の都合があるから、取り上げる話を選ばなければいけないのは分かるが、そういう話を知りたい人は結構いる(と見ている)し、より真相に迫る魅力的な番組になるはずだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?