コーヒーマシンを売るという仕事とは?
私の前職の話をお話しします。
おそらく長くなります。
コーヒーが大好きでライフワークだけでなく、
仕事にしている方も多くいらっしゃると思います。
一言で「コーヒー」とだけで言ったところで
あらゆる側面があります。
接客と提供が中心なカフェ・バリスタ業
生産を中心として卸を行うロースター業
豆を輸入してロースターに売る輸入業等
細かく分けるとキリがありません。
その中でも、コーヒーマシンを販売する職業が
一体どのようなものであるか、お伝えできればと思います。
コーヒーマシンの販売は
結論から言えばコーヒーが趣味として好きな人や
機械いじりが好きな人
コーヒー業界全体を見通したい
自分で事業を起こしたい
という考えがある人、
とても面白い職種だと思います。
コーヒーマシンを販売するということは
かなり大きな枠から言えば
ソリューションを売ることという表現が一番しっくりきます。
なぜならコーヒーマシンの大きな役割は
人の手をなるべく使わず効率的にコーヒーという液体を得るための
手段の一つであるからです。
車もある意味似ていると思っていまして
ただ何かを乗っけて走るというのが
車という商品の基本構造ですが
そこに燃費という指標や
ブランド志向が入り
ただ人や荷物を乗っけて目的地まで走るという
結果を得るための商品だとしても
家族と一緒に乗ることがメインなのか
デートで自分をカッコよく見せたいとか
キャンプによくいくとか
これだけでも思い浮かぶ商品は変わってくると思います。
僕たちはそんな車の販売と同じように
コーヒーを提供する・飲む人の環境を考えて
適切なマシンをご提案する。という仕事です。
詰まるところディーラー業に近いのです。
コーヒーマシンの販売は
基本的にBtoBです。
家庭用へのコーヒーマシンの販売というのは
家電量販店やロースターが基本的に
業者から仕入れて販売します。
先に言っておきますが
本当に儲かるのはコーヒー業界では
コーヒーマシンではなく
コーヒー豆の方です。
これは単発で終わることの多い売り上げの高い
コーヒーマシンの売り上げより
定期的に消費されているコーヒー豆の方が
売り上げの見込みが見えやすいため
マシン販売にプラスでコーヒー豆を売るという
ビジネスモデルが一般的です。
ということでコーヒーマシン業者は
コーヒー豆を販売するロースターに
マシンを売り込むことが重要になります。
ただし、スタートアップとして
カフェを開業する人などはもちろん
直接対応します。
飲食業界あるあるですが
BとCの区別がつきずらい業界でもあるのです。
さて、僕らの仕事は基本的にソリューション提供です。
ですのでコーヒーマシンを提案する際は
お客様のニーズをきちんと把握している必要があります。
想像以上に5W1Hのヒアリング力が問われます。
いつマシンをつけたいのか
どこでマシンをつけるのか
誰がマシンを使うのか
どうしてマシンを使いたいのか
どうやってマシンを使っていくのか
ですね。
ここを明確に掘り下げられる人は
前職でも提案が上手な印象がありました。
ただ、コーヒーマシンの提案で難しいのは
この中のWHYとHOWの部分に関しては
マシンの構造やブランドをきちんと理解していないと
提案が難しいのです。
コーヒーマシンは、一言で言うと
お湯の出るマシン。
と表現できるのですが、
コーヒーの抽出方法や
コーヒーという液体の特徴が混ざると
非常に壊れやすい厨房機器として
考える必要があります。
コーヒーには油分が多く、汚れやすい
コーヒーの粉を通す関係上
微分という粉が堆積しやすい。
エスプレッソという液体は
9気圧(約40kg)の圧力をかけて
抽出するため抽出手前で負荷がかかりやすい。
負荷を耐えるため金属を使用し
ボイラーは常に高温。
中身は迷路のようになっていて
いつ水が漏れるかわからない経路に
電線が這い回っている。
長めに書きましたが、これだけ壊れやすいんです。
正直、コーヒーマシンは壊れる。
というテーマだけで最低3記事くらいは書ける自信があります。
なので「この人がなぜこのマシンを求めているのか」
と「この人はどうやってマシンを使うつもりなのか」
が理解できていないと
大きなトラブルにつながりかねません。
コーヒーマシンは決して安い買い物ではないにもかかわらず
車のように一般的で国から定められている
耐久性が示されているような商品ではないため、
ディーラーである僕たちの意見がふんだんに
判断材料として取り入れられます。
しかも自分たちの仕事としてそれらを使うわけですから
「これは違う!」となると困るんですよね。
しかも日本の商品はほとんどなく、海外製。
だからいいんでしょうけど、逆にいうと
日本人からすると信じられないほど壊れやすい。
そう言った意味で、慎重になる必要はあります。
さて、提案のさわりを簡単に説明しましたが
コーヒーマシンを販売することにおいて
一番重要になるのはアフターサービスです。
これ以上のものはありません。
なぜなら売りきりで終わらない商品で
かつ壊れやすいからです。
マシンは必ず壊れます。
その時にどう対応できるかによって
お客様の営業ロスがどうなるかにつながります。
また、コーヒーはドリンクメニューの中でも
家族などを対象としていない、お酒を提供していない
というターゲットでの運営の場合は
それなりに売り上げの高い比率になります。
特にカフェとつくからにはコーヒーが飲めることがほとんど。
なので提供できないと困るので皆さん必死になります。
ですので、私たちの仕事、売るよりもこう言った対応の方が
比率としても重要度としても高くなる傾向があります。
ですのでアフタフォローはどの会社も全力で体制やサービスを
構築してます。
簡単に今のところをまとめると
・コーヒーマシンはソリューションの提供
・基本BtoBビジネス
・アフターフォロー面の仕事の割合も大きい
となります。
コーヒーマシンの会社に入ってメリットだなと思うのは
・幅広いコーヒーを飲め、提案ができること
・コーヒーを抽出するということがどういうことであるか、
マシンを通じて勉強できること
・業界の未来を感じることができること
この3つです。
コーヒーは意外かもしれませんが、
コーヒー屋さんになった場合
自分たちのコーヒーしか基本は販売しないため
ほとんどの場合はメーカーや生産者としての立場を
仕事の時には強いられます。
ただ、コーヒーマシンの場合は
あらゆるロースターさんたちのコーヒーに合わせた
マシンを提案するため、仕事で飲めるコーヒーの種類が
他のコーヒー業態より格段に多いし、勉強する必要があります。
また、ビジネスをする人の中には自分が何のコーヒーを使うのか
まだ決めかねている方もいらっしゃいます。
そう言った人にはおすすめのロースターを紹介したりすることがあるため
いかにコーヒーを知っているかというのは重要なファクターなのです。
ですので趣味でコーヒーを飲んでいて、飲み比べが好きな方などは
コーヒーマシンの業界は面白いかと思いますね。
また、コーヒーマシンは「いかにコーヒーをおいしく抽出するか」
を各メーカーが考えた末に開発しています。
それぞれのメーカーが持っている技術などを勉強していくと
コーヒーをどのようなアプローチでおいしくしようとしているか
本当にメーカーとしての立場から見ることができます。
個人の研究レベルではない結果がコーヒーマシンには現れていて
そこが面白いところでもあると思います。
最後に、ここは自分の意見が一番出てるところですが
マシンというのはある意味でコーヒーの表現を縛り、広げます。
詰まるところ、文章におけるフォーマットに近いです。
例えば、セミオートと呼ばれるバリスタが抽出するために使う
エスプレッソマシンなどは、高価格帯になると
バリスタのための大会で共通の規格があるため
全てのエスプレッソマシンの抽出口の口径が同じになっています。
レシピもそれに準じて考えられることが多いのです。
また、ビールみたいにアイスコーヒーを飲むドラフトコーヒーというものが
世の中には存在しますが、これも専用マシンが普及してから
新たな飲み方として提案をされてきています。
最近は大きなマシンは棚下に収納し、
必要な提供部分だけをカウンターに出している
アンダーカウンター式というコーヒーマシンも出始めました。
マシンの形が変われば、お店の形もコーヒーの提供も
提供する時の価値の提供もガラッと変わります。
コーヒーマシン業界で仕事をするということは
最終的に豆の表現者であるロースターやバリスタと呼ばれる人たちに
どのように抽出できるのかというメゾットを提案する立場でもあるのです。
総じて言えば、
「コーヒーの未来を見ながら顧客に適した提供方法を提案する職業」
これがコーヒーマシンを売るという仕事だと思います。
想像しにくい職業なきはしますが、少しでも魅力を伝えられていれば
いいなと思います。