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夏の定義。
2023年 7月中旬。
「今週はずっと35度超える猛暑なんだよ。やばいよね。」そう言いながらコインランドリーで洗濯物を畳む恋人たち。
夏は洗濯物が多いのに我が家には洗濯機がない。
なので夏になるとコインランドリーへ足繁く通う事になる。
当然コインランドリーの洗濯機の稼働率は高い。
1台だけ中身が放置された洗濯機に「END」の文字が赤く点滅していた。しばらく待ってはみたが取りに来る様子がないので、あまり好きではないが中身を取り出すことにした。
中は布団のシーツとタオル1枚だけだった。
その自動洗濯乾燥機は1回1000円はかかる。
「もっと一緒に洗うものはなかったのか…」と内心思った。
昨晩、元恋人が突然泊まりに来て泊めたはいいものの「こんな関係をいつまで繰り返すんだろう。」
と取りに来るのも憂鬱な気持ちだっただろうか。
あるいは「布団に残った好きな人の残り香が消えてしまった布団をついに洗濯しなければならない日が来てしまった。」
なんてことを考えながら冷房の効いたコインランドリーのベンチにへたれこんでいた。
これはあまりにこじ付けた物語で、実際はただ暑くて家から出たくないだとかそんなことだろう。
目の前のなんでもない出来事を物語性や所謂”エモ”へ強引に結びつけるのも、エッセイを書きたいと思うようになってからの日課だ。
もはやなんにでも心霊現象に結びつける自称霊感持ち、または霊媒師に近い。
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「作家として過ごせる夏はあと何度なのか。」
「今年の夏は作家としてなにか残せるのだろうか。」
そんな事も考えながら回る洗濯物を眺めて、
気がつくとまた赤く「END」の文字が点滅していた。
まるで夏がもうすでに終わりに近づいている事を
急かされる様で妙な動機が体を駆け巡る。
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学生の頃は夏休みがあり、2学期になれば強制的に夏の終わりを感じれていた。しかし社会人になるとそういった感覚がなくなる。
大人は人生の物事9割は自決しなければならない。
「また逢いたいと想う相手にはもうこちらに興味や好意がないと悟った時の諦め。」
「この一杯で帰る。絶対にこの一杯だけ。」
「あまり人に知られていないレトロなラブホテルに通い始めた頃に突然閉店してしまった。」
個人的に大人になってもあらゆる事に諦めがついていない人間は好きなのだが、こと自分の事になるとこれはとても残酷に感じるものである。
夏の終わりは何で感じる事ができるだろうか。
気温、場所、海、人、甲子園、暦。
何故か夏を充実させないと1年の半分以上は台無しにしてしまった気持になる。それなりに予定はあって、夏らしいことはしているはずなのに後悔ばかりが残る感覚はなんなんだろうか。
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そこで夏の終わりを自決する為に
その年の夏を総括する恒例行事を企画した。
「毎年夏の終わりに一人旅に出てどこかの海でサザンオールスターズを聞く。」というものだ。
基本飽き性なので毎年同じ事をすると言う習慣がない。毎年同じ誰かと過ごすとも限らない。なのでひとりで完結する何かがよかった。
最近友達の影響でサザンオールスターズが心に残る事が増えた。その友達にサザンオールスターズの夏の終わりを題材にプレイリストを作ってもらった。
まだそのプレイリスを聞いていないし、
旅の目的地の海の全貌も調べていない。
夏の始まり、そして終わりがそこにはある。
現在大阪は心斎橋にある漫喫で洗濯の待ち時間にnoteを更新している。そろそろ洗濯が終わり、また「END」の赤文字が点滅する。
そしてこれから僕は夏を終わらせる為にまだ観たことのない海のある街へ一人旅に出る。
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