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嵐の日に

嵐の朝に 雨戸を半分開ける
雨 雨 雨 まだ風は吹いてないけど

灰色の憂鬱な空に 渦を巻く雲
雨の音が 屋根と壁と地面をたたく

雨戸を閉めて ラジオをかけ
お湯を沸かして コーヒーを入れる

読みかけで積んでいた本を引っ張り出し
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その昔 嵐の夜に二人
あまり話さない君と ぼくは
いつになく雄弁に いろんな話をした

風の音であまりよく聞こえなかったけど
言葉の意味なんて どうでもよかった

風で屋根が揺れる振動よりも
君の胸でひっそりと揺れている
鎖骨の振動の方がこわかった

まだ来ない嵐の その上に広がる
まだ見ぬ青空を うたた寝の夢に見る
灰色の土曜日の朝

 〇  〇  〇  〇  〇

And the boy in the belfry
He's crazy, he's throwing himself 
Down from the top of the tower
Like a hunchback in heaven
He's ringing the bells in the church
For the last half an hour
He sounds like he's missing something or
Someone that he knows he can't have now
And if he isn't I certainly am

教会の尖塔に上ってる男の子
あの子は頭がおかしいの
塔のてっぺんから身を投げて
天国にいる背中の曲がった男みたいに
教会の鐘を鳴らしてる
半時間もずっと
まるで もう手に入らないって分かってる
ものや人に 思いをつのらせてるかのよう
もしあの子がそうじゃないとしても
わたしは そうなの

I will be the girl who sings for my supper
You will be the monk whose forehead is high
He will be the man who's already working
Spreading a memory all through the sky
In Liverpool on Sunday
No reason to even remember you now

わたしは夕食に祈りをささげる女の子
あなたはおでこの広い修道士さん
あの男の子はやっぱり鐘を鳴らしてる
まるで空いっぱいに思い出をばらまくみたいに
日曜日のリバプール
今はもう あなたを思い出す理由もない

(Suzanne Vega 'In Liverpool'  拙訳)