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人生ではじめて二次創作を書いた話

今年、某作品に出会った。以前からアニメ版を観たい気持ちはあったものの、なかなか決心がつかなかった作品だった。出版社のホームページで新刊本をチェックしていたら、その作品名が視界に入ったのだった。検索してみると、漫画版が数話分、無料公開されていた。無料ならばと試しに読んでみたところ、ひじょうに面白かった。ぜひアニメも観たいと思い、そのままの流れでサブスクの登録を済ませた。毎日、帰宅してから寝るまでの自由な時間を、すべてアニメ鑑賞に使った。のめり込みすぎて、全話観終わる頃には好きなキャラ(以下、「推しキャラ」)に巨大な感情移入をしていた。作品名を伏せるので言ってしまうが、この推しキャラ、なかなかに過酷な運命を背負っていて、しんどい終わり方をする。私はわんわん泣いた。「こんなのってあんまりだ」、「もっと推しキャラを見たい。推しキャラの背景にあるものを知りたい・・・」と切に思った。私は、漫画版を全巻購入し、公式が出しているコンテンツを貪るように摂取した。少しでも推しキャラの情報が欲しい。でもダメだった。ぜんぜん足りない。もっと、もっと欲しい。「推しキャラが幸せそうに笑っているところが見たい・・・!」

困り果てた私は、WebやTwitterなどで、狂ったように推しキャラの名前を検索した。すがるような気持ちでリンクを踏んだり、画面をスクロールしたりしながら、考察や感想を読み漁った。

そうしているうちに、いつしか「二次創作」に辿り着いていた。

私は、それまでの人生で二次創作を読んだことはなかった。書いたこともなかった。一次創作の小説なら、拙いけれど楽しんで書いていた。二次創作を書かなかったのは、「原作の魅力的なキャラクターを私なんかが汚したくない」という思いからだった。「原作がすべてなのに、どうしてわざわざ書くんだろう?」とさえ思っていた。

辿り着いた二次創作のあらすじを確認すると、アニメ版や漫画版で描かれていない、余白の部分を想像したものらしい。
確かに、考えてみたらどの作品も余白は必ず生じるものだ。主人公のことでさえ、毎日朝起きてから夜寝るまでを見せてくれるわけではない。例えば、「不気味な洋館に閉じ込められてしまったので、早く逃げなければならない」というような話だった場合は、主人公の行動をずっと追ってくれるかもしれない。でも、主人公がそれまで生きてきた人生の一部始終を描くことなんて不可能だし、主人公以外の登場人物が作中、裏で何をしているかをすべて描くことも不可能だ。どんな作品にも、必ず「描かれていない場面」が存在する。

それなら考察と大して変わらないな、と思って、深く考えずに読んでみることにした。
読ませる文章に引き込まれる展開。夢中で読み終わった後、私は救われたような気持ちになった。本当に、こういうことがあったかもしれない。アニメや漫画では時間に限りもあるし、描かれなかっただけかもしれない。
っていうか、公式が示している情報に矛盾しない想像なら問題ないのでは?それまで二次創作に抱いていたマイナスイメージもすっかり消え去り、私は、推しキャラが登場する二次創作を読み漁った。

そうするうちに、自然と「書きたい」という気持ちが沸々と沸いてきた。自分の中に、「おはなしを書きたい」というエネルギーがこんなに眠っていたのかとびっくりするくらい、心の中が「書きたい」という欲でいっぱいになっていった。
書くのであれば「公式」をよく理解しなければと、何度もアニメや漫画を振り返った。そうして書いてみたところ、それはもう、信じられないくらい楽しかった。

一次創作の小説も書かなくなって久しかったため、「あぁ、おはなしを書くって、そう言えばこんなに楽しかったんだっけ・・・」と、懐かしい気持ちになった。もちろん、素敵な原作の素敵なキャラを借りているので、「それらを壊してはいけない・・・!」というプレッシャーもあったのだが。

そんなわけで、ひとつ書けてしまうと、あれも書きたいこれも書きたい、とイメージが膨らんでいった。気付いたら、半年以上、週に1~2本のペースで更新していた。長くても2万字程度、直近のものを均すと5千字程度。私自身は、「ひとつひとつの文章を何度もじっくり練り上げた痕跡が見えるような、豊富な語彙力や多彩な表現力でぐいぐいと引き込んでくれる作品」が好みだ。しかし、自分がそれをやろうとするとなかなか難しく、コンディションが悪いといろいろなものと向き合いすぎて病んでしまう。そんなふうに、息も絶え絶えに書いた作品もあるけれど、半分くらいは、サッと思い付いてサッと書いたもの。「あれが書きたい!」と閃いたら、基本的には、もう最後まで書いてしまいたいタイプ。残りは、数日くらいでちょっとずつ、ほどよい期間でそれなりに熟成させたものだ。推しキャラのことを考える時間は本当に楽しくて、書かない日も、ずっと推しキャラのことを考えて過ごした。イベントごとがあるたびに、「推しキャラだったら、この作品の世界で、どんなふうにこのイベントを楽しむかな?それとも興味ないかな?」とか考えたりするわけである。

もちろんうまくいかないことも多く、書いていくうちに、語彙力や文章力などの単純な技術以外にもいろいろと悩むことも出てきた。それについては、また別の記事で書こうと思う。
でも、いくら悩んでも、やっぱり好きなので書いてしまう。クリスマス話も、書くつもりはなかったのに、気付いたらしっかり投稿していた・・・。推しキャラってすごい・・・。この作品、このキャラクターに出会えてよかった。私は、今日も推しキャラに救われている。