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Google マップより、シルバーナビ。

わたしたちが旅に出る理由。

母の病気が急に進んだ。でも、寝込むわけでもなく食事も美味しく食べられている。私に何かしてあげられることはなく、家事をサポートしながら心配するしかない。はた目には淡々とした娘に見えるだろう。
「歩けなくなる前に旅行がしたい」というので、まずは近場の神奈川県の箱根に行った。
箱根は登山電車、ロープウェイ、遊覧船に登山バスと乗り物の種類が多く、長距離を歩けない高齢者も楽しめる観光地だ。

ウクライナカラーの登山電車


あじさいの花手水。強羅公園のあじさい祭りにて

ポーラ美術館、新緑の森、満開のあじさい、ウクライナカラーに塗られた登山電車など、初夏の箱根はいろんな色にあふれていた。母も観光を楽しみ、生命力をチャージしてきたようだ。

そうだ、奈良行こう。

箱根で少し体力に自信をつけた母。「もう少し遠くに行きたい」というので、箱根の翌週(!)バタバタと関西方面へ行くことにした。とにかく大きいものが見たいようなので、母の未踏の地、奈良に行くことにした。

京都経由で奈良へ。 特急「あをによし」

観光特急「あをによし」のツインシート、最後の1席を駆け込みで予約でき、3泊4日の関西旅行は順調にスタートした。
旅の初日は、奈良。到着早々、母が目を見開く。
「うわ、広―――い!!」
あをによし、奈良の都の平城京。遺跡があちこちに点在している。そして、1つ1つが、とにかく、でかい。敷地が、これまた広いこと、広いこと… 

法隆寺と、修学旅行生。

古代の奈良って、スケール感が日本じゃない。建物がユーラシア大陸な感覚で造られている。まずは荷物を預けようと、奈良ホテルへ向かうも…

スマホを捨てよ、お年寄りに聞こう。

奈良ホテル、あんなに高台にあるとは知らなかった。ならまちを抜けて、すぐ側に来ているはずなのに、あそこに見えているのに、近づけない… 
Googleマップと格闘する私をよそに、母が散歩中の高齢者に話しかけた。
「あのう、奈良ホテルに行きたいんですが…」
「奈良ホテルやったらねえ、振り返ってから歩いてみたらええですわ」
もと来た道を戻れ、ということらしい。

数メートル歩くと、小道の塀に「奈良ホテル 歩きの方はこちら、近道→」という、とても小さな、非常にざっくりとした案内板があった。
これは、Googleマップやカーナビじゃ見つけられないな。地元のお年寄りが、やっぱり一番詳しいよね、こういうの。
すごいな… シルバーナビ、最強。
「ほらね、スマホなくても大丈夫でしょ。ああいう人に聞けばいいのよ」
分からないことは、誰かに聞いちゃう方が早いし、分かりやすい。
誰かを信じていい。ぜんぶ、なんでも、自分でかかえなくていい。

病気を抱えた母から、また1つ教わった。
まだまだ、元気でいてくださいね。




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