見出し画像

お蔵入りのヒロイン

心の中で静かに"お蔵入り"にした人たちがいる。

どれだけ気さくな居酒屋でだって、どれだけ気の知れた知人にだって、
決して話そうとしなかった過去の出来事がある。

ボクは映像会社に勤めて13年目になった。地上波に流す為の、大衆に受けるモノづくりをする立場にいる。「もっと衝撃を」「もっと情報性を」「もっと感動ストーリーを」偉い人たちから飛んでくるお約束の指示に必死に応えながら10年以上やってきたつもりだ。上手に応えられていたかは不明だし、あまり上手になってはいけない気もしている。

過酷な労働環境として知られたこの業界も、大手広告代理店のとある哀しい事件をきっかけに働き方が見直されて約9年。随分と働きやすい環境になった。一方でその変化に適応できずに"ハラスメント"の烙印を押され姿を消したベテランも数多くいる。きっと皆が皆、目まぐるしい変化の中で必死に生き残る術を探してきた。

そんな映像の世界で10年以上生き残り、気づいたことがある。

感情が大きく起伏した瞬間だけが素敵な思い出とは限らないし、
CMの後に待つ衝撃事実やおトク情報にも、そんなものは存在ない。

このnoteには、映像業界で過ごしたボクだけの10年間が綴られる。既に20記事ほど執筆済みだが、残念ながら、どの記事も「ドラマチック」という言葉とはほど遠く、どうしようもない現実でごった返している。

その一部を話すと、
地方出身の地下アイドルがキャバ嬢として大成する話だったり、
撮れ高に目がくらむディレクターが無茶して肋骨を折る話だったり、
付き合っていると思っていた人があっけなく居なくなる話だったり。

それらはとるにたらない日常であり、
忘れてしまうには少し勿体ない思い出であり、
1人の映像クリエイターを誕生させた重要な要素だった。

「半人前以下の映像クリエイターが1人前になるまで」そんな軸で様々なテーマが乱立するnoteですが、お付き合いいただければ幸いです。noteで見つかる素敵なご縁に感謝を込めて。

読者の皆様、ただいま。
また連載、始まるよ。
Garashi,

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?