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ごめんね、スムージー


「いや、俺彼女いるから」


はぁ~?

「俺彼女なんかいないよ」みたいな顔、いつもしてたじゃんか。

じゃあなに?私との関係は遊びだったんだ。私だけがいい感じだって勘違いしてたんだ。

「ご飯いこ?」って誘ったら遅れてでも絶対来てくれたし、休みの日に声が聞きたくなって電話した時は何も言わず長電話に付き合ってくれたじゃん。

ただの優しさじゃ、そこまでならないよ。だから私もYouTubeでメイク動画とか見て可愛くなるための努力だってしたし、体型維持するために毎日スムージー買ったりしてたのに。

あわよくば浮気しようとでも思ってたわけ?それで彼女に見つかりそうになって怖くなって辞めたとか?


あー、もう。思い出しただけでイライラする。こんなことなら「彼女いる」って言われた時に問詰めればよかった。

なんかわかんないけど怒りの割に涙が出そうで逃げ出したのがまずかったかな。

もう男の子に振り回されてたまるか。あいつのために努力してる間、他のこと手に付かなかったんだから。

やっぱり愛は何かを犠牲にしなきゃ手に入らないのかな?私、不器用だから全部一遍になんかできないな。

よし、決めた。もっと美人になって見返してやらぁ。私は復讐の鬼とな……


「すいません、グリーンスムージーください」


ん?あれ、なんでスムージーなんか買ったんだろ。

ダメだな。習慣になっちゃってる。

まぁ、いいか。これも復讐の第1歩だね。


「あの、落としましたよ」

「あ、すいません。ありがとうござ……」

前言撤回。復讐なんかしてる場合じゃないよ。

「ん?どうかしました?」

「あ、いえ。ありがとうございます」

「いえいえ。それでは」

「あ、あの」

「なんですか?」

「あの、えっと……お名前は?」

「水瀬です。水瀬涼。『水』に瀬戸内の『瀬』、『涼しい』の『涼』です」

名前まで爽やかなんてずるい!

「私、泉まゆかって言います。『まゆか』はひらがなで」

「そうなんですね。いい名前だ」

「いえいえ、そちらこそ……高校生ですか?」

「えぇ、今2年です」

「じゃあ一緒だ。いつもこの時間に?」

「うん。次の電車でね」

「あ、じゃあ違う電車なんだ。私はもう1本後なの。今日早く来ちゃって」

『…ーまもなく2番線に……』

「じゃあ、僕は行くね」

「あ、うん。ありがとう。また話しかけてもいい?」

「いいよ。でも次はそれ、飲みながらね」

ん……あ!忘れてた!

「あー、はは。そうだね」

「じゃあ、また」

「うん、ばいばい」

プシュー、ガタン……

行っちゃった……あ、これどうしようか?

絶対溶けてるよね……

ズッ……

あー、温くなって美味しくないよ。でもせっかく買ったしな、もったいない。


やっぱり、誰かを好きになると他のことが手に付かなくなるな。さっきは「復讐の鬼にー」とか言ってたのに。

まぁ、いっか。わがままにならなくちゃ幸せは逃げちゃうしね。勝手だよね。でも、好きにさせて。


ごめんね、スムージー。


〈完〉

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