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刀匠とのキャッチボール
刀匠は、皆様 軒並み忙しく
先の記事にて、
現在抱えている作刀依頼がたくさんあるので、しばらく先になります、
という事でしたが、「お待ちします。順番待ちの列に加えてください」と
お返事をいたしました。
と記載しました。
お願いした助光刀匠に限らず、多くの刀匠の方々で、
「順番待ち」というのが発生します。
理由は色々ありますが、まず刀匠の資格保有者数自体が少ない事。
修行の末刀匠の資格を保有しても、専業の刀匠にならない人がいる事。
あるいは、刀匠の資格を保有した後に廃業する方が多い事。
そして、刀匠1人あたりの作刀数に制限がある事(刀で年間 24振り)。
※ ただし、これは慣例化しているが法的根拠はないらしい
などがよく理由として上がります。
これらに加えて、刀匠それぞれに得意・不得意がありますので、
「自分はこういう刀を頼みたい」というこだわりがある場合、
それが可能な刀匠にお願いする必要があります。
一般的な刀匠に「猫が歩いてる感じの刃文で!」とか言っても
絶対断られるので、それをできる刀匠にお願いしましょう。
ちな、鳥取の刀剣登録、岡山と微妙に書式が違うんで「はえー」って見てたんだが。
— 大橋悠史@刀鍛冶 (@forgingkatana) August 10, 2022
刃文の種類で審査員が悩んだ挙げ句「もう乱れ刃でいいや」になってたのでワロタ。
そのうえその他特記事項に「表:猫、裏:吉野川の刃文」とか書かれてて草不可避。
猫の字が刀剣登録の書類で使われたのは日本初では? https://t.co/A6rkQXDkm8 pic.twitter.com/WprPkJgBDz
時を待ちながら
前記事の通り、刀剣関連の用語は刀匠、刀職、専門店の間でも
微妙にゆらぎがある、という事を把握しておりましたので、
希望の詳細をお伝えするのも慎重になります。
作刀依頼なんて、一生に一度かもしれない大イベントなので、
「絶対に間違いや後悔があっちゃいけないぞ……」と、
かなり慎重に、丁寧に依頼させていただきました。
引き受けていただける事になって、まず最初にしたのは自分の希望を
伝える際、自分がどういう意味でその単語を使ってるかの説明。
自分の希望は「菖蒲造りで冠落としの薙刀直し造り短刀」なんだけど、
刀剣店のサイトとか情報系のサイトとかでも、「冠落とし」とか
「鵜の首造り」とかは、ちょっとずつ、微妙な違いがあったりします。
って事は、自分が伝えたい「冠落とし」と刀匠が受け止めた「冠落とし」が違う可能性もある、って事な訳で……
下記のような図をお送りしました。刀匠相手に。
「私はこういう理解でこの単語を使っております」という、
依頼を進めるための下地作りのような行程です。
![](https://assets.st-note.com/img/1699613646607-CdVGpuS0Ez.png?width=1200)
実際の所、やはり「冠落とし」「鵜の首」の使い方は、
私と助光刀匠で若干の差があったので、
私が単純に文字だけで「冠落としの短刀を!」とお願いしていた場合、
私の想像とちょっとだけ違うものができていた可能性があります。
作刀までに間があったことで、こういった誤差を埋められた、
と考えると待つ間も貴重な助走期間だったと言えます。
時、来たりて
「今なら取り掛かれますが――」との連絡を受け、
「ぜひともよろしくお願いいたします」と答えました。
そのタイミングでは、自分自身の希望を、
ほぼ間違いない形で図示し、提示することができていました。
何度か、刀匠側からの確認も頂きました。
「細かい刃文の指定は受けてないんですが」
――お任せします。刀匠の良かれと思う形で。
「図は無反りだけど多少反りがあった方が格好いい気がします」
――絵ではあまり意識してませんでした。反りありで。
「薙刀樋の鎺側は丸留め? 掻き流し?」
――掻き流しでお願いします。
それらも加筆して、
完成した仕様書が下記の図になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1699614797056-iDaCuny7q2.png?width=1200)
イラストの姿としては、備前長船と備中青江のハイブリットな感じです。
「では、この感じで」という事で、作刀に入っていただきました。
敢えて、遠回りにて
途中経過に関しては、twitter 経由で頂ければ! とお伝えしました。
作業の内容をtwitter に上げて、私にもメールやDMで送って、
というのは二度手間で申し訳ないと思いましたし、
私へメールを送るだけだと、なんかもったいない気がしましたので。
いや、助光刀匠からtwitter にお写真上げてもらえたら、
世間の皆様の反応とかも見えて嬉しいなぁ、って思いまして……
冠落とし?鵜の首?造りの短刀が下地研ぎから帰って来ました!!
— 刀鍛冶すけみつ (@osafune_sukemtu) May 11, 2023
下地研ぎの次は、茎仕上げ、ハバキ造りになります😊 pic.twitter.com/lxFH6llqoL
初めて薙刀樋を彫ってもらいました。
— 刀鍛冶すけみつ (@osafune_sukemtu) July 15, 2023
薙刀樋が入るとカッコ良さが上がる‼️同じ刀身の薙刀樋が有る無しを見たので、分かりました!! pic.twitter.com/ofptj61Ei8
親の気持ち。あるいは遠距離恋愛のような。
自分の短刀が少しずつ形になっていく様子が、
刀匠のtwitter を通じて確認できます。
またそれらのツイートを見た愛好家の皆様のコメントが付きます。
なんかこう、自分の子が子役デビューした、みたいな、
その活躍をテレビで見る、みたいな、そんな心境です。
例えば前項で挙げた助光刀匠のツイート2つでも、
その間で2ヶ月が経過しています。
そのくらい、じっくり時間を掛けて作刀が進んでいきます。
この、待ち遠しい時間、
無事を祈って過ごす日々を、楽しめるかどうか。
その辺が、作刀依頼に向く、向かないのポイントかもしれません。
ヘッダー画像:助光刀匠 twitter「午後8:48 · 2023年3月25日」より
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