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刀匠とのキャッチボール



刀匠は、皆様 軒並み忙しく

先の記事にて、

現在抱えている作刀依頼がたくさんあるので、しばらく先になります、
という事でしたが、「お待ちします。順番待ちの列に加えてください」と
お返事をいたしました。

作刀依頼にて短刀を願う

と記載しました。
お願いした助光刀匠に限らず、多くの刀匠の方々で、
「順番待ち」というのが発生します。
理由は色々ありますが、まず刀匠の資格保有者数自体が少ない事。
修行の末刀匠の資格を保有しても、専業の刀匠にならない人がいる事。
あるいは、刀匠の資格を保有した後に廃業する方が多い事。
そして、刀匠1人あたりの作刀数に制限がある事(刀で年間 24振り)。
 ※ ただし、これは慣例化しているが法的根拠はないらしい
などがよく理由として上がります。

これらに加えて、刀匠それぞれに得意・不得意がありますので、
「自分はこういう刀を頼みたい」というこだわりがある場合、
それが可能な刀匠にお願いする必要があります。
一般的な刀匠に「猫が歩いてる感じの刃文で!」とか言っても
絶対断られるので、それをできる刀匠にお願いしましょう。

時を待ちながら

前記事の通り、刀剣関連の用語は刀匠、刀職、専門店の間でも
微妙にゆらぎがある、という事を把握しておりましたので、
希望の詳細をお伝えするのも慎重になります。

作刀依頼なんて、一生に一度かもしれない大イベントなので、
「絶対に間違いや後悔があっちゃいけないぞ……」と、
かなり慎重に、丁寧に依頼させていただきました。
引き受けていただける事になって、まず最初にしたのは自分の希望を
伝える際、自分がどういう意味でその単語を使ってるかの説明。
自分の希望は「菖蒲造りで冠落としの薙刀直し造り短刀」なんだけど、
刀剣店のサイトとか情報系のサイトとかでも、「冠落とし」とか
「鵜の首造り」とかは、ちょっとずつ、微妙な違いがあったりします。
って事は、自分が伝えたい「冠落とし」と刀匠が受け止めた「冠落とし」が違う可能性もある、って事な訳で……
下記のような図をお送りしました。刀匠相手に。
「私はこういう理解でこの単語を使っております」という、
依頼を進めるための下地作りのような行程です。

助光刀匠へお送りした画像の内の1枚

実際の所、やはり「冠落とし」「鵜の首」の使い方は、
私と助光刀匠で若干の差があったので、
私が単純に文字だけで「冠落としの短刀を!」とお願いしていた場合、
私の想像とちょっとだけ違うものができていた可能性があります。
作刀までに間があったことで、こういった誤差を埋められた、
と考えると待つ間も貴重な助走期間だったと言えます。

時、来たりて

「今なら取り掛かれますが――」との連絡を受け、
「ぜひともよろしくお願いいたします」と答えました。

そのタイミングでは、自分自身の希望を、
ほぼ間違いない形で図示し、提示することができていました。
何度か、刀匠側からの確認も頂きました。

「細かい刃文の指定は受けてないんですが」
 ――お任せします。刀匠の良かれと思う形で。
「図は無反りだけど多少反りがあった方が格好いい気がします」
 ――絵ではあまり意識してませんでした。反りありで。
「薙刀樋の鎺側は丸留め? 掻き流し?」
 ――掻き流しでお願いします。

それらも加筆して、
完成した仕様書が下記の図になります。

最終稿

イラストの姿としては、備前長船と備中青江のハイブリットな感じです。
「では、この感じで」という事で、作刀に入っていただきました。

敢えて、遠回りにて

途中経過に関しては、twitter 経由で頂ければ! とお伝えしました。
作業の内容をtwitter に上げて、私にもメールやDMで送って、
というのは二度手間で申し訳ないと思いましたし、
私へメールを送るだけだと、なんかもったいない気がしましたので。
いや、助光刀匠からtwitter にお写真上げてもらえたら、
世間の皆様の反応とかも見えて嬉しいなぁ、って思いまして……

親の気持ち。あるいは遠距離恋愛のような。

自分の短刀が少しずつ形になっていく様子が、
刀匠のtwitter を通じて確認できます。
またそれらのツイートを見た愛好家の皆様のコメントが付きます。
なんかこう、自分の子が子役デビューした、みたいな、
その活躍をテレビで見る、みたいな、そんな心境です。

例えば前項で挙げた助光刀匠のツイート2つでも、
その間で2ヶ月が経過しています。
そのくらい、じっくり時間を掛けて作刀が進んでいきます。

この、待ち遠しい時間、
無事を祈って過ごす日々を、楽しめるかどうか。
その辺が、作刀依頼に向く、向かないのポイントかもしれません。

#刀 #日本刀 #刀剣
 

ヘッダー画像:助光刀匠 twitter「午後8:48 · 2023年3月25日」より

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