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兄弟刀の行方はいずこ


 

うちの短刀には、兄弟刀がおります

突然なんのことやら、という話なんですが、まずはこちらをご覧ください。

 
「今なら取り掛かれそうです」と助光刀匠からご連絡をいただき、
「ぜひ、よろしくお願いします!」と正式依頼をしたのが 2月中旬。
その後、刀匠のツイートを拝見しながら色々タイミングを計っていました。

この短刀は、自分が依頼した短刀だと思い、銘切りのご相談をしました。
刀匠銘や年紀銘以外に、追加で切っていただくことはできますか、と。
で、その際に細かい進捗も教えていただきました。

「実はtwitter に上げた写真の短刀の焼入れは終わっている。
 ただ……何か致命的なキズがある訳ではないが、
 週明け、同じ姿でもう一振、打ってみたいと思っている」
というような内容を、お伺いしました。
この短刀の何が悪いという訳ではないが、色々悩んで、決めました、と。

そこで、私が追加銘として切ってほしいのは、
「鏡花水月」という四文字であること。
そこには、亡き妻への思いを込めている事をお伝えしました。
この段階まで――つまり一振目の作刀時点では――伝えていませんでした。
そして、そんな諸々を聞いていただいた上で打たれた二振目が、
私の手元に届く短刀となりました。

と、いう訳で、
この一振目には、私個人の、妻への思いは乗っておりません。
純粋に、助光刀匠の力と技で作られた真っさらな短刀となっております。
 

まだ見ぬ主の為に

助光刀匠は、焼入れ等で上手くいかなかった刀を割って、
次回作の鋼に足して使われる事が多いです。

「切っ先を売ってください」「欠片は販売しないんですか?」
という声が寄せられることも多いのですが、現状、その機会はありません。

ともあれ、うちの短刀の兄弟刀は、何かを失敗した訳ではありません。
致命傷(刃切れやカラス口)がある訳でもないので、充分商品になります。
という事で現在、短刀としての仕上げが施されております。

刃長は30cm 近く。短刀とはいえ、結構長いです。
30cm 定規を刀に見立てて握ってみると分かるのですが、
片手で握った部分だけで10cm くらい消費してませんか?
という事は、その長さの短刀は、「刃長 20cm」です。
この短刀は、そこから更に10cm 長い訳です。
あるいは、エア握りこぶしに30cm 定規を乗せた長さです。
結構な長さですよね。

「冠落とし」は、切っ先から半ばまでの峰側を削いで薄くしていますが、
鋒両刃造り(小烏丸造り)ではないので、刃はついてません。切れません。
両刃に比べれば、白鞘に収める際やお手入れの際、事故る確率が低いです。

「薙刀樋」が入っているのは、うちの短刀と同様ですね。
自分の短刀に関してツイートしたり、note 書いたりしていたら、
「薙刀樋、いいですよね!」という方がいらっしゃって嬉しかったです。
有名所だと、鯰尾藤四郎なんかに、薙刀樋が入っています。

「茎(なかご)」に関しては、私の作刀依頼が「茎を長めに」だったので、
兄弟刀の方は助光刀匠の手により、一般的な長さになっております。

「銘」に関してはまだ入っていません。
購入者の方は色々ご相談できると思います。
こんな文字を入れてほしい、とか、座右の銘を刻みたい、とか。
いうなれば、ここが作刀依頼・注文打ちの醍醐味でもありますので、
短刀の姿が気に入ったなら、最高のタイミングと言えます。
作刀依頼だと、依頼してから1年くらい待ちますからね。
この短刀なら、もう8割方完成しているので、待ち時間短いです。

――と、なんでこんな営業トークしているのかといいますと、
見つけちゃったんです。
助光刀匠のECサイトの、「在庫品紹介」のページの中に。
 

冠落とし短刀 銀祐乗ハバキ・白鞘入り(税込:297,000円)

という事で、出てました。

【工作中】 冠落とし短刀

完成は、来年の2月頃の予定だそうです。
研ぎ上げ、鎺(はばき)と白鞘が付いて、297,000円(税込)との事。
鎺、白鞘付きということは、この状態です。

鎺、白鞘付きの冠落とし薙刀樋入り短刀の図

更に、白鞘袋にお手入れセットまで付くそうです。素敵。

・お守り短刀、ファースト刀に最適です。
・スラリとした姿なので、女性の方にも持ちやすく、扱いやすいです。
・戦う守り刀として、小振りなものより物理的な力もありますので、
 お供にいかがでしょうか。

「【工作中】 冠落とし短刀」商品案内ページより抜粋

前の記事で、現代刀匠の方に作刀を依頼したらどのくらいかかるかを、
ザックリまとめてみました。

こちらを見ていただいても分かる通り、助光刀匠の刀は破格です。
もちろんそうなる理由、条件、割り切りもあります。
一番大きな所だと、助光刀匠の作品は原則、一発勝負です。
刃にかかる傷でなければ、小さな鍛え疵などはご了承ください、という
方針で作刀しています。
それすら許さない、となると刀匠は三振、四振と打つ事になるので、
その分、玉鋼も炭も時間もかかり、それが全て一振の刀の価格に乗ります。
なので当然、金額が二倍、三倍になっていきます。
その辺まで踏まえて、どちらを選択されますか? という話。

ただ、今回のこの短刀は、既に出来上がっていますので、
研ぎが終わった後の写真を拝見して、購入を決めることも可能です。
あるいは、現時点の写真で「大丈夫でしょ」と見て決めることも可能。

そんなこんなを考えると、非常に「アリ」な逸品だと思います。

作刀依頼ではないけれど、
この刀の、最初の主は購入者の方です。
刀匠から、直接購入者へ送られることになります。

初期刀に、短刀:長船助光、いかがでしょうか。

#日本刀 #刀 #短刀 #作刀依頼 #刀匠
 
 

ヘッダー画像:自作短刀画像 + Adobe Stock より


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