【徹底解剖】ORIGAMI
こんにちは、ガオラー1年生のRyuです。
今回はリトグリ2024夏の大型新曲「ORIGAMI」の徹底解剖をしていきます。
今回書いてみての感想を一言でまとめると、この曲は「リトグリにしかできない曲」だと思います。譜面の作り方が、そしてその譜面に対しての歌い方が非常に緻密に構成されており、そういう意味でも折り紙で作った、しかも完璧な職人の手で作られた造形物のように素晴らしい楽曲だと思います。それだけ手が混んだ楽曲、編曲なだけに、「リトグリならでは」になっているのだと思います。
リトグリ初の和楽器を巧みに使った曲であり、イメージとしては雨を感じつつも徐々に晴れわたるような雰囲気を持ち、「折り重ねる」「紡ぐ」という言葉になぞらえるように、「折り紙」をモチーフにした楽曲。その巧みな仕掛けを完璧に表現するかのように計算された6人の繊細な歌い方、そしてテクニックだけではない、語りかけるような愛に満ちた6人の言葉。
それらがどのように作られているのか、現時点での全力解説を展開します。
和
第2章で一番最初に「和を取り入れた楽曲を取り入れたい」と発言していたのはこの動画のMAYUだったかと思います。
というくらい、本当にやりたかったように思います。
この動画が2023年の7月の動画ですから、この1年後に早くもリリースすることになりました。
しかし、実際はMAYUが話していたように三味線が登場するわけではありません。あまり和の音楽について詳しくないのですが、笛のようなサウンドを入れ、また打ち込みで普段バスドラムが打つところを和太鼓っぽく、スネアが打つところを鼓っぽい音にすることで、落ち着いた祭り囃子のような雰囲気に仕上げています。和楽器でなくてもアコースティックギターが12弦なのか、重ね取りをしているのかわかりませんが、このサウンドも少し和を感じさせたり、シロフォンかグロッケン(鉄琴的なもの)を入れることで、日本の自然を思わせる幻想的な雰囲気を感じさせます。
「山にある神社」という感じですね。伊勢神宮とか、出雲大社とか。そんなイメージ。
そして、一番ポイントなのは、このORIGAMIは単に「サウンドの種類(洋→和)を変えただけではない」ということだと思います。
「どう入れるか」が完全にリトグリ用に作られています。
特に笛。ORIGAMIにおける笛の一番の役目はオブリガードソロ。まるで「7人目のボーカル」です。多くのリトグリの曲ではメンバーがメロディーパートに対してオブリガード(フェイク)を入れて曲を盛り上げていきますが、この曲はそれが一切ありません。代わりにその役目を笛がやっているのです。
たとえばこのサビのメロディに対しての笛
そういう意味でイントロ4小節の笛とミカのメインコーラスの受け渡しは巧みです。最初の2小節は笛が一番上の旋律を奏でますが、後半2小節はこのパートをミカが歌い、笛はオブリガードにまわります。つまりこの4小節で、「笛はソロボーカルみたいな使い方をするよ」という曲の構成を示しているのだと思います。逆にいえば、メンバーも笛のようなサウンドを出して混ざり合っていく、そういう作り方をしているのだと思います。
1番の打楽器の打ち込みも素晴らしいです。Bメロから各小節の1拍目に「ドンっ!」と打つ形になっています。これが、和の感じがします。鼓動さんの動画を借りるとこの動画の右奥の巨大な太鼓のサウンドのようなイメージです。
最小限の和楽器サウンドの導入で「和」をしっかり感じられるのは、我々の中に太鼓と笛が夏祭りや盆踊りなどの日本の情緒ある風景と無意識に結びつくものがあるからではないでしょうか。
雨、のち晴れ
最初にORIGAMIを聞いたとき、雨が似合う曲だと思いました。
しかもずっと雨なのではない、徐々に晴れていくというようなイメージです。他の方も複数の方がコメントしていましたし、MVにもそういう世界観が描かれていると思います。
ただ、これはなんとなくで伝わるものではありません。巧みに曲が作られていると思います。そして6人の歌い方も相当にこだわっていると思います。
まずこの曲のキーです。Major(明るい)なのか、Minor(暗い)なのかはっきりしない感じがあります。
最初は雨(Minor)多めという感じ。それがIntro→Aメロ→Bメロ→サビと進むにつれて、晴れ(Major)の色が徐々に強くなる感じです。また曲全体を通しても徐々にMajor色が強くなっていく感じがあります。
つまりこんな感じのコード進行を巧みに使い分けています。
コード進行というのは、「だいたいいつもこう進む」というのがあるのです。それが2パターンあるときもある。それを巧みに使い分けて、晴れと雨を表現しているように思います。
こんな繰り返しです。
この考え方でIntro〜サビまで天気を記入していくと、こんな感じになります。
Intro
Aメロ
Bメロ
サビ
こんな流れかと思います。
さらにすごいのはそれを完璧に理解しているかのごとく歌い分ける6人の歌唱です。これに気づいたときはすごすぎて笑ってしまいました。とくに2番からのアサヒ→かれん。これはもう職人技としかいいようがない・・・。
こんな感じです。
他にもこういった工夫が細かく散りばめられています。
今雨なのか、少し日が指しているのか、晴れているのか、照らし合わせながら音の処理を聴いていると、その細かな演出には驚愕です。
折り重り、紡いでいく
ORIGAMIはバラードに分類されると思います。でも、一般的なバラードとは少し違う気がしました。何が違うのだろう?と気になったので、これを機会にリトグリのバラードらしいものを思いつく限り聴き返してみました。
そこで気付いたのですが、編曲の観点で、リトグリのバラードには2種類あると思います。
ORIGAMIはリズムセクションのうえでアカペラをやるような構成に分類される、いやその進化形の他の楽器も一緒にアカペラをやるような曲だと思います。
どちらがいいというわけではなく、曲によって見せ方をしっかり変えていて、どちらも素敵なのです。どれも大好きです。
でもたぶん、歌う側の難しさでいうなら、リズムセクションのうえでアカペラをやるような構成のほうが難しそうです。
なぜ、アカペラ的なのか、ここでまた加藤ぬ。さんの知恵をお借りします。
ここで編曲上の「アカペラらしさ」として字幕解説付きで語られる点が2つあります。
アカペラというのはこのように役割や音を分けて担当することで、音に厚みが増していったり盛り上がっていく表現ができるわけです。
メロディを引き立たせるように、メロディ+バックコーラス・バンドのような構成として挙げた曲(幸せのかけら、きっと大丈夫etc…)はほとんどの部分が
の3つの分担で構成されています。
一方で、リズムセクションのうえでアカペラをやるような構成として挙げた曲(愛しさにリボンをかけて、君といればetc…)は
など複数の要素、役割や重ね方が多く使われています。一番わかりやすいのは「愛しさにリボンをかけて」。この観点でぜひ聴き直してみるととてもおもしろいです!
ORIGAMIでも、「アカペラみたいな動き」がたくさんあるので、それを紹介していきます。これが巧みに「折り重なり、紡がれている」シーンだと思います。
まずは特に印象的なところ。ベルトーン。しかもただのベルトーンじゃないんですよね。追っかけコーラスを兼ねつつ、コードチェンジまで行っています。
追っかけコーラスもポイントで使われています。
また、笛の説明をしたときにも書きましたが、笛も含めてボーカル7人でやっているようなもの。オブリガードは笛が担当して、この重なりも曲に厚みを増しています。
そして何と言っても、アカペラのような雰囲気を持つ間奏あり。
このあとに紹介する「折り紙」的な要素も含めて、メンバーの歌声とバックの楽器が折り重なるように曲を紡いでいくのがとても美しいです。
なぜ「折り紙」なのか
ここはさまざまな解釈があると思いますが、僕なりの解釈でお伝えします。
僕はこの点がこの楽曲の最大の特徴であると思います。
そして、それこそリトグリにしかできないことだと思っています。
なぜ「ORIGAMI」なのか。
「折る」とはなんでしょうか。
僕は「折る」とは山と谷ができることだと思います。
とくにORIGAMIでモチーフになっている、折り紙の代表格でもある「鶴」は切ったり貼ったりせず、1枚の紙を折って山谷を作り、それを重ねることで造形ができる、そういうものです。(そう考えると、CDに「折り紙」が入っていたこと、非常に深い意味に感じます。)
この曲は山谷のモチーフが連続して繋がっていくことで出来上がっていく曲だと思います。
簡単に楽譜として紹介するとこんな感じです。
一番それが特徴的にでているのがメンバーもこだわったという間奏の16小節でしょう。まずはインタビューでこの部分について語っている内容を紹介します。
さらにアサヒはこちらのインタビューでこんなことを語っています。
その間奏をすべて楽譜に起こすとこのようになります。
(間違っている部分もあるかと思いますが、だいたいこんな感じ。今回の【徹底解剖】で一番苦労しました。)
このあとの落ちサビも、バックではPianoがずっとORIGAMI的な山谷フレーズを引き続けます。
その他にもたくさんの箇所で音の長さ、音の高さを変えてたくさんでてきます。
イントロの笛→ミカ
ベルトーン
裏拍の「ha, ha」コーラス
一見、声だけだと、山谷に見えないコーラスも、サウンド全体を聴くとしっかり山谷になっているように聞こえます。
イントロにも、サビにも「 ha、ha」コーラスがありますが、山になる部分を連想させるように配置しているかもしれません。
正直この山谷の音の形というのは他の曲でもよくでてくるものです。でもここまで連続して、しかもそれが形を変えて頻出して紡がれていく感じ。これはこの曲が「折り紙」という名前になっていることと繋がっているのでは・・・と僕は思うのです。そしてそれがこの曲のなんとも言えない精巧に作られた感じというか、リトグリの6人とバンド全体で一つの世界を作っていく感じ、まさに折り紙で一つの造形を作っていくかのような素晴らしさに繋がるような気がしています。
山谷の規則正しい音の上下をどこかに探しながらORIGAMIを聴いてみてください。ほとんどの時間、どこかにその音の形が折ってあるはずです。
ORIGAMI的、神業歌唱
ここまでは編曲の話が半分くらいな気もしますが、この素晴らしい編曲をリトグリがどう料理しているのか。これがすごいです。
まずはインタビューで話している内容を紹介します。
ここまではこの曲のバック、コーラスについて語ることが多かったですが、ORIGAMIはメロディもとても素敵です。そして楽譜にすると確かに結構音が飛んでいます。重厚な音の重なりがバックで流れていて、その上でこんな難しい譜面のメロディーを、しかも声を張るわけでもなく歌っていくなかで、メロディが浮き上がってくるためにさまざまな歌唱の工夫が施されています。
みなさんもたくさん感じていると思いますが、とくに僕が好きなところをご紹介します。
まずは子音の発音。とくにこの曲はメンバー全員の子音の発音が非常に繊細で美しいです。特に僕が一番好きなのは結海。1番サビのところは結海にしかできない表現だと思います。(コメントを書き始めたら、いろいろ詰め込まれすぎていて、わけがわからない解説になってしまいました。)
1サビ
音量の調節や音の処理、タイム感の調節もすごいです。単純に音量を小さく歌うクレッシェンド(だんだん大きく)を入れたり、デクレッシェンド(だんだん小さく)を入れたり、ウィスパーボイスを入れたり、ハスキーボイスにしたり・・・。
とくに1番Aメロのつなげ方は圧巻!短い中に手品のようにたくさんの仕掛けが詰め込まれている・・・
Aメロ
愛されていいんだ
最後になりますが、歌詞について。
いろいろ素敵なところがありますが、僕がガオラーさんのコメントを読んでいて一番印象的だったのはラスサビの冒頭のmiyouのところです。
Xのコメントをご紹介します。
ちょうどUNLOCKツアーのファイナル2DAYSとかぶるタイミングで出ただけに、このツアーのテーマとかぶるところもあって、とてもメッセージ性が強くなっていると思います。
誰かのコメントにもありましたが、「愛されていいんだ」という言葉は僕は人生で聞いたことがありません。でも、だからこそ、この言葉が響いたのだと思います。
「そんなの当たり前じゃないか」と思うような「愛」についてのフレーズをあらためて言葉に出してみると、意外と心に響いてしまう・・・
しかもあのmiyouの最高にのびのびとした温かい声でここを歌ってくれる。この曲の一番の「晴れ」の部分だと思います。
長くなりましたが、ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
たくさんの魔法が詰め込まれたこの曲。
これからも歌っていってほしいと思っています。
次回は冬に「【徹底解剖】愛しさにリボンをかけて」を出す予定です。
今後ともよろしくお願いします!
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