「グローバリズムの隠喩」としての新型コロナウィルスの世界史的意味−「市民的公共」の黙示録



 今、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界を恐怖のどん底に陥れている。


 昨年十二月に中国の武漢において発生したこのウイルスは、数ヶ月の内に瞬く間に全世界へと拡散していき、各国では大混乱が巻き起こっている。何れの国においても、マスクは言うまでもなくトイレットペーパーなどの生活必需品や食料品などが買い占められ、遊園地など人の集まる大規模な施設が閉鎖され、更にコンサートから学会まで諸々のイベントが相次いで中止や延期を迎えるという事態である。慌てる各国の政府からは特定の国への出入国禁止令が発令され、外出を控えるよう強く勧告されている。感染源となった初期の中国、そしてその後にエピデミックに見舞われているイランやイタリアの様に、感染者数ないしは死者数の爆発的増大から、市民の外出に関して長期の厳密な封鎖措置が行われるに至っている国もある。そのような措置にも関わらず、この二カ国では感染者数のみならず死者数までも加速度的な増加によって医療崩壊が発生している。イタリアのロックダウンの後、フランス、スペイン、ドイツもまた国境の封鎖とロックダウンを敢行した。しかしこれらの国々でも、依然として感染者数と死者数が増加し続けている。株価暴落によりニューヨーク証券取引所が幾度も緊急閉鎖したアメリカでも、ここ最近のたった十日ほどで感染者数が十倍以上に増加している。


 我が国では、一月中旬の神奈川県での中国人感染者の確認から始まり、そして二月初旬、横浜港に寄港していたダイヤモンド・プリンセス号における集団感染を経て徐々に感染者数が拡大してきた。二月末、日本政府によって小中高校・特別支援学校を一斉に一時休校の措置(その後、卒業式も中止された)が要請され、北海道では外出自粛を求める緊急事態宣言が発令された。しかしその後も感染者数は増加し続け、今年夏に予定されていた東京五輪もIOCと政府により一年程度の延期が決定した。それだけでなく今後、東京都などの当局によってロックダウンが行われる可能性すら示唆されている。各企業では在宅ワークの体制が採られ、各種の出張や会議が可能な限り自粛されるようになり、手洗いうがいと不要不急の外出を控えることが要請され、株価は乱高下を繰り返しながら急激な勢いで沈下している。このような情勢によって、興行、飲食業、小売業、観光業など目に見えやすい業種から運輸業など基礎的なインフラとなる産業に至るまで、ありとあらゆる業界に経済的な大打撃が与えられ続けている。


 このような昨今稀に見る「例外状態」を鑑みるに、此度のコロナ禍は、SARS(重症急性呼吸器症候群、2002年から2003年)、豚インフルエンザH1N1(2009年から2010年)、MERS(中東呼吸器症候群、2012年以降)など今世紀に入って以降大規模に流行した他の感染症と較べても、圧倒的な猛威を振るっている。その有様は殆ど、既存の国家体制や社会のシステム、そして世界システムそのものを幾多もの人命と共に破砕するかのようである。まず、世界的な経済危機がこれからやって来るのは目に見えたことだ。これは世界史的な災禍であり、恐らくは世界史の大いなる断絶になる筈である。この災厄が齎すと思われる転変は、差し当たり国家の内外で分割して考えられる。ここでは、その行末を少し展望してみたいのである。



新型コロナウイルスというグローバリズムの隠喩


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