見出し画像

家を買うべきか、買わざるべきか?

 先日に、とある学会に参加した際に同年代の大学教員と飲んでいて「家を買うか、買わないか?」という話題になりました。いわゆる「持ち家派」vs.「賃貸派」というやつで、ネットで検索すれば、それぞれどちらの意見もごまんと出てきます。

 持ち家派、賃貸派のどちらの意見もなかなかご立派なのですが、意見を集約すると、1)資産形成するかしないか、2)収入と家賃のバランス、3)投資対象とするか否か、などなどがネット上で語られる「持ち家派」vs「賃貸派」の戦いの構図のように思えます。しかし、どれもこれもが、たいていは

・会社勤め
・結婚+子育て世代
・首都圏もしくはその近郊

をイメージしたバトルが展開されているようにみえます。これ、大学の研究者とはちょっと相容れないと思いませんか?そもそも大学勤めの教員は任期制が多く安定したポストではないので、優秀な研究者は大学を移っていく(=居住地が安定しない)し、優秀でないひとはクビになる。そして独身率が高いというか婚期が遅い。あげく共働きで研究者のパターンだと、同じ大学で夫婦でアカポジゲット、などという奇跡はまずないので、そもそも(やむなく)別居しているというのも「研究者あるある」です。そして私のように、地方のド田舎大学だと首都圏+首都圏近郊の話って、何それうまいのか?というレベル。

 だからこそ、飲み会で上記のような話題が出るんだろうな、、、と。しかし、飲み会で出た話で個人的に一番笑ってしまったのが賃貸派の「家を買うのって、色々と勉強したり調べたりする時間が必要になるわけで、そんな時間があったら、オレらは研究するよなぁ?」というものでした。間違いない。確かにそうだ(笑)。同年代のおっさんとなれば、任期制なのに大学の仕事がわんさかと回ってきて、自分の研究と、大学運営と、教育という大学人たる3本の柱に揉みに揉まれて、でもまだ実験ばかりしていたい、というお年頃。そんなまとまった時間とエネルギーがあったら実験したいよな。なら、もう賃貸でいいや、ということに落ち着くのも研究者の性かもしれない。

 しかし現実的には持ち家派の方もいて、既に購入に踏み切った先生達もいらっしゃった。聞いた限りでは、相方がしっかり調べて勉強していたり、親族に強固に「買え買え」と言われ続けて、抗うのが面倒になったりと、まぁ、みなさん、それぞれだなぁと。結局のところ、この「持ち家派」vs「賃貸派」というのは永遠に決着のつかない命題で、もはや形而上学の域に達しているのではと思うのです。それを研究者にあてはめようとするから、さらにいけない。解決しない問題ですね。

 しかも「任期制」という縛りは、やはり持ち家派に肩入れしづらい。任期がある限りは公募にうって出るしかないわけで、全国どこにすむか分からない。私も今の住居で、ネットを契約しようとした時にローカルばりばりの光回線が見積もり上はメチャクチャ安かったのですが、X年縛りの更新制で、地域外に引っ越す際は必然的に恐ろしい金額の違約金が必要になることに気づいて震え上がったことがあります(ものすごく小さな字で書いてあった)。ネットで見積もり依頼したらすぐに営業が訪問して来たのですが、違約金について問いただすと「大学の先生なんですから大丈夫でしょ」みたいなことを宣うわけです。あのね、X年後はここに住んでいられるかどうかすらわからない、というか論文でなかったらクビなんですよ、そもそも違約金を気にしないぐらいお金があったら、こんなところ住んでませんよ、とは説明出来ないので「ははは」と笑った後に真顔で「お断りします」と玄関を閉めてお帰りいただいた次第です。

 ネットの契約ですら、こんな状態なのに、持ち家なんて・・・と思っちゃうんですけどね。恐ろしいことに、最近、妻が「こんな物件が出ていた」なんていって住宅販売のチラシをビールをちびちび飲みながら「てにをは」もメチャクチャな学生の論文を読んでいる私に見せる訳です。値段を見て、私の給料ではとうてい無理な金額のチラシを見せてくる訳です。しかし、そのチラシの「てにをは」もメチャクチャな訳です。文章の修正をしているところに、売りたい一心のド直球な文章がならんだチラシをみせられたカオスな状態で私は、ただ静かに「そうだね」とごまかし続けて生きている情けない野郎な訳です。というわけで、今日の結論は「住宅販売のちらしなんて、なくなってしまえばいいのに」ということにしておこうと思います。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?