映画監督紹介①ジャン・ルノワール

これから、映画界に大きな貢献をした監督とその与えた影響、また作品の紹介を細々としていければと思う。
私は映画を週に5本は欠かさず観ているが、ただボーッとみるだけでなく、何か有意義な形でその記録を残すことができればと思い、このような企画をやってみる。
どれくらい続くか分からないが、まぁ軽く書いていければと思う。

ジャン・ルノワールとは??

ジャン・ルノワール(Jean Renoir、1894年9月15日 - 1979年2月12日)は、フランスの映画監督、脚本家、俳優であり、トリュフォー、ゴダールをはじめヌーヴェル・ヴァーグの作家たちから映画の父として敬愛された映画史上最も偉大な映画監督の一人である。
お父さんは、印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールという超有名人であり、子供の頃から絵のモデルをやるといった環境で育ったようである。
生涯で30本以上の作品を手がけたが、その道中では、パトロンから見放され予算が切れたり、キャストが戦争に行ってしまうなど、様々な苦難を乗り越えている。
ルノワールの作品は、人なつっこく屈託のない好人物、かぐわしい自然やしびれるようなセックスの歓びなどを描く一方で、第一次世界大戦に従軍した経験から、そのような大戦を作り上げた上層、悪としての戦争を示すようなものも多い。
この観ているだけでも楽しいのだが、その中に深いメッセージ性があるという部分に私は惹かれるのである。ただアホなだけではなく、アホさに滲む強かさこそがルノワール映画のポイントであろう。
そんなルノワール映画の中で特に良かった3本をこれから挙げていく。

①ピクニック(1936)

モーパッサンの小説『野あそび』を元に撮影された作品。
40分しかない映画であるが、その中でルノワールらしさが爆発している。
この作品の中で良かった点は、まずは自然の美しさである。この作品はパリから田舎にピクニックにやってきた一家を中心に撮られるのだが、その田舎の風景がまさに描いたようなバカンスであり、この環境汚染が少ない時代を羨ましく思う。やはり私たちは自然によって生まれ、自然によって癒され、自然に帰っていくのであるとまざまざと思い知らされる。
また、ルノワールがよく描く、様々に自堕落した男性像が前回の作品であり、同じ男として、このような時もあるよなぁと思いつつ、反面教師的な思いに苛まれる。
また、今作の主演を務めたシルヴィア・バタイユはフランスの著名な哲学者ジョルジョ・バタイユの妻であったが、今作後離婚し、ジャック・ ラカンの夫人となったというから驚きである。作品への参加が彼女の何をどう変えたのであろうか。

②ゲームの規則(1936)

個人的にルノワールの作品の中で一番好み。ストーリーがしっかりしており、最後のハラハラさせてくる感じはたまらない。
これは、狩りに集まった上流階級の恋愛遊戯を描く社会風刺劇である。
映画中では、貴族達のアホさ加減を描き、第一次世界大戦を初めてしまった貴族たちの体たらくさを風刺的描いている。
特に目を引くシーンは、やはり狩りのシーンであろう。
実際の動物の狩りを行い、そのシーンを撮影したようで、長回しが中心の中で、このシーンのみ短い切り替わりの残酷なシーンが続く。ルノワールは狩りが本当に嫌いだったというが、ここまで残虐でバカなことをしているというのをこの世界に伝えたかったのであろう。
個人的にはジュリアン・カレット演じるマルソーが一番好き。ジュリアン・カレットはああいう正直でアホな男を演じさせると天下一品であり、その愛くるしさ含めて大好き。

③フレンチカンカン(1936)

「ムーラン・ルージュ」の創設者たちの伝記からインスピレーションを得たミュージカル調の傑作である。
15年ぶりに祖国フランスで撮影した作品で、「大いなる幻影」以来のギャバンとの仕事でもあり、やはりギャバンに魅せられた。「大いなる幻影」ではまだまだ未熟で、敵国の将校からも見下げられていたが、今回の作品では太公ぶりがすごく、大人で老活な男になっている。一方で、女性関係はまだまだだらしなく、こういうところは変わらないとルノワールが思っていることが伝わってきた。
また、主人公のダングラールは自分の女癖などにより、パトロンから見放されたりするが、そういった境遇に置かれるというところもルノワールの自伝のようにも感じる。
特に必見のシーンはやはり、最後のフレンチカンカンのシーンで、死ぬまでにスクリーンで観たいなと思った。

これ以外にも「大いなる幻影」や「河」、「獣人」など必見の作品がたくさんある。
ゴダールやジム・ジャームッシュが大きな影響を受けた作品やシーンもあり、映画好きにはたまらない監督であろう。
是非お時間がある方は視聴をお勧めする。

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