夜別れのかず
夜になると別れが増える。人間の話だ。さようなら。また明日。またいつか。手をふってそれきりの場面のほうが、ほんとうは、多かった。
出会いよりも別れの数のがずっと多かった。
昔のひとは、だから、袖触れ合うも他生の縁と言い、袖が触れただけでも輪廻の何処かで知り合いだろうから、なかよくしましょうと話したわけだ。
別れのほうが多い、と、ご老人は知っている。
ずいぶんとご老人とお話する機会も減ったものである。都会のひとびとは。
ほかのどこよりも、袖が触れ合うひとびとは多かった、けれど。
END.
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