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舞台感想|何処までも愚かで美しい   -天使は桜に舞い降りて-

がっつりネタバレ含む。

演劇の毛利さん The Entertainment Theater Vol.1 
『天使は桜に舞い降りて』
2022年1月16日ソワレ、スイッチング配信

≪ざっくりとした内容≫
メインは桜と二人の天使ラウムとクロセル。
二人の天使の使命は「人間に生きる価値があるのか見極める事」
桜の下にはたくさんの物語が埋まっている。
『桜の森の満開の下』
『櫻の樹の下には』
『十六桜』
『義経千本桜』
4つの桜にまつわる人の物語を通して、生きる価値を見極める。
「さあ、宴を始めよう。この場所で、咲き誇る満開の桜の下。」

『本編1』
 ラウムは陽、クロセルは陰、という印象。桜の精は可愛い。
桜の精が夢の話をする時の表情が小さな子が物をねだる時のような純粋さがあるような気がした。本心なんだろうなと感じた。
OP曲とキャラ紹介曲の音楽がすごく好みというか耳に残る。OP曲は特に口ずさみたくなる。

『桜の森の満開の下』
 マリーさんが可愛い。特に都会から山に戻ると山賊に言われたときにあなたがいればどこでも暮らしていけるって言ってくれた女素直に可愛らしく、愛らしかった。ザンさんの「満開の桜は人を狂わせる」が滅茶苦茶鳥肌立った。
 話自体は元々知っていたが、人間の良さを伝えるには到底向いていない話だなぁと実感した。クロセルの気持ちにめちゃくちゃ同感。しかし、人間はこんなものだなとも思う。そして己を悔いて命を絶つというラストはとても日本人らしいなと感じた。鬼は自分の中にあるもので、それを具現化したのが女の鬼だった。桜の下には己の鬼が埋まっている。

『十六桜』
 老侍役の山本亭さんの芝居に圧倒された。台詞の話し方・身振り・声色ですべての登場人物が分かれて見えた。一人語りで進められ、周囲を他キャストが囲んで話を聞いていく形で、背後に映る伊崎さんの表情が個人的には好きだった。眼鏡越しに映る若干潤んだ様に見える瞳が美しかった。
 三人の息子と妻に先立たれ桜さえも失う時に、自らの命を差し出してでも自身を看取る存在を求めた老侍。老侍の命を養分にして彼の死んだ1月16日、雪の季節に花を咲かせる桜。愚かだが、美しく、心を惹かれる話だった。

『櫻の樹の下には』
 今回の目当て作品。言葉選びとリズム感が絶妙ですごく好きな文章。
 キャラ紹介曲での伊崎さんの完璧な音ハメが好き。かっこつけが良く似合う。合いの手入れてくれる大藪さんもいい。伊崎さんはハットと丸眼鏡で表情が見ずらいこともあってか、リップが赤い。本編は伊崎さんの一人語りになることもあって赤いリップが良く映えるし、見やすい。台詞の区切り方、抑揚、スピード感、リズムの取り方で場を席巻していく様子に興奮した。
 本編とは異なるストーリーに進んでいくが、そこを含めて非常に見ごたえのある話だった。
 泣きながら包丁を持つ大藪さん、好みです。前半戦ではコメディ部分を担っていた大藪丘さんが急にシリアス担当になるのか、、、しかも伊崎さんの友人でありながら、殺されたという。そして、全てを思い出した伊崎さんが許してもらえないと分かった時に自らの首を斬る。この時の目が逝っちゃってて凄かった。焦点が合ってない目。絶望と罪悪感をそこから必死に逃れたいと思っている成れの果て。その絶望から生まれる悲劇、好きです。
 個人的には、このペアの『櫻の樹の下には』目当てで本配信を観たので満足。

『義経千本桜』
 正直完全初見で難しいなと言う印象。
ただ、莉多くんが終始可愛い、真っ直ぐな好青年。莉多くんの義経がストリーテラーを兼ねているので、彼が各話の解説もしてくれてる。有難い。
知盛の船の場面では、錨を支える三人がおふざけしてるようにも見える、わちゃわちゃしてる。やっぱり、三津谷さんが絶好調。ほぼ顔芸。
馬の場面、大藪さんツボってtake3。でも三回目で帳尻合わせられるの凄いなと思った。その後の寿司屋の話は全然共感できなかった。何故、首を差し出せるのか…嫁と娘が完全巻き込み事故。二人の首取って善人とは?意味わからんかった。
鼓の場面はほぼアドリブっぽい。完全に楽しくなったちゃった奥方様。フッ軽認定されて、頭大丈夫そ?な狐ちゃん可愛い。
 ねね様に歌わせてくれたの天才。ねね様の歌声は1789以来。綺麗な声。
やっぱり発声に宝塚を感じる。良き。
 
『本編』
 4作の話は人間の美しい姿より、醜く愚かな姿を多く描いている気がした。それもこれも桜の精が説得したかったのは、クロセルではなくラウムだからだ。クロセルとラウムはかつて人であった時には兄弟だった。しかし、醜く愚かな人間たちによりラウムはクロセルを殺さなくてならなかった。耐えきれなくなり、ラウムも自ら命を絶つ。それを桜の精、神は見ていたのだ。そして、絶望した。しかし、神も自身とそっくりに作った人間が嫌いなわけはない。だから、小さな希望を託した。ラウムとクロセルに決断を託した。
 最後、満開の桜の下で物語の登場人物と天使と神が共に歌う。
天使の兄弟のハーモニーが凄かった。
 絶対ラストに希望を持って来てくれる毛利さん、安心安定。
  

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