声劇脚本「四季たちのはなし」

登場人物：4人　時間：１０分

あらすじ…春夏秋冬が集まって会議をしているなか、突然「夏」が人間に恋をしたことを打ち明ける。一年を無事に巡らすために四季たちは話合いを続ける。

夏「ねえ～！お願い！！」
冬「ダメったらダメだよ」
春「流石にねぇ、どうかなぁ」
秋「私はいいけどねえ」
夏「お願いお願い！今年だけでいいんだって！」
春「んー長さは我々で決めてる訳じゃないからね」
夏「じゃあ誰に頼めばいいの？」
秋「上司かな？」
夏「上司って？」
冬「んーまあ自転とかを管理してる部署じゃない？」
夏「えぇ、上に相談するのはめんどくさいからさぁ、話合いでどうにかしようよお」
冬「はあ…夏のその適当で暑苦しいところ本当嫌いだわ」
夏「はぁ～！あたしだって冬のドライで冷たいところマジ苦手だわ！」
春「まあまあ、二人とも落ち着いてっくしゅん」
秋「春さん、花粉症？」
春「うちの管轄、杉花粉きついから」
夏「本当にあたし春じゃなくって良かった」
冬「俺も」
春「秋さん、僕と管轄変わらない？」
秋「いや～。梅雨っていうよく分からない部署も一緒に管理しなきゃいけないんでしょ」
春「あれって本当は夏ちゃんの部下だと思うんだけど…」
夏「あぁ！梅雨くんね！あたし好きだよ！じめじめしてて！」
冬「梅雨とこないだ話したけど、夏さんとはテンションが合わないってぼやいてたぞ。」
夏「え！？そうなの！？」
春「梅雨くんは物静かなタイプだからね」
秋「夏ちゃんとは確かに合わないかも～（もぐもぐ）」
冬「何食べてるの？」
秋「ナスの煮びたし」
春「しぶいね～」
夏「ていうかあ、そもそも毎年毎年冬くん長くないですかあ？」
冬「お前が毎年全力出しきっちゃってすぐへばるんだろ」
秋「９月とかまだ夏ちゃんの管轄なのに私出勤しちゃってるしね」
夏「だって！夏はエネルギーの季節だよ！あなた方より体力使うの」
春「まあね、一番大変だと思うけど…それでどうして、“夏をもう少し長くして欲しい”だなんて言い出したの？」
秋「そうよ。またどういう理由なの？毎年だるいから働きたくないって騒いでるあなたが」
夏「あのね…実は…好きに、なっちゃったの…」
冬「え？」
夏「人間の男の子…好きになっちゃったの…」
春秋冬「………ええええ！！！？？」
秋「いやいやいや」
冬「それはまずいって」
春「夏ちゃんそれは…」
夏「分かってるよ！あたしたちは季節。昔から、日本の一年を美しく彩る役目がある。だけど、好きって気持ちは誰にも抑えられない！そうでしょ！？」
冬「本当にお前って暑苦しいな」
秋「へえ、どういう子なの？」
春「ちょっと秋さん」
秋「いいじゃない。ちょっと聞いてみましょ」
夏「えへへ。彼はすっごく暑い八月に生まれた元気な男の子でね、その子がこないだ言ってたのよ！僕、夏が一番好きって！」
冬「夏休みがあるからだろ」
夏「違う！！私達は相思相愛！愛し合ってるの！」
秋「ふうん、なるほどね」
冬「そもそも人間と季節が恋愛できるわけないだろ？」
夏「だからあ、そんなの分かってるってば！」
春「まあ、なんにせよ季節の長さはそう簡単には変えられないよ」
夏「そんなぁ…」
冬「諦めなってことよ。所詮は叶わぬ恋だったの」
秋「大丈夫。恋の熱さはすぐに去って、じきにアキが来るでしょう。」
春「おあとがよろしいようで」
冬「座布団！」
夏「終わらせんなよ！」
秋「来年もまた会えるんだからいいじゃない」
夏「人間は儚いから、せいぜいあと６０回くらいしか会えないの！…も～こうなったらボイコットするから！来年は夏なし！長すぎる梅雨の末にすぐに肌寒くなっちゃえ！」
春「な、夏ちゃん、それは困るよ～」
秋「やだ、私の仕事が多くなるじゃない～」
冬「梅雨のやつが聞いたらぶちぎれるぞ」
春「かと言って夏を長くしすぎると作物とかに影響でちゃうからなぁ…あ、そうだ！」
秋「春さん。なにか思いついたの？」
春「どうせ言っても聞かないんだから、もう気が済むまでやっておいでよ」
秋「え、それって…」
春「行ってきなよ、人間界」
夏「え、え、えええぇ～！！いいの！？！」
冬「ちょっと春さん、大丈夫なの？」
春「夏ちゃんが暑苦しくて頑固なのは昔からだからね。一日くらい僕が季節回してるから、ちゃんと気持ち、伝えておいで」
夏「…うん！ありがとう春さん！あたし頑張るね！」
（駆け出す音）
冬「あーあ、行っちゃった。上に怒られても俺知らないからね」
春「そん時はそん時」
秋「たまに、春一番みたいな突拍子もないことするわよねえあなた」

（蝉の声）
夏「あ、あのっ…すみません、急に…！あたし、なつ…、ナツミって言います。あの、突然なんですけど、夏は好きですか？…そう、ですか。アハハ、ごめんなさい変なこと聞いて。それじゃ、私、行きますね。…あのっ、夏も、あなたのことが好きだと思います！…さよならっ！！」

秋「あーあーお熱いね～」
冬「明日から猛暑になるぞ～」
春「夏は恋の季節だからね。いいじゃないか」
秋「ねえ、春さんが季節回してるからたんぽぽとかツクシとか生え始めてんだけど」
春「あ～やっちゃったね～」

（うぐいすの鳴き声）

【おわり】