アキレス腱断裂の手術的治療後のスポーツ復帰について
はじめに
アキレス腱断裂はスポーツによって比較的よく起こるスポーツ外傷だが予後は要注意
今回、競技レベルのスポーツ選手の新鮮アキレス腱断裂再建術後競技復帰までを調査した
対象
競技レベルスポーツ選手
平均年齢25.2歳(22~29歳)
手術方法
内側弓状切開
パラテノンは可及的に温存
断裂アキレス腱をkirchmayer法で縫合
パラテノンとは?
パラテノンとはアキレス腱表層にある腱上膜で血流が豊富で滑液包に挟まれているため、炎症やアキレス腱周囲の痛みの原因になりやすい
アキレス腱周囲炎などで痛みがあるときにはパラテノンの炎症を引き起こしていることが多い
後療法
術後2~3週はギプス固定(4枚のウレタンウェッジを徐々に抜くことで足関節底屈角度を調整可能な装具着)
3週より部分荷重と自動底背屈運動開始
6週以降痛みがなく、足関節中間位から軽度背屈位まで改善したら装具外すこの時点から底背屈の抵抗運動許可
膝関節屈曲位での底屈運動からスタートし徐々に膝関節伸展
チューブによる抵抗運動開始(運動時痛があれば中止、自動運動を中心に対応)
縫合部の圧痛(-)足関節の背屈制限(+)ストレッチを開始
この時期にストレッチを過剰にすると腱の弾性が失われることがあるので注意。自動他動運動や関節運動をともなわないリリースを推奨する
チューブでの底背屈運動が問題なければヒールレイズスタート
ヒールレイズは椅子座位から始め、壁を支えての立位→支えなし立位の順で進めていく
両足ヒールレイズで左右差が無くなったら、片足ヒールレイズ
片足ヒールレイズ問題なけらばランニングメニュースタート
ランニング可能で、横方向へのステップ許可
全力ダッシュ→前後方向へのターン
上記、メニューが可能なことに加え、6か月前後でのスポーツ復帰が目安
リスク管理
術後4か月で再受傷
後方へのステップ練習中に再受傷
受傷肢位は股関節・膝関節伸展位での足関節背屈強制
膝関節伸展と足関節背屈強制でアキレス腱に過剰な伸張ストレスが生じ、再受傷したと考えられる。また、股関節伸展でハムストリングス伸長されることで筋連結の関係性から腓腹筋過緊張からアキレス腱への伸張ストレスが助長されたと考えられる。
後方へのステップは受傷リスク高い・ハムストリングスの伸張性向上も必要
まとめ
良好なスポーツ復帰には、下記の4つが必要
・強固な縫合
・安全な術後の固定
・早期からのリハビリテーション
・術後3~4か月での安全なアスレチックトレーニング
渡邊幹彦ら:アキレス腱断裂の手術治療後のスポーツ復帰について.臨床スポーツ医学Vol.24,No.10
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?