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鼠径部痛症候群とインサイドキック

高橋らの研究によると、「鼠径部痛既往歴群のインサイドキック側の股関節外転角度、膝関節伸展角度はコントロール群と比較して小さく、股関節内転角度、膝関節屈曲角度は大きい」といっており、鼠径部痛既往歴がある人はインサイドキック時に股関節や膝関節を大きく動かせず、股関節内転動作を早めてボールインパクトする特徴が認められます。これらの動作が鼠径周辺部への力学的ストレスを高めている可能性があります。

鼠経周辺部通(Groin Pain)は器質的病変があり、確定的な疾患がつくものから、慢性的な疼痛が鼠径部周辺に生じるものまで様々です。多くの研究により、鼠径部痛の原因は股関節周囲の可動域制限や筋力低下によるものであることが示されています。Meyersらの報告によれば鼠径部痛はサッカー選手に好発しており、プロサッカー選手を対象に行った傷害調査では、628件(障害全体の12~16%)の鼠径部痛が発生し、そのうちの399件(64%)が内転筋に関連するものだったと報告しています。Holmichも同様の傾向を示しており、207例の鼠径部痛のうち内転筋に関連したものが60%にも及んでおり、その中の57%が触診による疼痛を呈していたものの器質的な疾患はなかった報告しています。器質的な病変を認めない鼠径部痛の再発率は高く、発症した選手のうち26%が再発したとする研究もあります。

【まとめ】
鼠経周辺部痛はサッカー選手に多く、内転筋に由来することが多い
そのうち器質的な疾患が無いことも多く、その場合再発率が高い

サッカーでは様々な種類のキックが蹴り分けられますが、キックの中で最も使用されるのがインサイドキックです。一般的にインサイドキックは股関節内転筋に依存したキックであると考えられています。特にボールスピードに対する要求が高まるにつれて内転筋へのストレスが強まり、鼠径部痛発生のリスクが高まると推察されています。

鼠径部痛既往歴群となし群では静的な可動域にあまり差がなかったとの研究もあるため、動的なキック動作の評価が重要です。両軍のキック動作の違いは鼠径部痛既往群では蹴り足をテイクバックするときに股関節を大きく動かしてないことで、十分に下肢が加速せず、股関節内転動作に強く依存したキックになることが多く、再発予防にはキック動作の動的な修正が必要です。



以前ご紹介した欧州型のインサイドキックでは内転動作に依存しないインサイドキックが可能です。



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