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仕組みと理解

高速で手放しでクルコンを使っていて事故ったというTwitterを見かけた。
よくよく見るとそもそもハンズオフ非対応のプロパイロット1.0でハンズオフ脇見をしてさらに被害者ムーブという、傍から見れば完全にアタオカレベルのような気もするが、世の中にはこんなレベルで物事を理解していない人が相当数いるようだ。

クルコンの特性

乗り換え、代車、レンタカーなどクルコンのついた車はいくつか乗ったことがある。
色々試したい性格なのでクルコンなどもひととおり使ってはみるが、加減速の具合、前車がいなくなったり割り込みがあった場合の動き、設定速度を超過したときの挙動、レーン逸脱警報の感度や各種の警告など、特性を掴むまでは怖くて任せっきりになどできない。

新旧まちまちではあるが、たとえば設定速度を超過した場合は日産やマツダはアクセルオフで自然に減速する感じがするのに対し、トヨタは積極的にエンジンブレーキを効かせるので安心感がある。
一方で道路状況によりクルコンが解除されるときの警告音はマツダが大きめで、次いで日産、トヨタは音が小さすぎて聞き逃しそうに鳴ることがあり怖い。
そういえば件のTwitterも大音量で音楽を流していたので解除音やレーン逸脱警報が聞こえなかったんじゃないだろうか。

そのような特性を把握して使えばとても便利なのだが、以前妻が高速から降りるときに何を思ったのかブレーキではなくクルコンの設定速度を下げて減速しようとしたことがあった。
クルコンは基本的に車速を維持するためのものなのでそこまで急激な減速はできない。ヒヤリとした後ブレーキでガックンと減速したが、これも動きを理解していないが故だろう。

挙動や特性を理解する

自動車に限らず、ものの挙動や特性を理解するということは当たり前のように思えるが、その程度は人によって大きく違いがあるようだ。
話題のChatGPTにしたって、あれを「AIが何でもできるようになる」と思ってしまうのは解像度が低い。
ChatGPTのような高度なものに限らず、アナログな文房具や工具を使うのにテコの原理レベルの物理を理解していないとか、灯油を入れるのにサイフォン効果を知らないとか、LANケーブルを抜き差しするのにツメの構造を理解していないとかいうものもある。
なにも理論を理解しろというレベルではない。ちょっと興味を持って理屈を考えれば分かりそうなものだが、電話機が発明されたときに「声が届くから荷物も届くだろう」と電柱に登って荷物をぶら下げた人と同じようなことをしている。

このころは電話交換の公開実験を行っていたときでしたから、「電話は声をよく伝えるくらいだから、きっとコレラも媒介するのではないか」との噂が広がって、電話をつけるのをしりごみする人さえあったというのです。
これは、「電話線に荷物をぶら下げれば先方に届くだろう」という話と共に、当時としては笑えない真剣な話だったようです。

東京消防庁<消防マメ知識><消防雑学事典> (tokyo.lg.jp)

どこまでのレベルを期待するか

これは難しい問題だ。
技術が民主化してくれば、つまり高度な運転支援システムが大衆車にも搭載されるようになってくれば必然的にリテラシの低い層にも使われてしまう。
以前書いた「ネットは昔平和だったか」という話にも通じるが、技術が行き渡るというのはそういうリスクと表裏一体ということか。

なにか起こったときに後出しジャンケンで批判するのは簡単だが、オールジャンルの知識を予め持っておくことは不可能だ。
アパマンでヘヤシュして爆発したニュースを見るとアホかと思うし、ドラム缶を切ろうとして爆発したニュースを見ると言われてみればそういうリスクもあるなと思うが、自分が日常使うスプレーやアルコール消毒などを100%安全に扱えているかと言われると難しい。

ネットで色々な情報を得られるようになったが、結局のところ分からないものも無数にある。
我々凡人にはテレビが映る仕組みもよく分からないし、医者がいくらインフォームドコンセントしてくれたところで、薬の作用機序すら分からないのだ。

分からないなりにもある程度納得の行くレベル、あるいは人にちゃんと説明できるレベルの理解をしておくことが大事だろう。

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