【がん治療記x受験奮闘記】入院前~意志~

 入院前僕は手術やがん治療よりも受験に対する不安の方が大きかった。手術は全身麻酔で行われるため、寝ていれば終わると軽視していた。がん治療中も普通に勉強ができると見くびっていた。だから僕は今後の受験勉強のことばかりを考えていた。前に述べたように現役合格をどうしても譲れなかった。なぜかと言われると返答に困る。浪人は別に悪いことではない。1年足踏みをするだけ。A判定を取っていても浪人することだって普通にあり得る話である。しかもコロナ禍でのがん治療というのは浪人の言い訳にはもってこいだ。浪人の理由としてそれを挙げれば周りに、可哀想だとか、不幸な人だとか思われるだろう。そこで僕は気付いた。そのように思われることほど屈辱的なことはないと。可哀想とは言われたくないと強く感じた。さらに、もし現役合格をすれば、困難を乗り越えたすごいやつだと思われるのではないか。そう感じた。今の自分はカナヅチで運動もできない、顔もイマイチで背も小さい、コミュニケーションも苦手でオタクで気持ちの悪く、おまけに音痴だ。そんな自分がそのすごいやつになれるのではと思った。何の取柄もない僕にとってこの状況は大きなチャンスなのではないかと希望を抱いた。だから僕はがん治療中も勉強し一般入試で現役合格を目指そうと決めた。
 また、浪人してもいいという気持ちで勉強していれば現役合格は叶わないだろうとも思った。浪人してもいいやなんて考えていたら浪人するに決まっている。そんな甘い世界ではないと教えられてきた。やると決めたなら全力で突っ走らなければと考えた。推薦入試を受験するという手もあったが、国立大学の一般入試志望だったため推薦用の対策は全くしておらず、受ける気もなかったためその道は早いうちに切ってあった。
 入院前、僕は張り切って病院で勉強する準備をした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?