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2022年 個人的 読書 オブザイヤー

 年末に近づきまして、ジジの個人的な2022年の読書オブザイヤーを紹介いたします。

 2022年の12/20(火)現在、私が1年間に読んだ本の冊数は再読を合わせますと47冊です。

 7月まで9冊とオブザイヤーを発表しますとか言えるような冊数ではなく、今年は少ない中から選ばないといけないのではないかという不安がありつつも、気が付けば選んでも許されるやろくらいの本を読めたこと、まずはホッとしております。

 この中途半端な時期に私の個人的な今年の本を選ぶ理由は、もしかすると私のnoteを読んで、「この作品、年末年始に読んでみようかな?」と思われる方がいるかもしれませんので。

 幸い、今年も良い本に巡り会えたなと思えるくらいに、面白い本、考えさせられる本を楽しく読ませていただきました。

 書店に並んで見かける本ばかりになったかなと思いますが、そこは流石、書店員さん、良い本を紹介していただいたと思いながら、今年のオススメ本とオブザイヤーを私なりに紹介したいと思います。

 それではお楽しみください。

①同志少女よ、敵を撃て(逢坂 冬馬)


 ロシア・ウクライナ戦争が起きた2022年、2021年11月に出版されたこの作品は、注目を集め、本屋大賞を受賞しました。

 この作品、舞台は1942年の独ソ戦争の最中、ドイツに両親を奪われ、日常を奪われた村の生き残り、セラフィマが狙撃兵として訓練され戦争に巻き込まれる話です。

 このミステリーが凄いの2位として支持された作品でもありますが、個人的にはミステリー感はないかなぁと思いつつ、内容がタイムリーな上、戦争の虚しさというのが物凄く伝わってくる作品で、この作品に今年出会えたことを感謝したいくらいの作品です。

 読むなら、今年中がオススメな作品ではありますが、ウクライナでのロシアの侵攻がなくとも、本屋大賞をとっただろうなと思うほどには面白い作品でした。


②わたしはあなたの涙になりたい(四季 大雅)


 今年のガガガ文庫大賞を受賞したライトノベルです。

 ただ、新人のライトノベルと侮るなかれ。

 もの凄く綺麗な文章に、ヒロイン揺月のピアノは一度聞いてみたいなと思うほど、キャラクターへののめり込み度が半端ないなと思う作品です。

 体が徐々に塩となり、最後は全身が塩になって死にいたるという架空の難病、塩化病なるものがあり、それヒロインがかかってしまうという難病ものといえばそれまでなのですが、終盤はわかっていても泣けました。タイトルの意味もそうなのですが、今年1番、主人公とヒロインのことが頭から離れなかったなと思う作品です。

 難病ものなので人の死というものを考えさせられる作品ですが、今一緒にいる大事な人はいつか必ずいなくなるので大切なんだということを教えてくれた作品でもあり、こんなことをガガガ文庫さんに感想として呟いたら、POPに採用していただいたという私の思い出ともなった作品です。

 この作品は泣けますが、本当に余韻が心地よい作品だなと思います。


③ラブカは静かに弓を持つ(安壇 美緒)


 音楽教室で演奏する演奏も著作権法の上の「演奏権」が及ぶのか。

 実はつい最近、最高裁判所で判決が出ていて、意外とタイムリーなところを舞台にしていたんだなと気が付いた作品がこちら。

 法学部でありながら全くその辺のことを知らずに読んだのですが、帯にあるように「武器はチェロ、潜入先は音楽教室」とあるように、音楽教室での演奏の実態を調査するために某版権を持っているJSR〇Cらしい会社が、社員を音楽教室の生徒としてスパイを送り込みます。

 そのスパイとして選ばれた主人公のミッションは演奏権を侵害している証拠を集めること。

 しかし、当然、潜入先の音楽教室で人と出会い、失った時間を取り戻すうちにスパイであるという自分と、居場所を見つけた自分との葛藤が始まるというところからが本番。

 スパイとはなんと悲しい生き物なのかと思わせられる作品であるとともに、音楽とスパイを組み合わせた発想が面白い作品です。


④栞と嘘の季節(米澤 穂信)


『本と鍵の季節』の続刊です。

日常の謎で、人気作家の米澤穂信先生の最新刊で、私の中で今年のミステリーはこれと思っている作品。

 『本と鍵の季節』の続刊ということもあり、若干知識は前段階で知識を必要とする作品(高校の図書室に謎が持ち込まれるとか、主人公は2人組の図書員とか、その主人公の関係性など)であるということは否めないですが、不穏な状況の中、まさにダークサイドな日常の謎であるにもかかわらず、「事件はほぼ起きない」のにミステリーが成立しているというのが凄いところ。

 ただ、なんで?という疑問や疑惑があるのに、事件は、本当に事件なのか?と疑わないといけないほど、大きな事件は一切起きない。でも、学校の闇の部分を暴いていくので、なんか怖いぞという不思議なミステリー。

今年のこのミステリーがすごい!の『爆弾』は未読ですのでなんとも言えないのですが、話題になった『方舟』と比べたら、本作の方が緻密なミステリーなので謎解きは楽しかったなと思います。ただ、最後の衝撃度は断然『方舟』の方だとは認めています。

ただ、本作を読んでまた前巻の『本と鍵の季節』を読み返したくなるほどには面白くて印象が残っていますので、今年の個人的ノミネート作品といたしました。


⑤宙ごはん(町田 そのこ)


   育ての「ママ」と産みの「お母さん」がいるヒロイン「宙」は小学校にあがる時に産みのお母さんである花野と一緒に生活をすることになる。

  宙の産みの母、花野は世間一般ではいうところの最低な母親で、肩書きはイラストレーターでしかもかなり実力があるのに、家事は人任せ、仕事で忙しくて世話をしない、おまけによくわからん男を連れ込むわ、その男とのデートに連れていくわでヒロイン宙を戸惑わせるところから始まる第一章。

 そのあともヒロインやその周りにここまでするか?と思うくらいにたくさんの試練を与えていく本作品ですが、そこに手を差し伸べてくれる人もいれば、苦難も落ち着いてお腹がすいたときに食べるなんとも言えない優しいごはんがそこにある。

 これは、ヒロイン宙の成長物語であり、同時に家族や周りの人たちの成長物語でもあります。

 家族ってなんだろう?親になるというのはどういうことなのだろうか?

 正しい子育ってあるんだろうか?

 などなど、完璧な子育てもなければ、完璧な家族もいない。それぞれの家族があって、家族は育っていくものなんだということを教えてくれる作品でした。


⑥2022年 読書オブザイヤー

 今年は読んだ本が良作だらけで、どれを読書オブザイヤーにしようか悩みましたが、上記5作品の中から私の読書オブザイヤーはこの作品です。




私の今年の読書オブザイヤーは町田そのこ先生の『宙ごはん』です。

この作品を読み終わったときに、今年の1冊を選べと言われれば、これだなと思いました。

上記で書いたように、登場人物にこれでもかというくらい試練を与えてくるこの作品。

 正直数々の困難にしんどくもなりますが、一方で、踏まれた麦はたくましいというように、試練、困難を乗り越えていくたびに人として、家族として成長していくことはこういうことなんだろうなと強く思えました。

 宙の母親、花野は世間一般でいうととんでもない母親としか思えないですが、宙を通じて、或いは困難を通じて何もできない母親から、1つの家族を癒せるようになるくらいまでになりますし、読んでいて母親も子供を通じて成長するんだなと思いました。親も人間といえばそれまでですが、子供が1人の人間を親にしてくれるのだということを教えてくました。

子育て論に、家族とはこうあるべきだという理想論はおいておいて、それぞれの家族にそれぞれの悩みや苦楽があって、それらを乗り越えて家族は成長していくというのを気づかせてくれる作品で、苦楽を乗り越えたときに食べるご飯は、3つ星のレストンランみたいに高級な食材を使っているわけではないですが、心と体中に染み渡るそんなごはんなんだなと思いました。

 家族って強くて温かいものなんだなという当たり前のことを教えてくれた本作は、今年の私のかけがえのない1冊として、個人的なオブザイヤーとさせていただきます。

 いや、読書って素敵ですね。

 それでは、さよなら、さよなら。


 


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