2022年3月に読んだ本
早すぎる。2022年が早すぎる。置いていかないでくれ。
もう1年の4分の1が過ぎたことになる。この3か月で人生におけるどんな進捗があったと言えるのだろうか。実感が無いだけで少しずつ前に進めているのだろうか、背泳ぎみたいに。
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私が読書記録をつけている読書メーターにはデータが無い『私たちの中学お受験フェミニズム』というアンソロジー兼対談をまとめた本も、友人に勧められて読んでみた。
中学受験経験者、しかも男子校出身者で共学化した母校を持つ身としては、かなり身近というか、自分の半径1メートル以内のことが書かれていてかなり面白かった。
中学受験に潜む男女格差を取り上げた1冊で、データに基づく客観的指標と、著者たちの体験に基づく主観的指標から教育課程及び社会に根強く残っているジェンダー役割を改めて分析していると感じた。
灘が共学化する日はなかなか来ないだろうという話は興味深かったし、中学受験合格への道のりは、高学歴専業主婦たる母親の働きも大きく、なんなら彼女らの自己実現の手段という側面もあると描かれており、鋭い指摘であると感じた。
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2022年3月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:976ページ
ナイス数:177ナイス
■我が友、スミス
第166回芥川賞候補作。
女性のボディビルダーの話と聞いて、どんなものかと開いてみたら9割が筋トレと筋肉の話だった。物凄い。
タイトルから外国人との交流物語があるのかと思ったら「スミス・マシン」という名の筋トレ器具のことだった。
「違う生き物になりたい」という主人公の思いは甚く純粋で儚くも強い。
作品の中には女性として生きることのしんどさがところどころに垣間見える。
そこから逃げるように飛び込んだボディビルドの世界でもまた主人公は女性らしさを求められる。
筋肉をテーマに置きつつ、どの世界にも潜む女性の生き苦しさに焦点を当てた唯一無二の作品。
読了日:03月02日 著者:石田 夏穂
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■脱「いい子」のソーシャルワーク――反抑圧的な実践と理論
ソーシャルワークは個々人の課題を解決するというよりもむしろ社会構造に対して働きかけるものだという信念でもって書き上げられた1冊(だと私は感じた)。
会社や組織の中で「いい子」をやってる全ての人に読んでもらいたい。
本書の中では福祉業界がメインで書かれているが、自分にとってはまるで教育業界の実態が書かれているように読み取れて、サービス残業ややりがい搾取の温床が社会のあちこち(とりわけエッセンシャルな職種)で起こっているように感じる。
「これってなんか変だよね」という声を少しずつ大きくしていくことが社会変革の第一歩に繋がる。
読了日:03月05日 著者:坂本いづみ,茨木尚子,竹端寛,二木泉,市川ヴィヴェカ
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■心理的安全性のつくりかた
リーダー的なポジションに付くことの多い自分にとってこの上なく重要でかつ身につまされる話が載っていた。
「何でも言ってね」は役に立たない。
人は「みかえり」を求めて行動するし、そのみかえりが好ましくないものだった場合、行動の数は減ってしまう。
例えば問題報告を上がった時に頭ごなしに怒った場合、報告が上がって来なくなってしまうということが得てして組織の中では発生する。
望ましい行動が増えるような言動を心掛けようと思った。
また「リーダーは『のび太力』を上げるのが良い」と本書は説いており、興味深くキャッチーで分かりやすい。頭にも残る。
読了日:03月13日 著者:石井 遼介
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■六人の嘘つきな大学生
話題となっていた推理小説を読了。
ばら撒かれた伏線を見事に回収していく様は圧巻。
物語前半は就活というある種異常な環境に置かれた男女6人が希望する企業への入社を掛けてグループディスカッションを行う。
ただ物語の後半になると一転、視点が変わり読者が全く予想していなかった切り口から話が進んでいく。
登場人物ひとり一人のキャラクターがとても立っており、ストーリーもかなり精緻に組まれている。
映像化もそう遠くない内にされるんじゃないかと思う。
読後感が心地良い。
読了日:03月22日 著者:浅倉 秋成
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▼読書メーター
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