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本の繋がり

 「良い店、良い本、良い人は他の人にも教えたくなるんよね」

 これはある知り合いの言葉で、彼女とは本の貸し借りをしていたような仲だったのだけれど、ちょっと縁遠くなってしまって今ではもう連絡先も分からなくなってしまった。彼女に借りた本が今でもまだ家に残っているし、貸した本はまだ返ってきていない。借りた本はもう読む気にならない(読む賞味期限が切れてしまった)し、貸した本は結構お気に入りのSF小説だったのでまた買おうか迷っている。

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 高校の時に漫画の貸し借りが爆発的に流行った。同じ部活の人間が『ワンピース』やら『べしゃり暮らし』やら『バカボンド』やらを大量に持ち込んで、誰も使ってないロッカーを専用の貸し書架にしていた。「〇〇巻がない!!」みたいなことが頻発してたような記憶がある。

 自分はそこまでではなかった(?)けど、『はじめの一歩』(当時は多分全90巻くらい)や『喧嘩商売』(今は長期休載中の『喧嘩稼業』)を仲の良かったグループを中心に布教し、代わりに『フルーツバスケット』を借りたりしていた。主人公の尊さや出てくるキャラクターの境遇に涙した覚えがある。紅葉くんが好きだった。

 今でも漫画や本の貸し借りはしばしばするし、貸せるようにと電子ではなく紙で買うことが多い。同じ漫画・本を読んでいるとそれだけでその人との共通項ができて嬉しいし、会話が弾む。好きな人の好きな曲を自分の音楽プレーヤーに入れてしまう、あの感覚に近いかもしれない。

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 自分は最近、カツセマサヒコという小説家兼ライターにハマっている。7/2に発売されたばかりの『夜行秘密』を読んでいるのだけれど、恋愛の群像劇を見ているようでドキドキワクワクする。彼を知ったきっかけは、昔から著書を読んだり文学フリマで実際に会いに行ったりしていたphaさんの影響だった。自分のお気に入り作家が注目している人は、自分のストライクゾーンに入る可能性がかなり高い。

 カツセマサヒコ氏はTokyo FM で毎週土曜の深夜2時に「Night Diver」というラジオ番組をやっている。流石に眠いのでradikoで後から録音されたものを聴くのだけれど、意外と日曜の昼下がりでもマッチする。彼の書く文章が10割方恋愛要素を含むこともあって、番組に届くお便りも恋愛絡みであることが多い。世の中には色んな恋愛をしている人がいるなぁ、色んな修羅場があるなぁと半ば感心しながら聴いている。

 また彼と親交の深いアーティストも出演することがある。最近だと川谷絵音やさとうもかが来て、恋愛や東京という街についてを語っていた。

 そして流す曲がまた自分に凄くストレートに響く。本当にビックリするくらい。あまりにいいので、自分もまた他の人に勧めたりしている。冒頭の「良い店〜」に「良い曲」を一つ加えたいくらいだ。

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 人との繋がりを生んで、強くしてくれる本や音楽が好きだし、その本をきっかけに作者を知り、その作者からまた本や音楽を知っていく。
 素敵な循環が自分の中で生まれている。そんな気がする初夏である。

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