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2021年7月に読んだ本

 夏という季節が苦手で外を歩くだけでHPがゴリゴリ削られていく感覚がある。ドラクエ的にいえば家の外全てが毒の沼地状態である。

 自分の好きな漫画の一つに『スペシャル』という作品があるのだけれど、そこでも突然に暑くなる夏に対してツッコミ(?)を入れるキャラが出てくる。

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©︎平方イコルスン『スペシャル』第一巻

 夏を擬人化したらどんな人だろうと空想してみると、絶対に"陽キャ"側の人間でなかなか気が合わないだろうなあという話をこないだ友人としていた。金髪で肌をこんがり焼いてグラサンをかけて水着姿で海でナンパしてる、絶対。4つある季節の中で自分がリーダーだと気取っているのがまた腹立たしい。

 春はのんきなゆるふわ系で、秋は少し大人な雰囲気、冬は物静かで賢い系みたいなキャラ付けが自分の中にはあって、そんな四人がわちゃわちゃするほのぼのアニメ妄想をしばしば脳内で繰り広げている。完全に脳が茹っている証拠である。

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 学校は夏休みを迎える時期である。無意識のうちにノスタルジーを感じたくなったのか、かつて読書感想文を書いた『西の魔女が死んだ』など4冊を先月は手に取って読んだ。児童文学ではあるけれど決して平易すぎる文章ということはなくて、なかなか読みごたえがある1冊だと感じた。しかしなかなかどうして、説教臭く感じてしまう部分も少なからずあり、『君たちはどう生きるか』を読んだ時に感じたような、大人から子どもへの道徳心の押し付けを感じないではなかった。私が少し神経質になりすぎているだけかもしれないが。。。
 その他、三島由紀夫のエッセーと小説を一冊ずつ、カツセマサヒコの二作目となる恋愛小説を一冊、読了した。三島は何冊か彼の思想をそのまま書いたエッセーを出版しているが、主人公が動く小説というフィルターを通してでないといまひとつピンとこないというか、観念的なところで止まってしまう印象を受けた。カツセマサヒコ氏の新刊は前作『明け方の若者たち』が自分的にはずいぶん良かったので発売前から注目していた。サイン本をなんとか手に入れる事ができたので嬉しい気持ちになっている。短い感想は下記にある通りだけれど、一つの記事にして書きたいなと考えている、気が向けばだけど。

2021年7月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:952ページ
ナイス数:182ナイス

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■行動学入門 (文春文庫)

 第一章「行動学入門」第二章「おわりの美学」第三章「革命哲学としての陽明学」の3章構成で本書は成り立っている。私が気になった第二章では様々な”おわり”についての省察が記されている。”おわり”は筆者の美学であり、終わり方や終わったあとの余韻や感動にこそ物事の本質が宿ると言わんばかりの書きっぷりである。
 私のバイブルであるフランクリン・コビー著『7つの習慣』でも「自分の葬式を想像しそこに参列する人々を思い浮かべながら日々を過ごせ」と書かれていたことを思い出した。死から逆算して日々を漫然と過ごさないようにしたいと改めて思った。
読了日:07月04日 著者:三島 由紀夫

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■西の魔女が死んだ (新潮文庫)

 大人になってから読む児童文学は良いという言説に嘘はない。再読ながらも物語が心の奥に染み込んでいくような、そんな感覚を覚えた。中学校を不登校になっておばあちゃんの家に「エスケープ」してきた少女・まいは自然に囲まれて徐々に回復していく。その様は物語中でも名前が出てくる『アルプスの少女ハイジ』を思い起こさせる。魔女と呼ばれるおばあちゃんが魔女修行と称してまいに伝える生活の教養や人生の教えは現代においても役立つ教養である。
読了日:07月17日 著者:梨木 香歩

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■夜行秘密

 カツセマサヒコ2作目となる小説は恋愛と暴力の入り混じる一冊。音楽と小説のメディアミックスはYOASOBIが大きな成功を収めたことにより一般的なモノになるかもしれない。本書もまたindigo la Endの同名のアルバムからインスパイアされて生まれた作品である。これまで音楽が登場する小説は読んだことがある(村上春樹作品はとりわけその色が強くテーマ曲として作品の雰囲気作りの一つの装置として使われている)けれど、音楽を解釈して一遍の物語にするというのは、クリエイティブでありながらもまるで翻訳のような作業になるのではないかとも思う(筆者もラジオの中で本書の執筆作業を「翻訳」という表現を使って話していた)。
 内容としては七人の男女がそれぞれの価値観を元にそれぞれ恋をし、夢を追いかけ、時には暴力を振るい、別れを経験する群像劇となっている。
読了日:07月17日 著者:カツセ マサヒコ

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■青の時代 (新潮文庫)

 上流家庭に生まれた、鬱屈とした性格の主人公にあって、特に大それた恋愛をするわけでなく、大きな業績を成し遂げるわけでもなく、あっさりと物語が終わってしまった印象を受けた。三島作品において隅々の表現や感情の機微を正確に追うことはかなり労力のいるのでどの作品を読んでも「完全に理解した」とはとても言えないのだけれど、それでも本作は(なんだかあまりよく分からなかったなぁ)という読後感がとりわけ強く残った。
 主人公・誠は幼少期より諦観を極めていて、旧式の思想を持つ父兄弟を軽んじている。学業は優秀で大学在学中に始めた金融業も軌道に乗せることに成功するが、一方で「絶対に人を愛さない」ことを信条としている図書館司書・野上耀子を”落とす”ことに躍起になる。
読了日:07月31日 著者:三島 由紀夫

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