対談2

【対談】ゲーム/eスポーツ業界アナリストの但木一真氏と、「ゲームの地位を向上させるには?」を考える。vol.1

こんばんは、ゲムトレ広報です。
今回は、ゲーム/eスポーツ業界アナリストの但木一真さんと、弊社ゲムトレ代表である小幡和輝の対談をお届けします。
ものすごく濃い内容の2時間だったので、全3回に分けて掲載していきます!

但木一真氏:ゲーム/eスポーツ業界アナリスト。日本最大のeスポーツ/ゲーム専用施設『REDEE』プロデューサー。
Twitter: @k_tadaki
note:https://note.com/ktadaki

「HIKIKOMORI」について

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はじめは、海外でも「HIKIKOMORI」というワードで知られる日本の引きこもり問題に触れて、話が始まりました。

但木一真氏(以下、但木):引きこもりから犯罪に走る、というのが結構昔は言われていて、結構引きこもりの人を見る目が厳しかったですよね。川崎市の児童殺傷事件の影響などでも、結構色々と言われていましたけど。

小幡和輝(以下、小幡):ひどい話ですよね。メディアがそれを報じやすいから広がってしまっているだけで。

但木:実際の傾向とはなんら関係ないけど、そういう報じ方がしやすいからでしょうね、テレビはね。ゲームもそれと同様で。

小幡:事件があるたびに、ゲームと犯罪が結び付けられますよね。「加害者の自宅からゲームが見つかりました」とか報道されて。でも僕、それにめちゃくちゃムカついて。いろいろ調べたんです。家庭にゲーム機があるという人の割合はものすごく多くて。

但木:家庭にゲーム機があることと、犯罪に因果関係はないですからね。ゲームに関しては、かなり偏向報道があるかなと思います。テレビは、視聴者がそういう話題を欲しがっていると思って放送してるけど、すごく悪循環だと思いますね。実際、報道する側は視聴者がほしい情報だと変に思い込んだまま何度も同じような切り口で放送するし、視聴者もテレビがいうならそうだろう、って思っちゃう。そしてゲームに対するイメージが悪くなりますよね。

小幡:そうですね。「esports」っていう言葉が出てきて、部活としても盛んになってきたし、、「変わってきたな」と思う瞬間は多いんだけど、「まだまだだな」って思う瞬間も、やっぱりあります。

但木:どっちもあるよね。テレビでもよくゲームのCMを見るし、esportsの部活を取り上げて子どもたちの頑張りを応援する、っていうような見せ方をされているものもある。だけども、一方でゲーム依存症に治療が必要だとか、色々言いますよね。

ただ、日によって放送内容が違うから、たまたまどちらかの日の特集しか見ていない人の思想は偏っちゃう。これをやめて、常に両論併記してほしい、中立な立場に立ってほしいっていうのは、常に思っていることなんですけどね。

ゲーム業界を俯瞰して

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小幡:本当ですね。但木さんってゲーム業界はどのくらいになるんですか?

但木:まだ3年位ですね。それまではずっとコンサルタントをやっていました。大学はアメリカにいて、卒業してアメリカのコンサル会社に入って。2008年ですね。

で、2009年に会社が買収されて、そのままその会社に所属して、コンサルトして7~8年やってましたね。コンサルのときも、扱う領域は製造業とか。

小幡:全然関係ないですね(笑)

但木:そこで原価管理とかしてましたね。そういうことをずっとしていて。ただ趣味でずっとエンタメは好きで。ずーっと工場とかで働きながらゲームとかしてた、っていうのはありますけど。

エンタメ系に転職したかったんだけど、すぐに自分のやりたいことをできるわけではないので。だったら会社を作ろうと。

小幡:走りながら考えていくっていうパターンですよね。僕も同じです(笑)

但木:エンタメ系の人脈とか何もないし、培ってきたコンサルの能力も全然使えないし。結局会社は1年くらいで辞めちゃって、カドカワ株式会社に入りましたね。だからエンタメ業界経験は浅いといえば浅い……。

小幡:そうは思えないですね。本もいくつか出されていましたし、今度大阪にesportsの施設オープンしますよね?(編集注釈:取材日は12/27)

※但木さんのプロデュースされた『REDEE』についてはこちらのツイートからご覧ください。

但木:そうですね、歴は浅いんだけど、ちょっと離れた場所から見た方が、おかしなところが見えたりするじゃないですか。ゲーム業界って、少し前までは衰退産業だったんですよね。

ソニーや任天堂が主力になった頃から、スマホが台頭してきてかなり市場が広がったせいで、据え置き機が危なくなってきたんです。
ただ2017年くらい、Nintendo Switchが発売された頃から盛り返してきてますよね。

今は、多分みんなそんなことも忘れてますけど、かつては衰退産業だったっていう。売り切りゲームを作って、発売から2週間くらいで売上を上げて、そこからは売上が下がっていくっていうビジネスモデルだったんですよね。でも、それでは追いつけなくなっちゃった。

スマホは誰でも持ってるから、ゲーム機なんて買わなくていいし。だけど、スマホゲーム市場が広がって、このまま据え置き機が衰退しちゃうとまずいぞっていうので、esportsが出てきたんですよね。

とはいえ、中の人達の認識はあんまり変わってないんですよね。なんとかしなきゃいけないって思ってても、どうやればいいのかわからないから。そこに対して私が色々と物申してるっていう状況ですね(笑)

esportsと相性の良いゲームとは

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小幡:僕、ゲームのモデルとしては、「フォートナイト」とかってesportsはめちゃくちゃ相性がいいなって思うんです。売り切りじゃないから、ユーザーが長く続けてくれる方が儲かるモデルですよね。

だけど、極端な話、売り切りのゲームだと、新しいタイトルを出したらそっちに買い替えてもらうほうが儲かるモデルになってるじゃないですか。1つのタイトルを育て続けたとしても、あんまり得がないっていう。

だからesportsと相性がいいのは、確実にフォートナイトのような課金型のゲームだと思うんですよね。

但木:そういう意味では、モバイル系は元から課金モデルとしてやっていたので、相性がいいですよね。

もっと深い層で考えると、ユーザーの可処分時間と興味をいかに自分のタイトルに長く引き寄せられるかっていうところなんですよね。

この間、M-1グランプリがありましたけど、もうすでにみんな忘れかけてますよね。もうどんどん新しい話題が出てきて、埋もれてしまっている。

そんなふうに、ほかのエンタメ系のコンテンツと、興味の奪い合いをずっと続けていかなくちゃならないんですよね。だから、ただビジネスモデルとして運営型、課金型にしていけばいいよねっていう話でもないんです。

ユーザーの関心を強烈に引き続けられるマーケティング施策を打ち出し続けられるかどうか、っていうところですよね。これはゲーム業界が、ゲーム同士だけで争っているわけではなくて。

アニメやマンガやテレビなんかもそうだし、エンタメ系だけじゃなく、美味しいものを食べている間も結局ゲームやらないよね、って考えるとね。

小幡:そうですね、結局楽しいこと全部がライバルですよね。SNSとかもそうですし。

但木:そう、ツイッターやってるときはゲームしないから。そこといかに戦っていくかですよね。関心をいかに持続的に引き続けられるか、って考えると、やっぱり人間同士のドラマを作ることなんですよね。

ゲームのストーリーは終わってしまうけど、人間同士のドラマっていうのはなにかあるじゃないですか。esportsでは勝った方も、負けた方も、ストーリーがありますよね。

だからこそesportsは人工的にですけど、ストーリーを作って引き続けていくっていう。ストリートファイターだったら、あれはゲームのストーリーなんか特にないですけど、有名なプレイヤーに焦点を当てると。

しかもこっちのドラマはゲームをアップデートしなくても、超有名プレイヤー同士が戦って負けたほうが泣いたって言ったら、もうそれだけでドラマになるわけですからね(笑)

それはゲーム会社からしたら嬉しいですよね、ゲームを楽しんでくれて、見ている人もたくさんいて、多くの人が愛してくれるっていう。それがesportsなんですよね。

そのゲームを長く愛して、プレイしてくれることが課金に繋がるっていうのがesportsなのかなと。それを意識的にやっていかないと、esportsの取り組みっていうのは、うまくいかないのかなと思いますけどね。

ゲーム依存について

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小幡:僕はやっぱりゲームっていうのは、コミュニケーションツールだと思っていて。競技としてやるときは対戦相手がいるし、仲間とカジュアルにやるときもそうだし。

やっぱり誰かと一緒にやるっていうのはすごく大事だと思うんです。僕なんか今、ゲーム依存症になったらどうするんだって、すごい叩かれるんですけど(笑)。

但木:そうですね(笑)

小幡:でも、僕の自分の体験談から考えると、1日10時間くらいゲームしてるんです。周りから見たら、たぶん依存症だって思ってたと思うんですけど。

でも、依存症かどうかっていうと、そうではなかったと思うんです。僕の不登校時代の生活をざっくり話すと、朝9時くらいに友達の家やフリースクールに行って、そこでゲームが始まるんです。

そこから2~3時間ゲームして、お昼食べて、またゲームして……みたいな。家に帰ってくるのは夜8~9時とか。普通に学校に行っている子たちよりも、家に帰ってくるのは遅いみたいな。

但木:ずーっと外にいてね。

小幡:そうです。で、週末は大会に出て、っていう感じで。でも、それって多分、感覚的には野球とかの部活をやってるのと同じかなって。公園に行って野球するのと、友達の家でゲームするのと同じだよなって思うんです。ゲームはやっているけども、昼夜逆転したこともないし。

でも、なぜ昼夜逆転しなかったのかっていうと、やっぱり誰かと一緒にゲームしてたからじゃないかなって思うんです。

ゲーム依存が一番起きやすいのって、部屋に閉じこもって一人で黙々とゲームに向き合っている状態が続くときかなと。それがやっぱり、ゲームを誰かとのコミュニケーションツールとして使うかどうか、っていうところかなと思うんです。

但木:ゲーム依存については、いろんな観点があって、まだどう整理したらいいかわからないんだけど……。

1つとして、ゲームっていうのは、そういうふうにデザインされてるんですよね。ユーザーをハマらせる、っていう。たとえばスマホゲームでも、最初にガチャを100連ガチャ引かせて、さらにのめり込ませる、みたいな。

小幡:ありますね(笑)

但木:ゲームとしてそうデザインされているので、ハマらないって言うと、それは逆にゲームデザイナー(編集注釈:日本ではゲームプランナーとも言います)に失礼かなと。

小幡:それはそうですね。

但木:ゲームにハマらせる、プレイさせるための仕掛けなので。でも、あらゆるものがそうじゃないですか。野球や料理も、どこかで自分でハマるポイントがあって、どんどんのめり込んでいくわけですよね。そのハマるポイントを作るのが上手いのがゲームなのかなって。

もう1つは、優先順位が1番に来るべきものが来ない状態を指して依存と言うんじゃないかと思っていて。結婚生活で、パートナーと仲良くしなくちゃいけないのに、ゲームばかりして話を聞かないとか。

「他に優先すべきものがあるでしょ?」って周りが思う状態を依存と指してるんじゃないかと思うんです。まあ、結婚生活で、パートナーが病気になっているのにそれを放っておいてゲームしてるっていうんだったら、それはまずいけども(笑)

小幡:突き詰めてしまえば、そういうのってゲームに限ったことじゃないですよね。なんでも同じですよね。

僕は囲碁が好きなんですけど、囲碁って頑張ってるとめちゃくちゃ褒められるんです。でも、スマブラを頑張っても全然褒められなくて(笑)。囲碁で全国大会に行くと褒められるけど、ゲームで全国大会に行くとちょっと鼻で笑われる、みたいな。それが昔からすごく不思議で。

そもそもの競技人口が少ないので、囲碁で全国大会に行くのはそんなに難しいことじゃないんです。僕の時代は30人いて、その中で2人全国大会にいけちゃうから、15人に1人くらいは行けてしまうくらいだった。トーナメントも3回くらい勝てば、次にいけちゃうんです。

でも、スマブラとか、ある程度の人口規模があるゲームの全国大会ってなると、そうはいかないんですよね。かなり多く人たちの中を勝ち抜いていかなくちゃいけない。だから、考えてみると、全国大会に行く難易度としてはスマブラの方が難しいんじゃないかと。

但木:人口規模が違うからね(笑)

小幡:単純な話、競技人口が難易度に関わってくるので。そう思うと、やっぱりやったことがない人の理解がないのかなと。

但木:囲碁だと褒められるけど、野球とかは親に理解がないと怒られると思うんですね。「お前、大学受験どうするんだ? 甲子園目指して練習したって、結局プロになれなかったらどうするんだ」と、そういうことを言われるんですよね。

子どもって言うと、年齢によっては1番優先順位が高いものが、勉強しかなくなると思うんです。受験とかね。受験なんて、「来年やろう」「やり直そう」って言ったって、そう簡単にはできないじゃないですか。

「今、スマブラに集中したい」って言っても、「優先順位が違うでしょ」と言われてしまう。1年経ったら、もう受験なんか終わってしまってるから手遅れになっちゃうと。でも、そのあたりを変えていかないと、そもそもゲームとかに対する打ち込みが認められることはないのかもしれない、とも思いますけどね。

高校時代にゲームに集中してもいいとか、いつ何に打ち込んでもいい、っていう状況を作ることが、多様な学校生活、人生を作るんじゃないかなと思いますけどね。行ったり来たりしてもいいし、違う年齢の人と同じステージにいてもいい、また戻ってきてやり直してもいい、そういう自由さがあると、ゲーム今やっててもいいじゃん、来年違うことやろう、ってなるかもしれないですからね。

小幡:そうですね。


次に続く。ゲームの地位を上げるには、という本題に迫ります。

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但木さんが執筆された著書『1億3000万人のためのeスポーツ入門』

Twitter: @k_tadaki
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