アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩

新年あけましておめでとうございます。新年早々世間では様々な事件が起こっているようだが、そんなことは気にせずマイペースにゲームを紹介していきたいと思う。

今回紹介するゲームは「アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩(メタファリカ)」。ガストとバンプレストの共同で開発されたPS2のRPGである。

発売日は2007年10月25日。ちなみに自分の手元にあるソフトは廉価版であるPS2Best版なのだが、こちらはバンダイナムコゲームスよりの発売となっている。というのも、発売を担当していたバンプレストは2008年4月にバンナムに吸収合併されており、廉価版はそのあとに発売されたから。

また、ガストも2014年10月にコーエーテクモゲームズに吸収合併されたため、本作の制作に関わった両社は、企業という形ではすでに存在しておらず、否応なく時の流れを感じさせる。

前置きはこのくらいにしておいて、ゲームの紹介をしていこうと思う。


概要 アルトネリコシリーズとは

まず、アルトネリコシリーズについて軽く紹介していきたい。

アルトネリコシリーズはガストとバンプレストの共同で開発された一連のRPGシリーズであり、ナンバリングタイトルが3まで発売されているほか、関連作品としたアニメ・漫画・小説なども発売している。

シリーズの特徴としては、他に類を見ない独特の世界観が挙げられる。特にオリジナル言語である「ヒュムノス語」とそれによって紡がれる「詩魔法」、詩魔法を行使する女性のみの種族「レーヴァテイル」はシリーズの核ともいえる設定であり、制作者の強い思い入れが感じられる。

例えば「レーヴァテイル」は他のRPGでいう魔法使いに当たるのだが、世界の根幹と密接につながっており、単なる種族に収まらない強い存在感を放っている。

また、実際のゲーム中でもヒュムノス語による劇中歌がたびたび流れゲームを盛り上げてくれるのだが、この歌を担当するのが志方あきこ氏・霜月はるか氏・みとせのりこ氏・石橋優子氏といった本職の歌手であり、彼女たちによる迫力ある歌声は非常に印象深いものとなっている。

戦闘システムも独特であり、前衛(戦士タイプ)と後衛(レーヴァテイル)の役割が明確に分担されている。本シリーズの魔法は一般的なRPGの魔法と比較しても非常に威力が高いが、発動までに時間がかかる。そのため前衛は魔法が発動されるまでの間、敵の攻撃から後衛を守らなければならない。設定をうまくシステムに落とし込んだ好例と言える。

軽くと言いつつ長々と書いてしまったが、結局のところ本シリーズの魅力は独特の戦闘システムや本職の歌手による劇中歌を含めたその世界観であるといえる。純粋に一つのRPGとして見た場合、むしろオーソドックスな作りなのだが、その世界観に魅せられたファンから熱い支持を受け、現在でも愛されているシリーズとなっている。

アルトネリコ2とは

さて、ここからようやく本題に入ることが出来る。

今回取り上げるアルトネリコ2は、そんなアルトネリコシリーズでも特に人気の高い作品となっている。ここからは、その魅力について迫っていきたいと思う。

物語

今作の物語を簡単に説明すると、「死に瀕した世界において理想郷を求める人々の群像劇」といった所である。

今作の舞台となる世界「メタ・ファルス」は、かつて高度な文明を築いていたが、人類同士の争いにより大地のほとんどを失われ、わずかに残った人々は3つの塔を中心とした空中大陸で新たな文明世界を築き上げることでなんとか命脈を保っている。

だが、その世界「メタ・ファルス」も少しずつ寿命を迎えており、人々は新たな理想郷「メタファリカ」と、そのメタファリカを紡ぐことのできるレーヴァテイル「クローシェ・レーテル・パスタリエ」を心の拠り所として日々の生活を送っている。

だが物語が進むと、クローシェの所属する政府機関である「大鍾堂」は、現在の最高権力者である総統「アルフマン」により、本来の指導者である教皇家一派を駆逐することで生まれた政権であることが判明する。

また、アルフマンのクーデターから生き延びた教皇家の末裔「タルガーナ」は「新政府軍」と名のる反政府組織を率い、アルフマン政権の打倒を虎視眈々と狙っている。

こんな不安定な政情のなか、今作の主人公「クロア・バーテル」もなかば巻き込まれるような形でどちらの陣営につくかの選択を迫られる(クロアは本来「大鍾堂」に所属する騎士だが、「新政府軍」に鞍替えすることもできる)。

と言ったように序盤から大きな選択を迫られるなど、かなり状況変化の激しいスリリングな物語が展開する。良くも悪くも王道なシナリオだった前作とはいい意味で対照的である。

とは言え、「大鍾堂」にしろ「新政府軍」にしろ手段は違えど目的自体は同じであり、人々の新たな理想郷を求めて行動している。結局クロア一行は両者とも敵対することになるのだが、例え両者を打倒したとしても「世界そのものが寿命を迎えつつある」という問題は解決していない。

なんだかんだで世界の中心的指導者であった「大鍾堂」と「新政府軍」を打倒したクロア一行には、当然世界が進むべき新たな道筋を提示する義務が発生する。はたしてクロアたちが示した新たな道筋とは、人々の理想郷とは何なのか?それはぜひプレイして確かめてもらいたい。

人間らしい生き方とは、自力で幸せな未来を築き上げていく生き方だ。

アルトネリコ2 アルフマン・ウラノス

戦闘

世界観重視でつくられた今作だが、当然戦闘システムも世界観に合わせたものとなってる。
今作の戦闘システムを簡潔に表現するなら、ヒロインたちのご機嫌を取り、魔法の威力を高めてぶっ放すシステムと言える。
意味が分からないと思うので、解説していこう。

まず今作のパーティーメンバーは、大別すると前衛と後衛にわかれている。
前衛はいわゆる戦士タイプで、接近戦や後衛のガードを担当する。
後衛はレーヴァテイル、いわゆる魔法使いで魔法攻撃や補助・回復を担当する。
この魔法がくせ者で、一般的なRPGの魔法と性質が大きく異なるものとなっている。具体的に言うと

  • 詠唱時間に応じて威力が比例する、いわゆるチャージ制を採用している。

  • 詠唱中はMPが下がり続け、0になると暴発し威力が半減する。

  • 詠唱中の魔法は攻撃ターンなら好きなタイミングで発動可能。

  • 魔法詠唱中のレーヴァテイルは完全に無防備状態。

といったところ。つまり前衛の仕事は、無防備状態のレーヴァテイルを敵の攻撃から守り、魔法詠唱の時間を稼ぐこととなる。
ポイントは、前衛の働き次第でレーヴァテイルのご機嫌が変化し、戦闘にも影響を与えること。

つまり、敵に強力な攻撃を当てたり、上手くガードをするとヒロインたちはご機嫌となり、「レプレキア」「合体詩魔法」「EX必殺技」といった、より強力な攻撃が可能となる。
逆にふがいない戦いを続けると、ヒロインたちのご機嫌はなかなか上がらず、上記の強力な攻撃も使えない。

概要の項でも書いたが、今作の詩魔法は作中世界においても重要な位置付けを持っており、詩魔法を行使するレーヴァテイルもまた重要な存在である。
その「特殊性」を表現するために上記のような独特の戦闘システムを構築したのだと思われる。

はっきり言って今作の戦闘システムは結構複雑だ。管理するべきゲージや気にするべきポイントも多く、その上攻撃ターンには時間制限があるため、ぐずぐず考えてもいられない。
その分ヒロインたちのご機嫌をうまく取れた場合の恩恵も大きく、ド派手な「EX必殺技」や、詩魔法の威力をブーストする「レプレキア」、二人のレーヴァテイルによる「合体詩魔法」は威力抜群であり、爽快感が高い。

まとめると、今作の戦闘は世界観の表現とRPGとしての面白さがうまい具合に調和し、いかにもアルトネリコっぽい戦闘システムとなっていると言えるだろう。

その他システム

調合

ガストが開発しただけあって、アトリエよろしく調合システムがある。
と言っても、本家のアトリエシリーズほど本格的なものではなく、複数のアイテムから一つのアイテムを作成するという簡素なもとのなっている。

クロアの最強武器もこの調合で入手するため、それなりに重要なのだが、それよりもクロアとヒロインと店主による寸劇(コントともいう)の印象が強い。
なんと調合できるアイテムすべてに寸劇が容易されており、無駄に種類が豊富。
他のRPGなら力の入れ所が間違ってないか?と突っ込みたくなるのだが、アルトネリコにおいてはこの上なく正しい力の入れように感じるのは気のせいだろうか?

デュアルストール

ファンからお風呂でレベルアップと言われているものの正体。

今作のヒロインであるレーヴァテイルたちは普通に戦闘してもレベルは上がらない。ではどうすれば良いかというと、入浴することでレベルが上がる。

…何言ってんだと思われそうなのでもう少し詳しく説明すると、レーヴァテイルはデュアリスノ結晶を体内に取り込むことでパワーアップできる。
この結晶はそのまま体内に取り込むと負担が大きいため、お湯に溶かして取り込むことで負担を少なくしてパワーアップすることが出来る。つまりお風呂でレベルアップ、というわけである。

とまあ一応理由付けされているが、明らかにお風呂でレベルアップというシチュエーションありきで構築された設定じゃねえかという気がする。
恐るべきは、このお風呂でレベルアップというシチュエーションを実現するために、わざわざ前衛とは別のレベルアップシステムをつくったスタッフの執念だろう。
実にアルトネリコらしいじゃないか。

コスモスフィア

レーヴァテイルたるヒロインたちの精神世界のこと。
セラピ屋と呼ばれる施設でダイバーズセラピを行うことで入ることが出来る。

階層構造になっており、改装が深くなるほどヒロインたちの深層心理に近づける。
クリアするごとに新たな詩魔法やコスチュームを入手でき、ヒロインがパワーアップする。

クリアは強制ではないのだが、各ヒロインのエンディングに関わっており、ストーリーの伏線もある。
何よりヒロインのキャラクターをより深く理解するためには避けて通れない。

内容もなかなかすさまじく、階層が深まるごとにヒロインの汚い内面があらわになる。
実際のプレイに反映されているわけではないが、場合によっては精神崩壊したり命を落としたりすることもあるらしい。
怖すぎる。

とは言え、最下層まで進んだ際のイベントは感動的であり、アルトネリコになくてはならない要素である。

I.P.D保護とムスメパワード

I.P.Dとはレーヴァテイルのみが罹患する奇病であり、罹患したレーヴァテイルは暴走し周囲に自身の意思とは関係なく危害を加える。
クロア一行は旅先で出会うI.P.Dに罹患したレーヴァテイルを保護することが出来る。

保護したI.P.Dをセラピで治療することで、レプレキア(詩魔法の威力を底上げするシステム)の威力を上げたり、前衛キャラは保護した彼女たちを装備することで力を借りることが出来る。

特に上位レベルの彼女たちの効果はすさまじく、攻撃ターンの時間の延長、防御行動の入力タイミングの緩和、一定確率で一撃で戦闘不能といったゲームバランスを崩壊させるレベルの性能がある。

今作はエンカウント率が結構高いため、雑魚戦のストレスを緩和するためにはなくてはならない存在である。

気になる点

ここから先は、少し気になった点を。
今作、世界観の構築は素晴らしいのだが、利便性の面で気になる点がいくつか存在する。

例えば調合。
調合できる店が4件存在するのだが、世界中に散らばっているうえに、店によって調合できるアテムが違う。
さらに、調合によっては別の調合アイテムを材料にすることもあるため、結果的に世界中の店をたらい回しするはめになる。
移動の手間自体はそこまでかからないとはいえ、さすがに面倒くさい。

他にもI.P.D保護やダイバーズセラピ、レーヴァテイルの親衛隊への勧誘など、寄り道要素が香なら多いため、余計にたらい回しにされている感覚が強まる。

戦闘面でも気になる点がある。

今作の戦闘は前衛2名・後衛2名の4人制なのだが、特にゲーム中盤過ぎまでは後衛の数が足りず、パーティーは4人以上いるのに戦闘には3人しか出せないということが多い。

その分4人そろった時の爽快感は高いのだが、「ため」の期間としてはいささか長い気がする。

上記の2点以上に気になるのが、この時代のゲームとしては珍しく、周回引継ぎ様子がないこと。

それの何が問題かというと、今作はルートが2つとエンディングが4種類あるのだが、ルート分岐のタイミングがかなり速く、ゲーム開始から10数時間ほどでそのタイミングとなる(ちなみにクリアまではだいたい40~50時間程度)。

ルートによっては見られないEDも存在するため、すべてのEDを見るためには最低でも2週する必要があるのだが、引継ぎ要素が一切ないためキャラクターは一から鍛え直しとなる。
仮にルート分岐直前でセーブしたとしても、結局30~40時間程度はプレイしなおす必要があるため、時間に優しくない。

この問題は前作でも指摘されていたことだが、今作でも特に改善されることはなく、その点が惜しいと感じる。

総評

RPGとしてはオーソドックスな作りながらも、その魅力的な世界観とそれを表現するための独特のシステムの数々で、非常に個性的なゲームとして仕上がっている。

特に今作は、その独特のシステムが世界観を表現するギミックとしてうまく作用しており、シリーズでも特にアルトネリコらしいゲームとなっている。

反面、利便性の面で気になるポイントがいくつかあるのも事実。この点が改善された移植やリメイクが発売されることを期待して、今回の記事は締めようと思う。

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