見出し画像

龍が如く7外伝 名を消した男

日本の裏社会を描いたセガの人気ビデオゲーム「龍が如く」シリーズ

現在ナンバリングは8まで発売されているが、7を転機としてA.AVGからRPGにジャンルが変わり大きな成功を収めたことは記憶に新しい

その7の外伝として発売され、7の裏で起こった物語を描いたのが今回紹介する「龍が如く7外伝 名を消した男」である

ここから先は例によってネタバレを多く含んでいるため、未プレイの方はそれを承知の上で閲覧していただきたい


概要

まず大きな特徴として、今作はジャンルをA.AVGへと回帰し、主人公にシリーズの顔である「桐生一馬」を起用するなど、全体的に6以前のファンを意識した内容となっている

あくまで外伝のためか、シリーズ歴代でもボリュームは少なく、サブコンテンツを含めてもクリアまで30時間程度である

ゲームの舞台も、シリーズで初めて神室町が存在せず、メインとなる大阪の蒼天堀と大型コンテナ船「キャッスル」の他には、横浜の伊勢佐木異人町の一部を序盤に僅かに探索できる程度と、全体的にコンパクトな創りとなっている

その分値段も本編より安く、通常版の希望小売価格は税込5,940円である

また、ボリュームが少ないと言ってもポケサーや闘技場と言ったサブコンテンツはそれなりに充実している

シリーズ恒例の3Dモデル化した実在の俳優も、本宮泰風氏、山口祥行氏、ファーストサマーウイカ氏、キム・ジェウク氏と揃えており、それぞれが重要な役どころを担っている

他にもシリーズ恒例のキャバ嬢も実写モデルを使っている
しかもクオリティは非常に高い

つまり、ボリュームこそ少ないものの決して手抜きではなく、本編と同じくらいに力の入った内容となっている

これを大作である龍が如く8と同時並行で開発していたというのだから恐れ入る
長年同一シリーズを開発し、スタッフ内でノウハウが共有されている龍が如くシリーズだからこそ出来たことだろう

物語

愛する者たちを守るため自分の死を偽装し、人生を捨てた伝説の元極道・桐生一馬。

「浄龍」のコードネームを与えられ、大道寺一派のエージェントとなった桐生は任務として横浜港の金塊密輸取引現場へ駆り出される。

それは大道寺の小遣い稼ぎに過ぎない、ごく簡単な任務のはずだった。

東城会四代目までのぼりつめた元・極道ゆえ大道寺のエージェントの中でも浮いた存在になっていた桐生は、周囲にひかえる同僚たちからのやっかんだ挑発に対し半ば捨て鉢に力を振るってしまう。

桐生が人生に感じる空虚は、ますます色濃いものになっていくばかりだった。

そんな中……現れたのは謎の一団。

外部の者が誰一人知るはずのなかった取引は中止を余儀なくされ、困難のさなか奇遇にも謎の一団は桐生一馬の生存をかぎつけてしまったようだった。

そのまま現場から姿を消した彼らを放っておくわけにはいかない。 かくして世を捨てたはずの桐生一馬は、再び裏社会の渦中へ足を踏み入れていくのだった……

公式サイトより

今作は、6を経て大道寺のエージェント「浄龍」となった桐生一馬が、ある任務をきっかけに東城会と近江連合の連名による極道の解散の実現を目的に行動することになる

7以降、新たな境地を開いた龍が如くシリーズだが、今作はストーリーにおいても6以前への回帰が見られ、「極道の世界でしか生きられない者たちの悲哀を描いた任侠もの」と言った物語となっている

特に今作のラスボスを務める本宮泰風氏演じる「獅子堂康夫」は、力と恐怖による成り上がりを夢見る正統派の極道であり、そんな彼から見れば極道の解散など、理不尽に夢を奪われる裏切り行為以外の何物でもない

そんな獅子堂と、極道の世界にあこがれ伝説の極道と呼ばれるまでになったが、その結果多くの人の運命を狂わせ自身も多くのものを失った桐生一馬との最終決戦は非常に熱いものとなっており、極道の終焉を描いた物語の最期を飾るバトルとしてふさわしいものとなっている

だがそれ以上に印象的だったのが、EDで桐生一馬が大泣きをした所だろう

桐生一馬の墓を監視するカメラを偶然発見した、あさがおの「綾子」と「太一」
それが「桐生のおじさん」が仕掛けたものと考えた二人は、おじさんに向けてメッセージを送る
綾子は小さな会社の事務職となったこと、太一は桐生のように人を助けられる人間になりたくて消防士になったこと、他の子ども達も立派に成長し、それぞれの道を歩んでいること、遙の息子「遙勇」が4歳になったこと…

それを見た桐生は人目もはばからず泣きじゃくり、やがて「俺はひとりで、「寂しい」って口に出すことさえできずにいた」と自らの心情を吐露する

このシーン、声優の黒田崇矢氏のまるで本人が乗り移ったかのような演技に加え、カメラが震えることで桐生の手が震えていることを表現する演出などが合わさり、このシーンのためだけに最後まで進めて良かったと思わせるほどの名シーンとなっている

特に桐生が自らの心情を吐露したシーンは、思わず「言えたじゃねえか」と口に出してしまった(同時にあの時のグラディオラス達の心情が心の底から理解できた)

システム

バトル

A.AVGへと回帰した今作は、桐生一馬を操作し「応龍」と「エージェント」という二つにスタイルを使い分けることで戦闘を行う

「応龍」は肉体による打撃攻撃と強力なチャージ攻撃を駆使した従来の桐生い近いスタイルで、一対一に強い

「エージェント」はワイヤーやドローンといったガジェットを駆使したトリッキーなスタイルで、集団に強い

キャラクターの強化は「龍が如く0」と同じく、資金を投入することで行う

もっとも、億単位の資金をジャブジャブ投入できた0と違い、今作では最高でも300万円とスケールダウンしている
不況だから仕方ない

操作方法なども、6以前の龍が如くと大きな変化はなく、シリーズファンなら安心してプレイすることが出来る

特に「エージェント」スタイルは、最初は使いづらく感じるかもしれないが、資金を投入しガジェットを強化することで使い勝手が大きく向上する

例えば相手を拘束するワイヤーガジェット「蜘蛛」は、最高段階まで強化することで5人の敵を一度に拘束でき、さらに拘束した敵をそのまま振り回すことで多くの敵を一気に巻き込め、なかなか爽快感が高い

反面、バランスに関しては、ややいびつな印象がある

具体的に言うと、桐生の強化が進まない序盤の難易度が高い反面、サブコンテンツが解放され強化が進むと一気にヌルゲーとなる

特に今作のラスボスの獅子堂は、シリーズトップクラスの体力を持っており本来ならかなりの強敵となったはずなのだが、桐生を強化しすぎた結果あっさりと勝利することが出来てしまった

もっとも、サブコンテンツをやりこまない場合は強化があまり進められず、より苦戦することになったと思われるが、その場合プレイ時間が10~15時間程度となった可能性が高く、さすがに勿体ないと感じたと思う

サブコンテンツ

シリーズお馴染みのサブコンテンツも、将棋・麻雀・カジノ・賭博・ゴルフ・ビリヤード・ダーツ・カラオケ等々相変わらず充実している

他にもキムタクが如くロストジャッジメントで好評だったマスターシステムのゲームも大道寺一派のアジトでプレイ出来るなど、セガらしいサービス精神に溢れている

今作ならではのサブコンテンツとして、「ポケサー」「赤目ネットワーク」「闘技場」が存在する

「ポケサー」は、現実でいうミニ四駆に近いミニゲームで、本体となるミニカーの「ボディ」に様々なパーツを組み合わせてコースを走り、ライバルたちとの戦いに勝利することが目的となる

0で桐生がはまって以来、ブランクをはさみながらもシリーズで何度かプレイしており、不器用に見えて多趣味な桐生がガチではまった趣味の一つで、愛車がコースアウトした際の悲壮感満載の表情は必見である
本編でのカッコ良さとのギャップが凄まじい

ゲームとしても、コースに合わせたセッティングが求められるなど戦略性がなかなか高い
特に現実のミニ四駆にはまった人は懐かしいと思うのではないだろうか

「赤目ネットワーク」は、ファーストサマーウイカ氏演じる大阪の情報屋「赤目」からの依頼をこなしていくというもので、従来のサブクエストとチャレンジミッションに該当する

クリアすることで資金の他、「赤目ポイント」を入手することが出来る

この「赤目ポイント」、赤目ショップでアイテムと交換できるほか、桐生の強化にも資金と同時に使うことになる

赤目ポイントは赤目ネットワークでの依頼でしか手に入らないため、計画的に使わないと桐生の強化が進まない事態も起こりえる

とは言え、入手できる赤目ポイントはかなり余裕があり、よほど無計画に使わない限り、強化分のポイントが足りないということはそうは起きないだろう

「闘技場」は、その名の通り賞金をかけて敵と戦うミニゲームであり、今作においてメインの資金源となるミニゲームである

一対一で戦う「TOURNAMENT」、一対多で戦う「ZIGOKU RUMBLE」、特殊ルールの「SPECIAL EVENT MATCH」、多対多で戦う「ZIGOKU TEAM RUMBLE」の4種類のモードが選べる

チーム戦の仲間は、主に赤目ネットーワークの依頼で仲間にするほか、キャッスルの特定の人物に資金を払うことで紹介してもらえる

仲間の中にはジャッジアイズ及びロストジャッジメントに登場した海藤正治、東徹、杉浦文也もおり、闘技場限定とはいえ彼らをプレイアブルキャラとして使うことも出来る

彼らは全体的に優秀な性能をしており、特に東は回復役として非常に優秀なため、早めに仲間にして損はない(本編でも癒し担当だったしね)

ちなみに、海藤と東は関連のサブクエストをクリアすることで仲間にできるが、杉浦はなぜか石油王からの紹介で仲間になる
あと、さすがに八神隆之は仲間にならない

ところでこの闘技場、武器の使用にも制限が無いようで桐生のガジェットも問題なく使えるほか、敵のボスは火炎放射器を使ったり、味方にもマシンガンをぶっぱなすキャラがいたりする

特に仲間の一人「鶏男」は、頭に鶏の被り物をするというふざけた格好とは裏腹に非常に強く、味方トップクラスの攻撃力から放たれるマシンガンであらゆる敵を蜂の巣にして屠ることが出来る
とりあえずチーム戦で詰まったら、彼を操作すれば大抵なんとかなる

注意点として、この闘技場にはまってしまうと数百万単位の資金があっという間に稼げてしまうので、桐生の強化が進みすぎてしまった結果、本編がヌルゲーになる可能性がなる、というか自分はそうなった

ご利用は計画的に

気になった点

最後に少し気になった点を

もっとも気になったのが、戦闘で得られる報酬が少ない点である

今作の雑魚は、ランダムで数千~数万程度の資金を落とすが、序盤は貴重な収入源となるも中盤以降ははした金でしかなく、雑魚と戦う意義が薄い

ストーリー上の敵にいたっては、一切何もドロップしない

ボス戦をこなすモチベーションの一つに、普段の戦闘では得られない報酬を得るというものがあるが、今作のボス戦は完全にストーリーのためだけの存在である

ストーリー主導型のゲームは数多いが、ここまで割り切ったつくりはさすがに珍しいように思う

そのため、ボスを倒してもいまいち達成感を感じることが出来なかった

他に地味に気になった点が、闘技場「SPECIAL EVENT MATCH」の開催条件

主催者からメールを受け取る→メール差出人と話す→開催という流れになるのだが、2回目以降もこの流れで開催されるのが地味に面倒に感じた
2回目以降はメールだけで開催しても良かったように思う

とは言え、気になった点としては上記の2点ぐらいで、ほとんどの場面で特にストレスなくゲームをプレイすることが出来た

この辺は長く続いているシリーズものだけあって、安定感を感じられた

総評

外伝の名の通り、本編よりボリュームこそ少ないものの、そのクオリティは決して本編に劣るものではない

特にストーリーは、極道の終焉を描いた熱いストーリーやシリーズファン感涙物もののEDと合わせて、7の外伝としても8の序章としても申し分ない者となっている

バトルシステムやサブコンテンツに関しても、6以前のシリーズの王道を外さない作りとなっており、安心してプレイできる

反面、外伝の名の通りシリーズファン向けの要素が強いため、新規プレイヤー向けには作られていないように感じる

そのため、良くも悪くもシリーズファン向けの一作と言えるだろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?