ゲームの思い出:ポケットモンスター赤緑 その1
ゲームに多少詳しい人なら誰でも知っているような事だが、発売当時ポケットモンスターは爆発的に流行した。
しかし、発売してすぐはそれほど流行っていたわけではない。
当時ゲームボーイはもうとっくに終わったハード扱いで、特にゲームが好きな人か、最新ハードが買えない子供が遊ぶハードだった。
そんな中、ポケットモンスターは徐々に口コミで売れ始めた。発売してひと月も立つ頃には元々そんなに数を仕入れていなかったゲームショップからはポケットモンスターのソフトが消えた。
僕はその流行に先んじて、発売日の一週間程経ってから……いや、明確に日付けも覚えている。1996年3月3日、日曜日。僕はポケットモンスター赤のソフトを手に入れた。
その日は家で妹の雛祭りパーティーを行うと言う事で、気を使った僕は友人宅に転がり込んだ。学校内ではあまり話さないが小学1年の時同じクラスになり、ゲームで意気投合した僕達は度々二人で遊んでいた。
最も、学校で話さない、というよりはこいつが学校にあまり来ないから話せない、が正しかったのだが。
そして、そいつとスーパーボンバーマン2を対戦していた僕は、机の上に置かれた赤いパッケージを見つける。
「あ、ポケットモンスターやん」
僕はその頃から既に欲しいソフトが無数にあったが、その中でも発売したばかりのそれを羨ましく思った。
少し前にプレイしたラストバイブル2は面白いソフトだった。敵モンスターを仲間にしてそれを合成して強くしていく。 その過程は非常に面白く、本編そっちのけで楽しめた。
そんな女神転生シリーズにハマっていたことがあった僕にとってポケットモンスターはまさに当たりなのが間違いないと思われているゲームであった。テレビで見たCMは正直あまり売る気があるようには見えなかったが……。
しかしそんな欲しいソフトもお金が無ければ買うことはできない。僕のその時の所持金は1500円で、発売したばかりのソフトには中古でも手が届かない状態だった。
「面白い?」
「面白かったで」
かったで、と過去形な事からもうクリアした事がわかった。
「お前好きそうやな」
「欲しいけど金が無くてなあ」
「売ってやろうか」
「マジで?」
財布にはなけなしの1500円が突っ込まれている。
「とりあえず貸してよ。少しやって面白かったら買う」
「えーでー。冒険の書は消してもええから」
ちなみにこの男は30代になってもRPGのセーブデータを冒険の書と呼んでいる。
帰宅後直ぐにゲームボーイにソフトを挿した。主人公の名前をいれてゲームスタート。
母の夕飯の誘いも気が付かず気がついたら8時を過ぎていた。
「ちょっと出てくる!」
家を飛び出した僕は友達の家に自転車を飛ばした。
チャイムを押す。
「まあ、お前なら今日中に来るよな」
完全に好みを見透かされていたのが悔しかったがそんなの関係なかった。
「いくらだ!今1500円しか無い!それ以上は出せん!」
「1500円以上出す気無いんか」
「仕方ない、ラストバイブル2も付けよう」
「それ元々俺のソフトやんけ」
ポケットの中には2周目をプレイ中で、攻撃力が破壊神の如く高くなる裏ワザの名前「ポンです」で始めたばかりのラストバイブル2が入っている。少し前にこいつから買ったソフトである。
「仕方ないな、ラストバイブル2と1500円でええよ」
「さんきゅっ!」
僕は100円ばかりで15枚とラストバイブル2を友人に渡すと、友人宅を飛び出した。
「おいおい忘れモン」
慌てて友人が、僕を追いかけて箱と説明書を持ってきた。ご丁寧に購入したゲームショップの袋に入っている。
「ありがとう!!」
それを受け取ると家まで自転車を全力で漕いだ。家に帰ると母の小言を聞きながら夕飯を掻っ込む。お風呂を烏の行水で終わらせ、ゲームボーイの電源を再び入れたのは、22時を回った頃だった。
NINTENDOのロゴが降りてくる時間ですら惜しく感じた。
メーカーのロゴが表示され、当時の携帯ゲーム機では珍しかったオープニングムービーが流れる。
2体のモンスターが戦うムービー。今ではニドリーノとゲンガーと当たり前のように名前を言えるポケモンも当時はまだ見ぬモンスター。その出会いに想いを馳せた。
つづきからを選択して物語を進める。
トキワの森の途中、手持ちのコクーンがスピアーに進化した所から再スタート。
僕が最初に選んだポケモンはヒトカゲだった。
「いい加減にしなさい!」
……家のルールで就寝時間が21時だった僕は、ここで母親にゲームボーイを取り上げられて泣く泣く就寝した。
続く。
ポケットモンスター赤 ゲームボーイ
1996年2月27日発売。
発売:任天堂
※見出し画像は公式の物をお借りしています。問題があれば連絡をくださればすぐに消去します。
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