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猫とバディと最後の晩餐「クワイエット・プレイス DAY1

クワイエット・プレイスの面白さはデザインされた静寂さにあると思っていますので、これを家のオーディオ環境で楽しむのはなかなか難しいと思います。なので、派手さはなくても映画館で楽しむべき一作であることは間違いないです。

さて、本作は全2作で描かれた時系列から遡り、音に反応する怪物たちが襲来したその日から数日を描くものになっていました。主人公も人類が蹂躙された後の世界で生き抜く家族たちに変わり、ルピタ・ニョンゴ演じる末期がんの女性、サムの生き様を描いていました。

舞台はニューヨーク。普段は90dBの騒音に包まれた街が、彼らの襲来により孤立し、音を殺して生きる世界に変貌する描写が圧巻でした。

そんな世界で死を目前にしたサムの目的は、避難ではなくピザを食べること。ストーリーか進むにつれ、そのピザにどういう意味があるのかが丁寧に描写され、その道行を応援したくなります。
彼女の旅の共は、介護猫のフロド。気ままに見えて常にサムの事を考えて行動するその姿は頼もしく、また指輪物語の二人になぞらえたネーミングは、あの旅路も連想してグッときました。
そんなフロドが途中でサムのために連れてきたエリックも、良き旅の仲間でした。サムの最後の晩餐をやり遂げるために必要な人物というだけでなく、最終的にフロドを託するに値する人物として、気弱ながらやる時はやる、いいキャラクターになっていたと思いました。

さて、クワイエット・プレイスのメインキャラといえば、音に反応して人類を殺しまくる、宇宙から飛来した怪物たちです。第1作の終盤に、特定の周波数を聴くと身動き取れなくなるという弱点が露呈し(よく今まで宇宙蹂躙できてたな……)、ちょっと怖さが減衰した感もありましたが、本作はまだバレる前。水に弱い点はありますが、地上では恐怖の対象として、最後まで猛威を奮っていました。
人類が音を立てまいと沈黙を守っている中、ドスンと轟音を立てて登場するその様は、まさに地球の新たなる支配者を思わせる貫禄でした。

個人的に、主人公が末期がん患者というホラー作品は初めてで、また目的も生き延びるのではなく、死ぬ前にやりたい事を終えるというストーリーがとても斬新でした。愛らしい猫であるフロドは最後まで死にませんが、秀逸なサウンドデザインから生み出される怖さは、前2作を超えるインパクトがありました。
是非音響の良い静かな映画館で鑑賞してほしくなる一作です。

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